Renaissa(SRV250)は海外でもニーズ喚起!【このバイクに注目】(このバイクに注目)
ヤマハが1992年にリリースしたSRV250は、1988年のXV250Viragoで開発した空冷250Vツインを搭載、感度の高いトラディショナル・スポーツとして贅沢な仕様で満を持して投入されたが、期待したほどに人気は出なかった。
そこでデザインコンセプトを気品のあるトラディショナルなテイストから、馴染みやすいカジュアルな、しかしクラシカルさの漂う感性へと変えた「RENAISSA」を1996年にリリース。
車名のルネッサは文化の回帰と革新をあらわす「ルネッサンス」からきている。そして海外マーケットへの訴求もはじめたのだ。
そもそもヨーロッパやアメリカだと日本製250ccは小型バイクで、スポーツバイクとして扱われなていない。
それでも敢えて空冷、60°Vツイン、しかもロングストロークという、緻密な構成が得意な日本製ヤマハならではの趣味性をアピール。
その結果、ヨーロッパでは女性ライダーをはじめとした層に受け容れられ、北欧の女性ふたりのツーリングブログが人気だったりと、耐久性の高さも功を奏していまも車名を知るファンが存在している。
国内でもオレンジとシルバーの単色でカジュアルさを纏ったことからニーズも喚起され、真っ白な特別カラーのYSPバージョンが用意されるなど、徐々に注目されるようになっていった。
ビッグバイクのクオリティを奢ったSRV250だったが……オリジナルのSRV250は、時代を超越した新し過ぎず旧くもない、トラディショナルなデザインをヨーロピアンな感性でまとめられていた。
Vツインならではの単気筒と変わらないスリムなエンジンの特徴をアピールしようと、燃料タンクは上から眺めると想像もつかない細身が強調され、個性豊かなルックスが大人好み。
250ccでも排気量概念を超えて幅広いオトナの年齢層に浸透させようと、電着+静電塗装からアルミのバフがけにマフラーやメーター類を、ビッグバイクと同レベルの手間とコストをかけたクオリティを奢ったのだ。
ボア×ストロークが49mm×66mmという、250ccツインではまず採用しない明確なロングストロークで、低い回転域は250ccを感じさせない粘りと穏やかさを特徴としていた。
反面、高回転域まで引っ張ってもピークパワーを感じさせる気配がなく、そこがトラディショナルといえど250ccのスポーツ性を期待していた層の受け容れにくさにもなっていた。
また品位の高い、デザインの完成度も、ヤマハの意図とは違い身近さを感じさせない敬遠される要素となる皮肉な結果となっていた。
こうしてデザインの方向を修正したことで関心を持たれるようになったRENAISSAだったが、ヤマハにはこの250ccクラスにSRX250という、人気のカジュアルスポーツがメジャーな存在で、SRVエンジンをブラックアウトからアルミ地肌へとマイナーチェンジするなどしたが、その大きな流れに対抗できるまでのパワーは持続できなかった。
オトナ向けのトラディショナルな感性のバイクは、ニーズのポテンシャルを散々語られるものの、成功した例は一握りというのは今も昔も変わっていない。