特別展『昆虫 MANIAC』

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昆虫をテーマにした特別展『昆虫 MANIAC』が、2024年10月14日(月・祝)まで、東京・上野公園の国立科学博物館(以下、科博)にて開催されている。

地球上で報告されている生物種のうち、半数以上を占める約100万種にのぼる最大の生物群、昆虫。体のつくりから行動、能力にいたるまで多様性が高く、変化に富んでいる。特別展『昆虫 MANIAC』では、科博の研究者によるマニアックな視点と研究者がセレクトしたマニアックな昆虫標本、最新の昆虫研究を織り交ぜて展示。身近な昆虫はもちろん、見たこともない「ムシ」たちが構成する驚異の世界に迫る。

本展の公式サポーターを務めるのはアンガールズ。昨年11月、山根良顕がテレビ番組『元就。』のロケで発見した昆虫がハネカクシの新種であることが判明、国際的な学術誌にも認められ、昆虫は「モトナリヒメコバネナガハネカクシ」(通称「モトナリ」)と命名された。本展で「モトナリ」の展示が決定したことから、サポーターへの就任が決定したという。アンガールズのオープニングトークと合わせ、報道内覧会の様子を紹介しよう。

アンガールズ

アンガールズ「博物館でないと見れない展示も多数」

本展のオリジナルグッズ、3WAYアクリルミニムシメガネをつけて登場したアンガールズ。今回の仕事のきっかけは、山根が「モトナリ」を発見したのがきっかけということで、田中卓志は「(今回、自分は)山根のバーター」と言って笑う。山根は「モトナリ」を発見したときの心境を聞かれ、「まさか新種がいると思っていなかった。見つけたときは先生に『これ珍しいですね』と言われて、おべんちゃらかと思ったけれど、本当に新種でびっくりしました」と回答。科博の研究者によれば、タレントが新種を発見するのは一生に一度あるかないかの珍事とのことだ。

アンガールズ

本展の見どころについては、田中は「オオセンチコガネが、動物の糞にグアーッと頭を突っ込んでいて、昆虫に笑わせてもらった」、山根は「蝶々とかキラキラしていて綺麗なので、女の子も楽しめる展示」とコメント。「半分オスで半分メスの(ギナンドロモルフ(雌雄型)の)クワガタなどは、博物館でないと見れない」「半分田中、半分山根とか、楽だなあと思って」「楽じゃない」と掛け合いを見せた。その後、二人は素数ゼミの声を聞く体験型の展示に触れ、「普通に生きてたら、なかなか体験できないですよ!」などと内容の多様さを強調。最後にはムシになりきってポーズを取り、会場を盛り上げた。

アンガールズ

ムシたちの彩り豊かな生態

本展は、「第1章 昆虫とムシ」「第2章 多様なムシ」「第3章 ムシと人」の3章からなる構成だ。「第1章 昆虫とムシ」は昆虫の説明や定義を行い、鑑賞者が昆虫について知識を得たところで、「第2章 多様なムシ」でたくさんの昆虫やムシを紹介する。(本展では、「動物」「6脚」といった学術的な定義に該当するものを「昆虫」とし、昆虫および主に陸上で生息する節足動物を総称して「ムシ」と呼ぶ。)第2章は更に「トンボの扉」「ハチの扉」「チョウの扉」「クモの扉」「カブトムシの扉」と分かれ、それぞれのムシたちの標本や生態などを説明する。そして「第3章 ムシと人」ではムシと人間の関わりを深く紹介しているので、終盤にはムシについてすっかり詳しくなっているだろう。

会場には、日常的に接しているはずのムシから、見たこともないような珍しいムシが結集。「ギンヤンマのヤゴ」「エゾオナガバチ」「ウスバキチョウ」「オオナガトゲグモ」「オオセンチコガネ」の2メートルを超える巨大模型も登場し、それぞれ産卵、飛行、捕獲などの瞬間を表現している。模型のリアルさや造形の不思議さに目を奪われた。

ギンヤンマのヤゴの模型

エゾオナガバチの模型

ウスバキチョウの模型

オオナガトゲグモの模型

オオセンチコガネの模型

221年ぶりの大発生で話題の素数ゼミを現地調査し、鳴き声を聞くことができる展示や、中南米に生息するシタバチが引き寄せられる香りを嗅ぐことができる展示、壁を自在に行動するクロカタゾウムシの足の説明など、ムシたちを視覚ばかりではなく聴覚、嗅覚、触覚といった幅広い切り口で紹介。想像もつかないような生き様に息を呑むだろう。

素数ゼミの声を聞くことができる展示

シタバチが集まる香りを嗅ぐことができる展示

「マニアック」なムシたちを「マニアック」な視点で一挙紹介

本展は、ムシを研究する視点がマニアックで、説明が非常に充実している。例えばモルフォチョウやタマムシなどは、太陽光線が干渉し、特定波長の光(色)だけが強調される構造色の作用で体表がメタリックに輝くが、この構造色の発色メカニズムの主な3種類を説明、該当するムシたちを紹介している。恐らく生存競争のためにこういった色になったのだろうが、人知を超えて美しいムシたちに思わず見入ってしまう。

構造色のパターン「多層膜干渉」のパネル

構造色のパターン「回折格子」のパネル

構造色のパターン「フォトニック結晶」のパネル

会場内では珍しい昆虫標本をたくさん見ることができるのも嬉しい。ムシはオスかメスのどちらかに生まれつくものだが、稀に両方の特徴が同居したものが生まれることがある。それらはギナンドロモルフや雌雄型と呼ばれ、甲虫ではカブトムシやクワガタムシで見つかることが多いという。会場には右半分が雄、左半分が雌の特徴を持ち、羽の模様や色が中心線で全く異なる蝶も紹介されており、神秘的な造形に息を呑む。こういった個体はとても珍しいとのことで、博物館ならではの貴重な展示と言えるだろう。

この世の神秘のような、ギナンドロモルフのチョウ

暮らしの中にいるムシたちを知り、身近に感じる

日本人は昔からムシを好む傾向にあるそうだ。平安時代の書物などにはコオロギやキリギリスが奏でる音を愛でるシーンが登場するし、江戸時代には市中でムシを売る商売があった。中国でもムシの音を楽しむ文化があり、本展ではムシを飼うために使っていた虫かごなども展示されている。ひょうたんや陶、藤など、素材も形もさまざまな籠は、贅をつくした人形の家のようでとてもかわいらしい。

多様な虫かごは、まるでオーダーメイドの家のよう

砂漠や極地であってもムシは生息しており、都会に住んでいても身近に暮らすムシもたくさんいる。気候の温暖化や都市化に適応したり、外来種としてやってきて増えているものも。ほか、絶滅が危惧されるものや、基礎的な情報がないために減っていても分からないものもいるのだという。一方、新種として発見されるムシもいる。会場ではアンガールズの山根が発見したモトナリも紹介されている。

「第3章 ムシと人」

「第3章 ムシと人」

ムシについて何かを明らかにするためには、まずムシを見つけなければならない。そのための技や道具などに着目、皿を用いたトラップや花を目印にする待ち伏せ作戦など、学術的な説明のみならず、ムシを見つけるための実践的な方法が紹介されているのも新鮮だ。

会場風景

本展は大きなムシや小さなムシ、美しいムシや目立つムシなどを展示するほか、不思議な生態や変わった性質、そのムシならではの得意技など、それぞれの特性に深掘りして一挙に紹介、ムシたちの神秘と謎を開示する内容になっている。好奇心を刺激してくれる特別展『昆虫 MANIAC』は、2024年10月14日(月・祝)まで、国立科学博物館にて開催中。


文・写真=中野昭子