IBMが中国の研究開発部門を閉鎖し撤退へ、1000人以上の従業員に影響
by Dyroc
アメリカのテクノロジー大手のIBMが中国の研究開発部門を閉鎖し、中国国外に移転することを決定したと、複数のメディアが報じました。背景には、中国政府が国内企業に自国製品の使用を増やし、アメリカの企業への依存度を下げるよう指示する「Delete A(アメリカを消去せよ)キャンペーン」による中国事業の不振があるとされています。
IBM Shuts China R&D Operations in Latest Retreat by U.S. Companies - WSJ
IBM is latest U.S. tech giant to pull back from China
https://www.axios.com/2024/08/26/ibm-rd-division-china-us-tech-competition
IBMのグローバル・エンタープライズ・システム開発担当ヴァイスプレジデントであるジャック・ハーゲンロザー氏は2024年8月26日に、中国の研究開発機能をインドのベンガルールを含む中国国外に移転させる計画を社内に発表しました。
仮想会議に出席した従業員の話によると、この決定によりIBMの研究開発部門でエンタープライズ向けソフトウェアなどの製品開発やテストに従事していた従業員を中心とした1000人以上が影響を受けるとのことです。
IBMはメディアへの声明で、「顧客に最善のサービスを提供するために、必要に応じて体制を変化させます」と述べましたが、詳細については述べませんでした。同社はまた、この変更が現地のクライアントをサポートする能力に影響を与えることはないとしています。
約40年間にわたって中国で事業を展開してきたIBMは、これまで中国を主要な成長市場と位置づけてきましたが、アメリカと中国の対立が激化するのに伴って中国での業績が急激に悪化しています。
by Spiff
特にIT技術の分野では、中国政府が国内企業にアメリカ企業を排除するよう促す施策を講じていることなどからシェアが落ち込んでおり、IBMは(PDFファイル)2023年度年次報告書で中国での収益が19.6%減少したと報告しています。一方、アジア太平洋事業の為替調整後の売上高は7%増となっており、国別では日本での売上高が11%増、インドでは20%増と堅調でした。
The Wall Street Journalの取材に応じたある従業員は、「IBMの強みであるクラウドコンピューティングとAIを活用して新規ビジネスを獲得するという計画を経営陣が話したばかりだったので、研究開発部門を閉鎖するという決定には驚きました」と話したとのことです。
中国から足早に撤退しようとしているアメリカ企業はIBMだけではありません。2024年5月には、Microsoftが中国の従業員数百人に対して、アメリカやアメリカの同盟国への移住を勧奨したことが報じられています。
Microsoftが中国に住む数百人の従業員をアメリカや同盟国に移転させようと試みていることが判明 - GIGAZINE
また、アメリカの企業だけでなく資本も中国から手を引き始めており、The New York Timesは2024年2月の記事で「シリコンバレーのベンチャーキャピタル企業・DCM Venturesの資金調達計画から中国の国名が消え、『太平洋横断的』な見通しとしてアメリカ、日本、韓国への投資計画のみが書かれていた」と報じています。
あるIBMの従業員はThe Wall Street Journalに「IBMはかつて、中国を世界的な成長市場の研究開発ハブと見なしていましたが、人件費の高騰とコンプライアンスリスクの増加により、中国は研究開発の拠点として魅力的ではなくなりました」と述べました。