東京初進出で既に行列のジンギスカン店など、注目の14店〈大木淳夫の8月の新店アドレス〉
グルメ本編集長として数々の名店を訪れる大木淳夫さん。毎月たくさんの飲食店がオープンする中で、大木さんが「これは!」と思った新店をずらりと紹介します。
教えてくれた人
大木淳夫
「東京最高のレストラン」編集長
1965年東京生まれ。ぴあ株式会社入社後、日本初のプロによる唯一の実名評価本「東京最高のレストラン」編集長を2001年の創刊より務めている。その他の編集作品に「キャリア不要の時代 僕が飲食店で成功を続ける理由」(堀江貴文)、「新時代の江戸前鮨がわかる本」(早川光)、「にっぽん氷の図鑑」(原田泉)、「東京とんかつ会議」(山本益博、マッキー牧元、河田剛)、「一食入魂」(小山薫堂)、「いまどき真っ当な料理店」(田中康夫)など。 好きなジャンルは寿司とフレンチ。現在は、食べログ「グルメ著名人」としても活動中。2018年1月に発足した「日本ガストロノミー協会」理事も務める。「東京最高のレストラン2024」が発売中。
あの天ぷら名人の弟子が独立で話題に。札幌発の有名ジンギスカン店は大行列!
「免許皆伝」の見事な揚げ加減
グルマンの間で早くも注目を集めているのが8月1日、西新橋にオープンした「天ぷら あらたみかわ」です。「てんぷらみかわ 六本木ヒルズ店」で揚げ手だった小川比佐男さんの独立店。名人、神様とまで言われる「みかわ是山居」早乙女哲哉さんの下で11年間薫陶を受け、壁には早乙女さんの「免許皆伝」の書が飾ってありました。油は太香胡麻油にサラダ油をブレンドすることで高温を引き出しています。才巻海老に始まり、ウニの大葉挟み、穴子、さつまいも、天丼、もしくは天茶、デザートに至るまで14品のコースで17,600円。37歳の小川さんは当たりが柔らかく、その場で次の予約をしていくお客さんも。カウンター8席だけなので、すぐに予約の取れない人気店になりそうです。
<店舗情報>
◆天ぷら あらたみかわ
住所 : 東京都港区西新橋2-15-6 2F
TEL : 03-6910-2023
札幌から待望の初進出
一方、大行列で話題なのが7月14日、上野広小路と湯島の間にオープンしたジンギスカン「成吉思汗だるま 上野御徒町店」です。1954年に創業した札幌・すすきのの有名店が70周年を機に東京初進出、ということで多数のメディアでもニュースに。行列60人待ちという記事を読んで躊躇していたのですが、うれしいことに発券機が導入されました。平日、16時の発券スタート15分前に訪れると14番目。無事に1回転目に入店です。肉のメニューは「成吉思汗」「上肉」「ヒレ肉」の3種とシンプル。こちらと玉ねぎ、長ねぎを焼いて特製のタレでいただきます。そして最後はそのタレをご飯にかけ、店員さんにお茶を注いでもらいました。この締めのお茶漬けもぜひ。1時間という時間制限がありますが、十分に堪能できます。1人、もしくは2人での来店がベストでしょう。休日は15分ほどで受付枚数が終了してしまうようなのでご注意を。
*営業時間、システムなど変更になる場合がありますので、お店の公式インスタグラムを事前にご確認ください。
<店舗情報>
◆成吉思汗だるま 上野御徒町店
住所 : 東京都文京区湯島3-41-5
TEL : 050-5593-6599
知っておきたい「隠れ家」。気鋭のオーストリア料理店と人気店出身のイタリアン
ここにしかない、記憶に残るオーストリア料理のコース
7月11日、外苑前にオープンした「EWIG(エーヴィック)」はぜひ訪れてほしいオーストリア料理店です。第一人者である「銀座 ハプスブルク・ファイルヒェン」神田真吾シェフに師事し、その後オーストリアで6年修業した菅野眞次シェフのワンオペ店。同国ならではの調味料を巧みに使い、伝統とイノヴェーティブを織り交ぜた記憶に残るコースを提供してくれます。場所はかつて人気フレンチ「オルグイユ」があった、裏通りの低層階マンション2階のスタイリッシュな一室。こんなお店を知っていたら、自慢できると思います。
<店舗情報>
◆EWIG
住所 : 東京都港区南青山4-3-23 オリエンタル南青山 2F
TEL : 03-6804-5942
渋谷エリアにできた「ちょうどいい」イタリアン
7月26日、神泉にオープンしたイタリアン「Luna e Gatto(ルナ エ ガット)」も隠れ家感は満載です。住居用マンションが並ぶ裏通りの1階。元は質屋さんだったというカウンター10席の店内は奥が堅牢な金庫スペースだったそうで、面白い造りになっています。シェフは西麻布「ダル・マット」で17年間勤務した、元料理長の山中啓輔さん。8品が供される11,000円のおまかせコースは、シェフが惚れ込んだ長谷川農産のジャンボマッシュルームをパートブリックで包み、鶏肉のサルシッチャを詰めて卵黄、ペコリーノ・ロマーノ、トリュフをかけた逸品など充実。それで足りなければ1,100円で「追加パスタ」もオーダーできます。渋谷エリアにいい大人のイタリアンができました。
<店舗情報>
◆Luna e Gatto
住所 : 東京都渋谷区神泉町9-12 カサデチェーロ 101
TEL : 050-5594-1332
普段使いに覚えておきたい、おばんざい屋さんとあの焼き鳥店の姉妹店
通いたくなる、おばんざい店
近所にあったら入り浸ってしまいそうだなと思ったお店が7月14日、赤羽橋にオープンした居酒屋「ゆあそな」です。同系列でこちらも話題の焼き鳥「新まき」の隣の2階。カウンターの上にはもずく酢、ゴーヤチャンプル、豚の角煮などの大皿おばんざいが並び、他にチキンカツ、しょうが焼き、おにぎらず、パスタなどの一品料理があり、どれもいい塩梅のほっこりするおいしさ。笑顔が清々しい女将の真鍋綾萌さんは岡山県出身。まだ24歳ですが、元ハンマー投げの有力選手でした。双子かと見紛う妹さんとともに、店内に健やかな空気感を生み出しています。それもあってか、女性の一人客も多く、早くも愛される店になっています。
<店舗情報>
◆ゆあそな
住所 : 東京都港区東麻布1-24-6 麻布ハイツ M2F
TEL : 未開通
ユニークなメニューを目当てに何度も足を運びたい
7月29日、渋谷にグランドオープンした「YAOYA TOKYO」は、池尻大橋の人気焼き鳥店「リバーサイドヤオヤ」や「808labo」の姉妹店です。とはいえ、焼き鳥だけのお店にはしたくないと、メニューはメキシコ風、スペイン風、フランス風など多彩で、しかもひねりを利かせています。例えば「YAOYA的タコス」でタコスにのるのは鶏モモのコンフィに大根おろしといった具合。単なる受け狙いだけでなく、「ラムバーーーグ」はラム肉に相性のいい豚肉を混ぜてうまみを増しています。カウンターがメインですが、6人掛けのテーブルもあるので、さまざまな機会に活用できそうです。
<店舗情報>
◆YAOYA TOKYO
住所 : 東京都渋谷区道玄坂1-15-10 万字ビル 1F
TEL : 03-6416-4434
沖縄から移転した人気カレー店と欧風カレーの名店の新機軸
満を持して東京に進出。毎日でも食べたい味
8月5日、 市ケ谷にオープンした「スパイス欧風カレー PAIKAJI(パイカジ)」は、石垣島の人気店だった「ビストロ スマイル」が店名を変え、東京に移転したお店です。インスタグラムでご夫妻の移転への思いを読んで気になっていました。場所は昨年『東京最高のレストラン2024』で「今年の注目店」に選ばれたドイツ・オーストリア料理店「ドイツ・オーストリア料理 Blauer Engel(ブラウアーエンゲル)」と同じビルの1階。向かいには有名な「ミートショップうちの」が、窓からは東郷元帥記念公園を借景にしたいいシチュエーションです(今は工事中ですが)。4日間かけて丁寧に作られるフォンをベースに、スパイスを炒めていくので“スパイス欧風カレー”。おすすめの「バーグカツカレー」をいただきましたが、フォンが全体を包み込んで穏やかにスパイスを感じ、毎日でも食べたくなるおいしさ。ハンバーグに衣をつけて揚げたバーグカツのひき肉はもちろん、うちのから。職人肌のシェフと快活なマダムのコンビも良く、応援したくなるお店です。
<店舗情報>
◆スパイス欧風カレー PAIKAJI
住所 : 東京都千代田区三番町18-19 アルテビル三番町 1F
TEL : 080-6023-0527
やっぱりおいしい、王道の欧風カレー
7月7日、麻布十番にオープンした「ガヴィアルプラス 麻布十番店」は、王道の欧風カレー店のフランチャイズです。神保町の本店は1982年創業で、食べログ カレー TOKYO 百名店の常連。こちらでは本店の人気メニューに加え「まかないライスレス野菜カレー」という糖質制限カレーや、黒毛和牛、黒豚、地鶏の3種の肉を使った「贅沢3種肉のミックスカレー」などもラインアップ。ランチで「有機野菜&国産アサリカレー」をいただきましたが、甘みと辛さのバランスが良く、最近のスパイスカレーの強烈さに慣れた舌には新鮮。欧風カレーの良さを再認識しました。バターと塩でいただく茹でたジャガイモがついてくるのも、うれしいところです。
<店舗情報>
◆ガヴィアルプラス麻布十番店
住所 : 東京都港区麻布十番1-9-9 柴崎ビル 1F
TEL : 03-4333-4326
名前を変えて復活したあの老舗パスタ店と、閉店した老舗出身のカジュアルイタリアン
ファンが多い「あの店」が復活
7月23日、新宿野村ビルに「SPAGHETTI KAKEHASHI(スパゲッティ カケハシ)」がオープンしました。同ビルが竣工した1978年から46年間営業していたものの、今年6月に閉店した名店「ハシヤ」が店名を変えて復活です。新たに経営を担当するのは、ビルの大家である野村不動産系列の野村不動産コマース。グルメビルとして有名な「GEMS」を展開している会社です。ハシヤの閉店を惜しんで、同じスタッフを迎え入れての復活とのこと。お店は変わらず活況で、常連さんたちが昼からビールを飲んだりしながら、さまざまな和風パスタを頬張っていました。一度食べたらまた食べたくなるあの味と、スタッフの見事な連携プレー。無くすわけにはいかないですよね。
<店舗情報>
◆SPAGHETTI KAKEHASHI
住所 : 東京都新宿区⻄新宿1-26-2 新宿野村ビル B2F
TEL : 不明の為情報お待ちしております
日常使いできる、麻布十番のイタリアン
7月1日、 麻布十番にオープンしたワインダイニング「LA FRAGRANTE(ラ フラグランテ)」のシェフは、1987年にオープンし、この地で一時代を築いたものの昨年末に閉店したイタリアン「プレゴ」出身。「アルマーニ リストランテ」などでの修業を経て十番に戻って来ました。カウンター9席と個室という構成で、ウリはスペイン産生ハムの王様ともいわれる「ハモン・デ・テルエル」。グラスワインは700円からとカジュアルな値段なので、生ハムやペンネ、フリットなどと共に気軽に楽しめる、日常使いにいいお店です。
<店舗情報>
◆LA FRAGRANTE
住所 : 東京都港区麻布十番2-16-9 網代ビル 2F
TEL : 050-5593-9821
いよいよ全面開業した渋谷サクラステージの注目店は?
フレンチシェフが本気で作ったピザ
最後は7月25日、ついに開業した渋谷サクラステージです。話題の中心は17店舗が連なる4階のフードホール「FOOD MET(フードメット)」でしょう。3つのエリアがありますが、注目したのは一番奥の「SHIBUYA SAKURAGAOKA BEER HALL」にある「Ciel Pizza(シエルピザ)」です。オーナーは2016年にオープンし、おいしいだけでなく、スタイリッシュなジビエフレンチとして大人気となった「ラチュレ」の室田拓人シェフ。”made in JAPAN”のピザをコンセプトにしていて、生地は小麦粉ではなく米粉を使用。チーズなどの素材も日本産にこだわっています。オーダーしたのは、まさに室田シェフらしい、猪のサルシッチャと鹿のサラミがのったジビエ感溢れる「シエルピザ」。しっかりした重みとうまみを感じられました。子供から大人まで楽しんで欲しいと、トップシェフが本気で取り組んだ新しいピザ。こういう試みはうれしいですね。
<店舗情報>
◆Ciel Pizza
住所 : 東京都渋谷区桜丘町1-4 Shibuya Sakura Stage SHIBUYA SIDE 4F
TEL : 050-5594-2419
渋谷の大人に楽しいエスニック
こちらにはアジア料理の「Stand Pho You」と多国籍スパイス料理専門店「Tipsy Tiger」もあります。どちらも3月、麻布台ヒルズマーケット内に「カム バイ スタンドバインミー」を出店したばかりの(株)ホープナーズの運営。無添加・無化調を貫き大躍進を続けています。「Stand Pho You」のフォーがおいしいのはわかっているし、夜だったのでお酒のお供に「ベトナム式『フィッシュ&チップス』うま味ねぎ油」をオーダー。「Tipsy Tiger」の「麻婆咖喱」も激しく引かれたけれど、同じ理由で「オリエンタル『スパイスピクルス』」と「ちょっぴり辛口なあの子『ウフマヨ』」を。罪悪感なく楽しめるのでお酒も進みます。
<店舗情報>
◆Stand Pho You
住所 : 東京都渋谷区桜丘町1-1 渋谷サクラステージ SHIBUYA SIDE 4F
TEL : 03-6433-7961
<店舗情報>
◆Tipsy Tiger
住所 : 東京都渋谷区桜丘町1-1 Shibuya Sakura Stage SHIBUYA SIDE 4F
TEL : 03-6433-7961
知る人ぞ知る中華が渋谷に進出
永福町の人気店「中華可菜飯店」の五⼗嵐可菜シェフがメニュー監修をした「中華可菜点心」も出店です。永福町のお店はわずか10席で、夜は完全予約制・一斉スタートなので、渋谷でカジュアルに楽しめるのはいいですね。夏季限定の「よだれ鶏と自家製ラー油の冷やし中華麺」は穏やかな辛みと酸味を感じる味でした。
<店舗情報>
◆中華可菜点心
住所 : 東京都渋谷区桜丘町1-1 Shibuya Sakura Stage SHIBUYA SIDE 4F
TEL : 03-6416-3922
ただこちらのフードホール、完全モバイルオーダーでセキュリティは完璧だと思うのですが、その分なかなか手間がかかり、何度も注文すると大変です。まずはワンオーダーでいただけるランチ時に訪れてみることをおすすめします。
文:大木淳夫
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