膨大な予算を投じてスタジアムを建てる必要性はあるの? アメリカZ世代が“オリンピック”への本音を語る
ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40〜18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
8月7日(水)のテーマは「わざわざ新スタジアムを作る必要ある? オリンピック離れと言われるアメリカZ世代の本音」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、オリンピックへの関心が薄れている要因や、オリンピックの在り方について語り合いました。
◆アメリカではオリンピックを気軽に観賞できる環境がない
2024年7月26日から8月11日まで開催中の「パリ・オリンピック」。日本もメダルラッシュが続き、オリンピックの話題で盛り上がっている人たちも少なくないでしょう。しかしながら、世界的には若者の“オリンピック離れ”が進んでいると言われています。
前回の東京オリンピックの視聴率は過去最低を記録しました。これはパンデミックの影響だけでなく、若者を中心にテレビ離れ、スポーツ観戦離れが進んでいるのが要因とされていますが、若者は本当にオリンピックに興味がないのでしょうか? Z世代で構成されているラボメンバーから話を聞いてみましょう。
メアリー:個人的には興味あるよ。いつも開会式が一番面白いけど、そのあとの観戦がなかなか見れないのが課題かなと思う。それが、新しい世代が魅力を感じにくい理由でもあるんじゃないかな。
なぜって、オリンピックを見るにはいろいろなストリーミングサービスへの加入が必要だから。テレビを持っていない人も多いからね。もっと見やすくなれば、私も全力で見ると思う。
ミクア:普段はあまりテレビでスポーツ観戦をしないけど、オリンピックの面白いところは、いつもはなかなか見られないスポーツを見られることだと思う。たとえば、体操って普段は見ないけれど、ネットで見るとつい見入ってしまうからね。フェンシングなど、滅多に見られないスポーツもオリンピックで見る機会があるので、それは素晴らしいと思う。
だけど、みんなが見ない理由もわかるよ。うちにはケーブルテレビがないから、ストリーミングサービスでオリンピックを見ることができたらいいなとは思う。でも、わざわざお金を払ってまで観ることはないかも。Twitter(現:X)やInstagramにビデオが上がってくるのを待って、それを見るだけかな。
ふたりの会話から、オリンピック観戦ができる環境にない人々がアメリカには多いという事実が明らかになりました。アメリカでは、ほとんどの地域が地上波でオリンピック中継を見られません。オリンピックを観るためにはお金を払ってケーブルテレビかストリーミングに加入する必要があります。
テレビを持っていない若者も多く、Netflixなどのサブスクに加入はしていても、さらにお金を払ってオリンピックのコンテンツを見ようという人は少ない。それが若者のオリンピックへの関心が下がる原因になっているかもしれません。
そこで中継局のNBCは、27人のクリエーターと提携して、インスタやYouTubeなどのSNSで、これまでとは違う切り口で若者にオリンピックをアピールするコンテンツを制作しています。
また、NBCは多くのセレブを総動員しており、ラップの大御所スヌープ・ドッグを特別アンバサダーとして現地に派遣。さらには会場でトム・クルーズ、ミック・ジャガー、アリアナ・グランデやニック・ジョナスなど多くのセレブの顔を抜くなどして、華やかに盛り上げています。Z世代専門家のシェリーは「これで若者たちの関心がどれほど高まったかはまだわかりません」と話しました。
◆予算を抑えたパリ・オリンピックへの評価は?
もう1つ、若者たちが注目しているのはオリンピックにかかる予算です。パリ・オリンピックの予算はこれまでに比べてかなり低く、報道によると記録的な予算オーバーとなった東京オリンピック約6割、リオ・オリンピックの約4割とされています。その理由は、新しいスタジアムなどの競技施設をほとんど作らなかったことにあります。ラボメンバーたちはどのように考えているのでしょうか?
ミクア:オリンピックのために新しいスタジアムを建設するなんて知らなかったし、考えたこともなかった。オリンピックだからといって、新しいスタジアムのためにそんなに膨大なお金を使う必要はあるのかな? オリンピックってそこまで重要なの?
そのお金を必要としている人がたくさんいるのに、新しいスタジアムにお金を使うっておかしくない? もし私がその国に住んでいたら、ちょっとムカつくと思う。オリンピックのためにそんなに使えるお金があるなら、国内で苦しんでいる人を助けるために使ったほうがよくない? もっと大事なことはたくさんあるのに、スタジアムにお金を使うのはバカバカしいと思う。
ヒカル:そうだよね。たしかリオ・オリンピックだったと思うけど、せっかく作ったスタジアムが今ではまったく使われていないんだよ。なのにメンテナンス費用などがかかるから、さらに無駄なお金が使われているんだ。たまにスポーツイベントやアーティストのライブなどに使われることはあっても、それだけでは毎年のメンテナンス費用をカバーできないよね。
だから、街のなかでお金を食いつぶすただの空き箱になってしまっているんだ。写真では今、まるでゴーストタウンのように見える。ホントに驚きだよ。
オリンピックのために新しいスタジアムを建設していたなんて予想外だった、というのがZ世代の本音。「そんなお金を使うのなら、今必要な人のために使ったほうがいい」という意見、実はアメリカの若いZ世代に共通した価値観です。
施設を作ることで儲かるのは建設業者など関連のビジネスだけで、そのお金が庶民にも再分配される、いわゆるトリクルダウン理論を信じている人は今ではほとんどいません。それどころか、大企業ばかりが儲かる行き過ぎた資本主義を強く批判し、国に対して社会保障の充実を求めるのも、この世代の大きな特色です。
今回のパリ・オリンピックは開会式からパリという街の魅力をフルに生かし、スタジアムも作りませんでした。「今あるものを生かす、お金を節約しサステナブルにやるという意味では、Z世代のオリンピックへの見方をポジティブなものに変えるかもしれません」とシェリーは話し、話題を締めくくりました。
<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40〜18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/ https://ny-future-lab.com/
※写真はイメージです
◆アメリカではオリンピックを気軽に観賞できる環境がない
2024年7月26日から8月11日まで開催中の「パリ・オリンピック」。日本もメダルラッシュが続き、オリンピックの話題で盛り上がっている人たちも少なくないでしょう。しかしながら、世界的には若者の“オリンピック離れ”が進んでいると言われています。
前回の東京オリンピックの視聴率は過去最低を記録しました。これはパンデミックの影響だけでなく、若者を中心にテレビ離れ、スポーツ観戦離れが進んでいるのが要因とされていますが、若者は本当にオリンピックに興味がないのでしょうか? Z世代で構成されているラボメンバーから話を聞いてみましょう。
メアリー:個人的には興味あるよ。いつも開会式が一番面白いけど、そのあとの観戦がなかなか見れないのが課題かなと思う。それが、新しい世代が魅力を感じにくい理由でもあるんじゃないかな。
なぜって、オリンピックを見るにはいろいろなストリーミングサービスへの加入が必要だから。テレビを持っていない人も多いからね。もっと見やすくなれば、私も全力で見ると思う。
ミクア:普段はあまりテレビでスポーツ観戦をしないけど、オリンピックの面白いところは、いつもはなかなか見られないスポーツを見られることだと思う。たとえば、体操って普段は見ないけれど、ネットで見るとつい見入ってしまうからね。フェンシングなど、滅多に見られないスポーツもオリンピックで見る機会があるので、それは素晴らしいと思う。
だけど、みんなが見ない理由もわかるよ。うちにはケーブルテレビがないから、ストリーミングサービスでオリンピックを見ることができたらいいなとは思う。でも、わざわざお金を払ってまで観ることはないかも。Twitter(現:X)やInstagramにビデオが上がってくるのを待って、それを見るだけかな。
ふたりの会話から、オリンピック観戦ができる環境にない人々がアメリカには多いという事実が明らかになりました。アメリカでは、ほとんどの地域が地上波でオリンピック中継を見られません。オリンピックを観るためにはお金を払ってケーブルテレビかストリーミングに加入する必要があります。
テレビを持っていない若者も多く、Netflixなどのサブスクに加入はしていても、さらにお金を払ってオリンピックのコンテンツを見ようという人は少ない。それが若者のオリンピックへの関心が下がる原因になっているかもしれません。
そこで中継局のNBCは、27人のクリエーターと提携して、インスタやYouTubeなどのSNSで、これまでとは違う切り口で若者にオリンピックをアピールするコンテンツを制作しています。
また、NBCは多くのセレブを総動員しており、ラップの大御所スヌープ・ドッグを特別アンバサダーとして現地に派遣。さらには会場でトム・クルーズ、ミック・ジャガー、アリアナ・グランデやニック・ジョナスなど多くのセレブの顔を抜くなどして、華やかに盛り上げています。Z世代専門家のシェリーは「これで若者たちの関心がどれほど高まったかはまだわかりません」と話しました。
(左から)ミクア、シェリー、ヒカル、ノエ、シャンシャン、メアリー/©NY-Future-Lab
◆予算を抑えたパリ・オリンピックへの評価は?
もう1つ、若者たちが注目しているのはオリンピックにかかる予算です。パリ・オリンピックの予算はこれまでに比べてかなり低く、報道によると記録的な予算オーバーとなった東京オリンピック約6割、リオ・オリンピックの約4割とされています。その理由は、新しいスタジアムなどの競技施設をほとんど作らなかったことにあります。ラボメンバーたちはどのように考えているのでしょうか?
ミクア:オリンピックのために新しいスタジアムを建設するなんて知らなかったし、考えたこともなかった。オリンピックだからといって、新しいスタジアムのためにそんなに膨大なお金を使う必要はあるのかな? オリンピックってそこまで重要なの?
そのお金を必要としている人がたくさんいるのに、新しいスタジアムにお金を使うっておかしくない? もし私がその国に住んでいたら、ちょっとムカつくと思う。オリンピックのためにそんなに使えるお金があるなら、国内で苦しんでいる人を助けるために使ったほうがよくない? もっと大事なことはたくさんあるのに、スタジアムにお金を使うのはバカバカしいと思う。
ヒカル:そうだよね。たしかリオ・オリンピックだったと思うけど、せっかく作ったスタジアムが今ではまったく使われていないんだよ。なのにメンテナンス費用などがかかるから、さらに無駄なお金が使われているんだ。たまにスポーツイベントやアーティストのライブなどに使われることはあっても、それだけでは毎年のメンテナンス費用をカバーできないよね。
だから、街のなかでお金を食いつぶすただの空き箱になってしまっているんだ。写真では今、まるでゴーストタウンのように見える。ホントに驚きだよ。
オリンピックのために新しいスタジアムを建設していたなんて予想外だった、というのがZ世代の本音。「そんなお金を使うのなら、今必要な人のために使ったほうがいい」という意見、実はアメリカの若いZ世代に共通した価値観です。
施設を作ることで儲かるのは建設業者など関連のビジネスだけで、そのお金が庶民にも再分配される、いわゆるトリクルダウン理論を信じている人は今ではほとんどいません。それどころか、大企業ばかりが儲かる行き過ぎた資本主義を強く批判し、国に対して社会保障の充実を求めるのも、この世代の大きな特色です。
今回のパリ・オリンピックは開会式からパリという街の魅力をフルに生かし、スタジアムも作りませんでした。「今あるものを生かす、お金を節約しサステナブルにやるという意味では、Z世代のオリンピックへの見方をポジティブなものに変えるかもしれません」とシェリーは話し、話題を締めくくりました。
<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40〜18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/ https://ny-future-lab.com/