「鬼滅の刃」も、劇場版で観客を呼び込むアニメ業界の新たな経営戦略―香港メディア
2024年8月9日、香港メディアの橙新聞は劇場版アニメを用いたアニメ制作会社の新たな経営戦略を紹介した。
記事はまず、「近年、日本の漫画界で人気を博している『鬼滅の刃』の4期目『柱稽古編』の最終回が6月30日に放送され、物語はいよいよ最終決戦の『無限城編』へと突入しようとしている。主人公の竈門炭治郎(かまどたんじろう)、鬼にされた妹・禰豆子(ねずこ)、我妻善逸(あがつまぜんいつ)、嘴平伊之助(はしびらいのすけ)の4人は柱たちと共に上弦の壱から肆までの強敵に立ち向かう。原作を読んだファンなら、この戦いが少年漫画の中でもまれに見る壮絶な総力戦であることを知っているだろう。しかし、アニメ制作会社のufotable(ユーフォーテーブル)は驚きの展開を用意していた。なんと『無限城編』はテレビアニメではなく、3部作の劇場版アニメとして公開されるのだ」と述べた。
続けて、「『鬼滅の刃』が劇場版アニメとして物語を進めるのは今回が初めてではない。20年には『無限列車編』が公開されている。テレビアニメ第1期の終盤で視聴者からの熱狂的な支持を得たことで、制作会社は予算を増加し、『無限列車編』をテレビアニメを超えるクオリティーで制作。興行収入は日本国内だけで404億円を突破し、スタジオジブリの『千と千尋の神隠し』が約20年間保持していた記録を破り、日本アニメ史上最高の興行収入を上げる劇場版アニメとなった。今回の『無限城編』は3部作の最終決戦として登場することで、前劇場版よりもさらに規模が大きいものとなり、『鬼滅の刃』の熱狂が再び巻き起こることが予想できる」と論じた。
その上で、「かつて日本のアニメ作品は、原作漫画がヒットした後にアニメ化されるのが一般的だった。しかし、デジタルメディアが強化されるにつれ、無料で視聴できるアニメが浸透し、それが逆に原作漫画の売り上げを押し上げるという逆輸入のような現象が起こるようになった。『鬼滅の刃』のテレビアニメ第1期の豪華な内容は、原作漫画の売り上げを急激に押し上げ、このプロセスの代表例となった。なお、人気アニメ『進撃の巨人』も同様の方法で成功を収めている。アニメが多くの視聴者を引き付けることができるのは非常に理想的だが、視聴者にとってアニメが『無料』のコンテンツである一方、制作側にとっては莫大な費用を要さなければいけないことが問題だ。アニメには多額の投資が必要であり、海外での放送権や関連商品のライセンス、広告収入なども加味しなければならず、直接的に視聴者から収益を得るのは難しいとされている」と説明した。
また、「視聴者から直接収益を得る方法の一つとして劇場版アニメがあるが、大半は外伝的な物語や、本編とは無関係のオリジナル作品であることが多い。例えば、『クレヨンしんちゃん』や『名探偵コナン』、『ONE PIECE』などのシリーズが挙げられる。これらの劇場版アニメは非常に人気だが、本編との関連性は薄く、劇場版アニメを見逃しても後の物語を楽しむ上で大きな支障はない。これに対し、『鬼滅の刃』は非常に効果的な実例を示しており、連載された物語を分割し、『無限列車編』を見逃すと、その後の『遊郭編』の物語が理解できなくなってしまう作りにしている。今回の『無限城編』も同様の方法で制作され、最終決戦で無惨を打倒する前段として、より大きな投資でさらに素晴らしい映像が制作される。これが制作会社にどれだけの収益をもたらすのかは未知数だ。『鬼滅の刃』だけでなく、『劇場版ハイキュー!!ゴミ捨て場の決戦』も同じ上映方法を採用した。同作で上映された烏野高校対音駒高校の対決は、テレビアニメのシーズン4とその後の物語にとって重要な場面で、興行収入は日本国内で112億円を記録した」と紹介した。
一方、「このような方法で観客を劇場に呼び込むためには、『鬼滅の刃』や『ハイキュー!!』のように知名度のある作品である必要がある。そして、無料のテレビアニメから劇場版アニメに移行させるためには、物語の中で重要な部分を抜粋して上映しなければならない。『ゴミ捨て場の決戦』は『ハイキュー!!』の物語において約束された戦いであり、『無限城編』は『鬼滅の刃』の物語にとって絶対に見逃せないクライマックスだ。作品が観客に期待感を抱かせられない場合、このような方法での展開は難しいだろう」とも指摘。そして、「無料のテレビアニメは確かに観客層を拡大することができるが、制作には莫大(ばくだい)な費用がかかる。それを劇場版アニメとして有料で提供することで、制作費用を補填し、業界全体の新たな経営方法として機能させられる可能性がある」とまとめた。(翻訳・編集/岩田)