新型フリードクロスターのフロントフェイス(写真:三木宏章)

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2024年6月28日に発売した、3代目となる新型フリード(写真:三木宏章)

本田技研工業(以下、ホンダ)が、2024年6月28日に販売を開始した新型「フリード」に試乗した。

新型フリードの概要

2008年に発売された初代モデル以来、30代や40代の子育て世代を中心に大きな支持を受けているコンパクトミニバンがフリードだ。その3代目となる新型は、シンプルで上質な外観の「フリード エアー(FREED AIR)」と、タフな外観でアウトドアにもマッチする「フリード クロスター(FREED CROSSTAR)」という2タイプを設定。6人乗りと7人乗りを選べる従来の3列シート車は継続しつつも、5人乗りの2列シート車はフリード クロスターのみとするなど、ラインナップを刷新しているのが特徴だ。

【写真】ホンダの大人気ミニバン、3代目となる新型「フリード」の内外装をチェック。フリード エアーとフリード クロスターの違いは?(90枚)

また、ハイブリッド車には、独自の2モーターシステム「e:HEV(イーエイチイーブイ)」を採用するなどで走りを改善。幅広いユーザー層が運転しやすい小ぶりな車体、余裕ある室内や使い勝手のいい装備など、先代から定評ある基本構成を継承しつつ、より商品力に磨きをかけている。

そんな新型フリードの中でも、今回は、ハイブリッドe:HEV仕様の2モデルを試乗。フリード エアーの最上級グレードであるEXの6人乗り・FF車と、クロスターの5人乗り・4WD車に乗ってみた。いずれも実感したのは「誰もが気軽に、安心して乗れるクルマ」。運転免許取り立ての初心者から女性、高齢者など、さまざまな世代や性別、スキルのドライバーにとって、とても親しみやすく、気負わずに運転できるモデルに仕上がっている。

では、実際に、フリードのどんな点において、筆者がそうした印象を持ったのか。横浜の市街地や幹線道路、高速道路などで試した乗り味について紹介しよう。

フリード エアーの概要とラインナップ


フリード エアーのリアビュー(写真:三木宏章)

まずは、ベーシック仕様であるフリード エアーから紹介していく。前述のとおり、今回試乗したのはハイブリッドe:HEV仕様の最上級グレードEXで、6人乗り・FF車となる。

ちなみにフリード エアーのラインナップは、1.5L・ハイブリッド仕様のe:HEVに加え、1.5Lのガソリン車と、2種類のパワートレインが用意されている。グレードは、ベースグレードの「フリード エアー/フリード e:HEV エアー」と、最上級グレードの「フリード エアー EX/フリード e:HEV エアー EX」の2種類で、全グレードが3列シート車となる。

乗車定員/シートは、フリード エアーが2列目キャプテンシート(2名乗車シート)の6人乗り仕様のみを設定。EXには今回乗った6人乗りに加え、2列目をベンチシート(3名乗車シート)にした7人乗り仕様も用意する。また、駆動方式は、ガソリン車とe:HEVのEXグレード7人乗り仕様はFFのみの設定、そのほかはFF車と4WD車を揃えている。

エクステリアデザイン/ボディサイズ


フリード エアーのサイドシルエット(写真:三木宏章)

フリード エアーの外観は、ミドルサイズミニバン「ステップワゴン」の6代目(2022年5月発売)に新設定した「ステップワゴン エアー」を彷彿させる。とくに、スッキリした印象のフロントフェイスは、兄弟車と呼べるほどイメージが似ている。また、リアビューも、どっしり感のある台形デザインに変貌。どこか丸味のある先代モデルと比べて、よりミニバン的なイメージを演出している。

なお、新型のボディは、全長4310mm×全幅1695〜1720mm×全高1755(FF車)〜1780mm(4WD車)、ホイールベース2740mm。新型は、とくにハイブリッド車を1モーター式から2モーター式のe:HEVに変更したことで、パワートレインが大型化。そのため、全長を45mm伸ばして対応している。ただし、そのぶん2列目シートの足元スペースは+30mmほど拡張。1列目シートの背面構造の改良と相まって、より余裕ある2列目空間を作り出している。

ちなみに、フリード エアーの6人乗りEXグレードには、後席用のリアクーラーや本革巻きステアリングホイール、EX専用の15インチアルミホイールなどを標準装備。また、運転席/助手席シートバック上部にはUSBチャージャー(Type-C)も備える。こうしたベースグレードにない数々の装備により、さらに快適で利便性の高い機能を持つ。

エアーEXの運転席まわり


試乗したフリード e:HEV エアー EXの運転席&助手席(写真:三木宏章)

運転席や助手席には、新採用の「ボディースタビライジングシート」を装備している。人の骨格を研究して開発したというこのシートは、長時間座っても疲れにくい構造を持つことが特徴だ。実際に座ってみると、背中やお尻をシートがしっかりと支えている感じ。また、座面や背もたれは、硬すぎず、軟らかすぎない適度な弾力を持ち、とても快適だ。とくに筆者のような腰痛持ちの場合、シートの形状や硬さはかなり気になる点。おそらく、新型のシートは、ロングドライブなどでも疲れにくく、腰痛にもなりにくいことが期待できる。

運転席からの視界は、水平基調のインパネなどにより、かなり広くて見通しがいい。とくに新型では、メーターの位置を変更。先代がインパネ上部に設置したタイプだったのに対し、ステアリング奧に配置したインホイールタイプとすることで、より視界がすっきりとした印象だ。また、フロントピラーの1本化やドアミラーの位置の変更により、斜め前方の視界をより向上させており、歩行者を認識しやすくしたほか、細い路地などでの見切りのよさなどに貢献している。


インパネまわり(写真:三木宏章)

パワーボタンを押すと、ハイブリッド用バッテリーの充電状況が良好のため、エンジンはかからず、無音のままだ。新採用した7インチTFT液晶メーターは、上面に速度計、その下には、安全運転支援システム「ホンダ センシング」の作動状況などを映し出すマルチインフォメーション・ディスプレーを搭載。画面の表示がとてもシンプルで、見やすいため、運転に必要な最低限の情報を直感的に入手可能。メーターにとらわれず、運転に集中できる点も好印象だ。

エアーEX・街乗りの印象


フリード エアーの試乗シーン(写真:三木宏章)

シフトレバーをD(ドライブ)モードに入れて、アクセルをゆっくりと踏み込むと、スムーズに発進する。新型は、電動パーキングブレーキを採用しており、アクセルを踏むと解除される仕組みだ。従来の機械式パーキングブレーキでは、解除を忘れるとブレーキを引きずったまま発進するケースもあったが、そんな心配は無用。そのぶん、前後左右の安全確認などに集中でき、とても便利だ。

ちなみに新型フリードのハイブリッド車に採用するe:HEVは、走行用と充電用のモーター2基とエンジンを組み合わせたホンダ最新のハイブリッド機構だ。発進や市街地の低速走行時などはモーターのみで走行するEVモードを使用。速度が上がったり、加速時などではエンジンで発電しモーターで走行するハイブリッドモードに切り替わる。さらに、高速道路などでは主にエンジンの駆動力を使うエンジンモードで走行する。e:HEVは、これら各モードを状況に応じて使いわけることで、優れた燃費性能とスムーズな走りを両立することが特徴だ。


フリード エアーのエンジンルーム(写真:三木宏章)

新型フリードでは、コンパクトSUV「ヴェゼル」などに採用する新世代の1.5Lエンジンとe:HEVを搭載。エンジンの最高出力78kW(106PS)/6000〜6400rpm、最大トルク127N・m(13.0kgf-m)/4500〜5000rpmといったスペックはヴェゼルと同じ。ただし、走行用モーターは、フリード用が最高出力90kW(123PS)なのに対し、ヴェゼル用は最高出力が96kW(131PS)。パワーはやや、ヴェゼルのほうが上だ。

バッテリーの充電状況がいいので、発進してしばらくはモーターのみで走行するEVモードのまま。ただし、ヴェゼルのe:HEV車は、平坦な道であれば50km/h程度の速度までモーターのみで走行できるが、同じパワートレインなのに、フリードでは30km/hを超えるあたりでエンジンが始動しハイブリッドモードに切り替わる。


正面から見た新型フリード(写真:三木宏章)

この点について、ホンダの開発者によれば、「フリードのほうが車体が重いことと、バッテリーの容量が関係している」という。たしかに、試乗したフリード e:HEV エアー EXのFF車は、車両重量1480kg。ヴェゼルe:HEVでは、同じFF車で1350〜1380kgだから、フリードのほうが100〜130kgほど重い。

また、搭載する走行用リチウムイオンバッテリーは、フリードe:HEVが48セルなのに対し、ヴェゼルe:HEVは60セルで、より大容量。これは5人乗りのヴェゼルに対し、フリードは5〜7人乗りと、乗員がより多いことで、バッテリーの搭載スペースも比較的小さくなるためだ。より車体が重く、バッテリー容量も小さいフリードe:HEVは、EVモードの走行領域に関しては、ヴェゼルe:HEVほどの性能は確保できなかったといえる。

スムーズな切り替えと高い静粛性


横浜の市街地を走る新型フリード(写真:三木宏章)

ただし、市街地などを、交通の流れに乗って40〜60km/h程度で走っているぶんには、エンジンの音はほぼ聞こえない。EVモードからハイブリッドモードに切り替わるタイミングがわからないほど静かだ。もちろん、登り坂を走るときなど、アクセルをグンッと踏み込めば、より多くの電力を発電するためエンジン回転数は上がり、音は聞こえる。だが、そんなときも、うるさい感じはあまりない。タイヤのロードノイズなどもあまり気にならないため、室内の静粛性はかなり高いといえるだろう。

なお、燃費性能は、フリードe:HEVのFF車でWLTCモード値25.3〜25.6km/L。対するヴェゼルe:HEVのFF車は25.2〜26.0km/L。燃費の面では、ほぼ同等か、タイプによってはフリードe:HEVがしのぐケースもあるようだ。


後ろから見た新型フリード(写真:三木宏章)

ほかにも新型フリードでは、信号待ちの際などに、ブレーキを踏み続けなくても停車状態を保持するオートブレーキホールドも搭載。渋滞路を走る際などに、疲労を軽減してくれる装備が加わったのもうれしい点だ。また、最小回転半径は、先代モデルと同様の5.2mを確保。細い路地を走るときやUターンなどの際、バツグンの小まわりのよさを実現する。ちなみに、マルチインフォメーション・ディスプレーには、おおよそのタイヤの切れ角を表示することも可能。バック駐車などの際、前輪の位置を把握するのが苦手で、ハンドル操作に苦労するユーザーなどに対応する親切装備も加わった。

エアーEX・高速道路での走り

高速道路での乗り味も静かで軽快だ。今回は、横浜周辺の首都高速道路・湾岸線など、最高速度が60〜80km/hのエリアを試乗したが、入り口のランプにある登り坂もストレスなく加速するし、比較的急なコーナーでは、車体が外側に傾くロール現象も少なく安定感も高い。また、本線を法定速度で巡航する際、平坦な道ではエンジンの駆動力で走るエンジンモードで走行するが、その際も直進安定性が高く、室内も静かだ。

なお、同じ高速道路を走っていても、e:HEVは、道の勾配などにより駆動方法が細かく切り替わる。例えば、登り勾配になると、エンジンで発電しモーターで走るハイブリッドモード、下り勾配でアクセルを緩めるとモーターのみで走るEVモードに切り替わるといった感じだ。だが、それらモードの切り替え変更タイミングも、ほぼ気づかないほどスムーズ。80km/hまでの速度であれば、市街地と同様に室内の静粛性は高く、快適なドライブを堪能できる。

新型フリードでは、先進の安全運転システム「ホンダ センシング」を全タイプに標準装備する。とくに高速道路で効果を発揮するのが、「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」だ。先行車がいない場合は設定した車速を自動で維持し、先行車がいる場合は自動で加減速し、適切な車間距離を保つのがこのシステム。新型のACCは、とくに、先行車に追い付いた場合などの減速がゆるやかになったことで、ドライバーの感覚により近い制御となっていることが印象的だった。

従来は、こうしたシーンで、減速が急過ぎて、「先行車に追突するのでは?」といった不安を覚え、ついついブレーキを踏んでしまう場合もあった。その点、新型は、不安なく制御をシステムに任せておけるようになった。もちろん、こうした制御は、天候や路面状況によってはきちんと作動しない場合もあるので、過信は禁物。だが、安心感が増したのは確かだろう。


新型フリードの2列目シート(写真:三木宏章)

なお、今回は試す機会はなかったが、新型のACCは、渋滞追従機能も追加されている。これは、渋滞などで先行車が停車すれば、自車も合わせて停車。先行車が再発進する際は、一定の操作により追従を再開する機能だ。とくに、日本の高速道路に渋滞はつきもの。休日の家族ドライブはもちろん、仕事の行き帰りなどのラッシュアワー時などに、渋滞に遭遇するケースは多い。そうしたときに、ドライバーの疲労軽減に貢献する新機能が追加されたのは、安全面も含めてありがたい点だ。


新型フリードの3列目シート(写真:三木宏章)

なお、新型フリードのホンダ センシングでは、ほかにも壁などの障害物の見落としによる衝突回避・被害の軽減を支援する「近距離衝突軽減ブレーキ」、渋滞路など車速65km/h以下で車線中央付近を走行するようステアリング操作を支援する「トラフィックジャムアシスト」、先行車や対向車を検知し、ハイ/ロービームを自動で切り替える「オートハイビーム」なども追加。安全支援機能もさらに向上させている。

クロスター5人乗りの走行インプレッション


試乗したフリード クロスターの外観(写真:三木宏章)

一方、フリード クロスター。こちらも先述したように、ハイブリッドのe:HEV仕様で、2列シートの5人乗り・4WD車に試乗した。

フリード クロスターの外観は、現行モデル以上にタフなイメージを演出していることが特徴だ。フロントグリルやリアバンパーには金属調で、立体的デザインの専用ガーニッシュを採用。また、フロントのロアガーニッシュにはフォグライトを装備するほか、フロントバンパーの開口部も大型化。ボディサイド下部や前後フェンダーにも黒基調のガーニッシュ、さらにヘアライン仕上げのルーフレールなども備え、アウトドア・ユースを想起させるデザインを採用する。

なお、このタイプのラインナップは、今回試乗したハイブリッドのフリード e:HEV クロスターとガソリン車のフリード クロスターの両タイプに、2列シートの5人乗りと3列シートの6人乗り仕様を設定。駆動方式は全タイプにFF車と4WD車を設定する。


フリード クロスターの試乗シーン(写真:三木宏章)

フリード e:HEV クロスターの走りも、フリード e:HEV エアーと同様、発進から加速時、高速巡航まで、ハイブリッド車特有の静かでスムーズな走りを実感できる。また、新型の4WD車では、独自の「リアルタイムAWD」を採用。これは、路面や車両状態を判断し、4輪駆動と前輪のみの駆動などを瞬時に切り替え、つねに最適な駆動力を配分するシステムだ。とくに、e:HEVとのマッチングでは、走る・曲がる・止まるといった、走行するシーンすべてにおいて高い安心感を実現するという。

実際に走ってみると、例えば、比較的高い速度で旋回するコーナーなどでの安定感はFF車以上。車体のロールする感じもより少なく、コーナー入り口から旋回、出口までハンドル操作に対してリニアに車体が反応してくれる感じだ。ドライバーの思いどおりにクルマが走ってくれる点では、FF車よりも上だろう。また、今回は試せなかったが、雨天時などのウエットな路面はもちろん、雪道などスリップしやすいロケーションでも効果を発揮してくれることが期待できるだろう。

室内ユーテリティ


フリード クロスターのインテリア(写真:三木宏章)

新型フリードでは、電動で簡単に開閉できる「両側パワースライドドア」や、ドア下に⾜先をかざすとパワースライドドアが⾃動で開閉する「ハンズフリースライドドア(オプション)」など、先代モデルでも好評だった利便性の高い装備を継承する。また、シートアレンジが豊富な点も同様だ。


2列目シートを倒した状態のラゲージスペース(写真:三木宏章)

とくに、今回試乗したフリード クロスターの5人乗り仕様では、先代の5人乗り仕様「フリード+(プラス)」と同様、6:4分割式の2列目ベンチシートにダブルフォールダウン機構を搭載する。これは、2列目シートの座面を前方に跳ね上げ、背もたれを前に倒すことで、荷室をフラットにできる機能だ。シートすべてを倒せば、大人2名が膻になれるベッドスペースとなり、車中泊などに便利。

また、例えば、助手席側のみ倒せば、サーフボードなどの長尺物を積むこともできる。とくに、アウトドアのテイストを強調したフリード クロスターの場合、こうした機能に注目するユーザーは多いだろう。なお、純正アクセサリーには、テールゲートに簡単に設置できる「テールゲートタープ(税込み3万3000円)」を設定。ほかにも、キャンプなどの野外レジャーに最適なアイテムを数多く用意している。


テールゲートタープを装着した状態(筆者撮影)

ウォークスルーが便利なフリード エアー

一方、6人乗りと7人乗りから選択できる3列シート仕様のフリード エアーも、先代のスタンダードタイプ「フリード」と同様に、豊富なシートアレンジが可能だ。また、6人乗り・3列シート車では、ウォークスルーの利便性も向上している。

ウォークスルーとは、車外に出ることなく、1列目や2列目、3列目などのシート間移動をしやすくする構造のことだ。例えば、停車時に2列目や3列目のシートに装着したチャイルドシートに座らせた子どもを、運転席や助手席から移動して世話する際に便利。雨の日などでも車外に出ることなく、後方へ移動できる。

新型フリードでは、運転席と助手席、2列目の左右キャプテンシートの形状を変更。各シートの背もたれ内側上面をより絞り込むことで、人が通りやすくなる工夫を施している。これにより、より楽でスムーズな室内の前後移動を実現。メインターゲットの子育て世代から支持を受けている、使い勝手のよさをアップしている。


3列目シートを収納した状態のラゲージスペース(写真:三木宏章)

さらに新型の3列目シートは、左右に跳ね上げて荷室を広くする際、シートを垂直に固定できるように改良。先代モデルでは、ハの字型に固定するタイプだったのに対し、よりさまざまな形状の荷物を積みやすい荷室空間としている。ほかにも、リアクオーターガラスの面積を拡大することで、3列目シート着座時の快適性も向上。先述した1列目・2列目シート形状変更による前方視界の改善と相まって、閉塞感をなくし、さらに開放感ある3列目空間を演出している。

新型フリードでは、エアーのEXグレードとクロスターの6人乗り仕様に、リアクーラーを新設したことも注目点だ。先代モデルでは、前席のみだったエアコンを、2列目シート上方の天井にも追加。今回、実際に、フリードe:HEVエアーのEXで体験したが、その効果は絶大だった。試乗日は、外気温30度以上の真夏日。だが、エアコンの温度設定を25度にしていても、やや寒く感じるほど室内はキンキンに冷えていた。とくに最近、日本の夏は、かなり猛暑となる日も多く、小さな子どもなどを後席に乗せて走行する際は、熱中症にも注意が必要だ。その意味で、新型のリアクーラーは、子育て世代などにとって、より安心感を高める装備といえるだろう。


エアコン操作パネルやシフトパネルが集約されたインパネまわり(写真:三木宏章)

ちなみに新型では、前席にあるエアコンスイッチの位置を、シフトパネルの左側に移設している。これにより、インパネまわりがよりスッキリした感じとなっているが、運転席から操作する場合には、やりづらさも少し感じた。とくに、シフトノブに近い温度調整用などのスイッチ類は、運転席からだとノブの死角に位置するため、見づらいのだ。操作するには、頭ごと助手席側に向けないと位置が分からず、操作しにくい。また、慣れの問題もあるだろうから、さほど問題となるレベルではないが、やや気になった点だといえる。

試乗を終えて感じたこと

このように、新型フリードの乗り味は、市街地から高速道路まで、幅広いシーンでスムーズかつ静か。また、コンパクトな車体による小まわりのよさなども健在だ。加えて、車幅感覚などをより把握しやすくなった前方視界により、運転するハードルはかなり低くなった印象だ。さらに、今回試乗したフリード e:HEV エアー EXの6人乗り仕様では、2列目シートの座り心地なども向上。3列シートの開放感なども増したことで、ドライバーはもちろん、助手席や後席の乗員まで、先述のとおり、「誰もが気軽に、安心して乗れるクルマ」に仕上がっていると感じた。


フリード クロスターのリアビュー(写真:三木宏章)

なお、新型モデルの価格(税込み)は250万8000円〜343万7500円。先代モデルの価格(税込み)は233万900円〜321万5300円なので、全体的にやや高くなっている。だが、装備の充実度を考慮すれば、さほど大きな値上げ幅とはいえないだろう。むしろ、可能な限り価格帯を抑えた点は、「このモデルを絶対にヒットさせたい」というホンダの意気込みがうかがえる。

ホンダによれば、新型フリードの受注状況は、2024年6月28日の発売から試乗日の2024年7月9日までの時点で「6人乗り車73%、5人乗り車18%、7人乗り車9%」。こうした構成比は、先代モデルと同様で、新型でも圧倒的に3列シートの6人乗り車が人気だ。とくに今回試乗したなかでも、フリード e:HEV エアー EXの6人乗りFF車は、リセールバリューもいい最上級グレードのハイブリッド車であることもあり、人気の高いタイプのひとつになることが予想できる。しかも、価格(税込み)は304万7000円。300万円前半の価格であることも、子育て世代などのユーザーには注目だといえる。

個人的におすすめはクロスターのFF車


フリード クロスターのフロントフェイス(写真:三木宏章)

一方、今回試乗したもう1台、フリード e:HEV クロスターの5人乗り4WD車は、価格(税込み)339万3500円だ。フリードのなかでも、もっとも荷室の使い勝手のいいのが2列シートの5人乗り車。小さな子どもなどのいない筆者の場合は、こちらのタイプのほうが気になる。仕事はもちろん、アウトドアなどの趣味にも使いやすいからだ。ただし、もし購入するのであれば、FF車のほうを選ぶだろう。同じタイプのFF車であれば、価格(税込み)は316万2500円。差額の約23万円で、先述した純正アクセサリーなどを追加し、より趣味も楽しめる仕様とするほうを選ぶだろう。


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ともあれ、ホンダ登録車の中で「最も売れ筋」といえるクルマがフリードだ。自販連(日本自動車販売協会連合会)のデータによれば、先代モデルは、2023年度(2023年4月〜2024年3月)の新車販売台数で7万4681台を記録(全体の10位)。モデル末期にもかかわらず、依然として高い人気を誇っていた。その新型に対し、市場がどのような反応を示すのかが今後注目だ。

(平塚 直樹 : ライター&エディター)