―トランプ前大統領が支援姿勢を前面に打ち出す、秋口以降には価格も復活期待強い―

 「暗号資産(仮想通貨)」が熱い視線を浴びている。今年に入り米国で「ビットコイン」や「イーサリアム」のETF(上場投資信託)が承認されたことが注目されたが、新たに高い関心を集めているのが、米大統領選の共和党候補であるトランプ前大統領が「親・仮想通貨」の姿勢を前面に打ち出していることだ。11月の大統領選でトランプ氏が勝利すれば、仮想通貨関連株の人気が一気に盛り上がる可能性がある。

●高い資金力狙いトランプ氏は「仮想通貨」に大接近

 トランプ氏の銃撃事件、そしてその後の米大統領選における民主党候補のバイデン大統領からハリス副大統領への交代と大きく揺れる米国だが、足もとでは更に景気後退(リセッション)懸念がにわかに高まってきた。先進各国で社会の分断が進むなか、誰が米大統領選の勝者となろうとも難しい舵取りを迫られることは間違いない。こうしたなか、トランプ氏が熱烈アピールをしている業界がある。それが「仮想通貨」だ。

 もともと同氏は、仮想通貨に対して否定的な認識を持っていた。しかし、バイデン大統領に代わり民主党の候補となったハリス副大統領との接戦予測が強まるなか、高い資金力を誇る同業界へのアピールを通じて、一段の得票と献金の増加を狙っているとされる。7月下旬には、世界最大の債券ブローカーの一角であるキャンター・フィッツジェラルドが、ビットコイン融資事業を開始すると明らかにしたことが仮想通貨に絡んだ大きな話題として挙げられる。他にも、日本の投資家にもなじみ深い米モルガン・スタンレー がブラックロック とフィデリティのビットコインETFを顧客に推奨できるようになったとの一部報道も同業界にとっては追い風となっている。

●ハリス氏も仮想通貨業界に接近する可能性

 こうしたホットな話題が飛び交う仮想通貨だが、直近で開催されたイベントの中でトランプ氏が「米国をビットコインの超大国にする」と述べた。同イベントの中で、中国などに先行されることを懸念していることを示したほか、厳しい締め付けを行っている当局、つまり米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長を解任すると発言した。

 こうした動きを見せるトランプ氏に対抗して、ハリス氏も仮想通貨業界への訴え掛けを今後強化してくる可能性もあるだろう。実際、足もとで大手の仮想通貨取引所であるバイナンスの委員会にも加わった経験のあるデビッド・プラウフ氏が同氏の政策顧問として陣営に加わるとの報道が見られている。両氏の争いの結果、大きな政策的支援ないし庇護が仮想通貨に付与される結果となれば、ビットコインをはじめとした各種仮想通貨が一段と活況となる未来は十分にあり得る。

●足もとのビットコイン価格は調整も秋口以降に注目

 ビットコイン価格は3月に7万3000ドル台の最高値をつけた後、足もとでは6万ドル前後と調整基調にあるが、8月、9月は過去も値動きが弱い時期だったことは押さえておきたい。直近の株式市場の急変を受けて、秋口以降は大統領選を視野に仮想通貨に資金が向かう展開もシナリオとして念頭に入れておくべきだろう。そこで、以下では「仮想通貨」関連の銘柄を取り上げた。具体的には、仮想通貨取引所を運営している企業のほか、仮想通貨やトークンを活用したサービスを提供している企業に焦点を当てている。

●メルカリ、博報堂DY、トリプルアイ、マーチャントなど