便秘が心臓発作や脳卒中などの重大な危険因子になっているという研究結果
なかなか便が出てくれない便秘に悩んでいる人は大勢いますが、便秘が腸以外の健康状態にも影響していると認識している人は少ないかもしれません。新たな研究では、便秘が心臓発作・心不全・脳卒中といった主要心血管イベントの危険因子となっていることが示されました。
Constipation is associated with an increased risk of major adverse cardiac events in a UK population | American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology
New study finds constipation is a significant risk factor for major cardiac events - Science
https://www.monash.edu/science/news-events/news/current/new-study-finds-constipation-is-a-significant-risk-factor-for-major-cardiac-events
Your Constipation Could Be Having a Serious Impact on Your Heart : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/your-constipation-could-be-having-a-serious-impact-on-your-heart
オーストラリアのモナシュ大学で腸内細菌や高血圧について研究しているフランシーヌ・マルケス教授は、「高血圧・肥満・喫煙といった従来の心血管リスク因子は、心臓病の主な要因として長い間認識されてきました。しかし、これらの要因だけでは、主要心血管イベントの発生を完全に説明することはできません」と述べています。
そこでマルケス氏らの研究チームは、イギリスで実施された長期バイオバンクであるUKバイオバンクのデータを用いて、便秘と主要心血管イベントとの関連性について調べました。なお、研究チームがデータを分析した40万8354人のうち、2万3814人が便秘だったとのことです。
データを分析した結果、便秘に苦しんでいる人は便秘のない人に比べて、主要心血管イベントを発症する可能性が2倍以上も高いことが判明しました。さらに、高血圧と便秘の両方を患っている人は高血圧だけを患っている人と比較して、心臓病のリスクが34%も高いことがわかりました。
マルケス氏は、「私たちの研究は、一般的でありながら見過ごされがちな健康問題である便秘が、心血管疾患の重大な原因である可能性を示唆しています」と述べ、高血圧と組み合わさるとさらに心臓発作や脳卒中の危険性が高まる可能性があると指摘しました。
科学系メディアのScience Alertは、慢性便秘の潜在的な危険性を示している事例のひとつとして、ロック歌手のエルヴィス・プレスリーの事例を挙げています。プレスリーは当時42歳だった1977年にトイレの床で倒れ、病院に搬送されましたが死亡が確認されました。
プレスリーの直接の死因は不整脈だったとされており、もともとの心臓の悪さや薬物の乱用が影響していた可能性が高い一方で、プレスリーが慢性的な便秘に悩んでいたのも事実だとのこと。プレスリーの主治医を含む一部の専門家らは、プレスリーがなんとか便秘を解消しようと試みた結果、血圧と心拍数が危険なレベルまで上昇した可能性があるという仮説を立てています。
さらに研究チームは、便秘とさまざまな心血管疾患の間に、有意な遺伝的関連性があることも発見しました。論文の共同筆頭著者であるモナシュ大学のレティシア・カマルゴ・タバレス博士は、「便秘とさまざまな主要心血管イベントとの間に正の遺伝的相関が特定され、両疾患の根底には共通の遺伝的要因が存在する可能性が示されました。この発見は、腸の健康と心臓の健康を結びつける、根本的なメカニズムに関する研究に新たな道を開くものです」と述べました。
マルケス氏は、「便秘は世界人口の推定14%が罹患(りかん)、特に高齢者と女性に影響を及ぼしています。これらの知見は、人口のかなりの割合が腸の健康状態によって心血管疾患のリスクを高めている可能性を示唆しています」とコメントしています。
研究チームは、便秘がどのようなメカニズムで主要心血管イベントのリスクを高めるのかを探り、関与する生物学的経路を特定する必要があると主張。腸のバリア機能が低下して未消化物や老廃物が腸の外に漏れ出すリーキーガット症候群が関与している可能性も視野に入れて、さらなる研究を進めていくとのことです。