キャベツの千切りは、切る方向によって食感に違いが出ます(出所:『完全版 その調理、9割の栄養捨ててます! 調理科学×栄養がとれる食べ方のコツ』)

「皮をむく」「茹でる」など、野菜は調理によってロスが多い食材です。しかし最新の研究では次々と捨てられてきた部位に貴重な栄養が存在していることが解明されてきました。そこで東京慈恵会医科大学附属病院 栄養部監修による『完全版 その調理、9割の栄養捨ててます! 調理科学×栄養がとれる食べ方のコツ』より一部を抜粋・再編集し、身近な野菜の代表格・キャベツについて、栄養を余すことなく取り入れる調理のコツを深掘りしてみます。

外葉や芯は捨てたらもったいない

硬いからと捨ててしまう人も多いキャベツの外葉ですが、外葉の1〜3枚めは内葉の1.5倍のビタミンCが存在するので、捨てるのは絶対NGです。

さらにビタミンAは外葉に8割もあり、血圧降下作用のあるアルギニンも、内葉の3倍も多く含む「最上級のお宝部位」です。

ちなみに外葉についている白い粉状のものは農薬ではなく、キャベツ自身が紫外線などから身を守るために作りだすロウ状の物質「ブルーム」。


(出所:『完全版 その調理、9割の栄養捨ててます! 調理科学×栄養がとれる食べ方のコツ』)

キャベツの脂質から作られた成分が、表面に浮き出たものです。口にしても全く問題ない成分で、むしろキャベツが新鮮な証しでもあります。

また葉脈は、ほかの部位よりも糖度が高く、食物繊維も葉の2倍。キャベツの中では葉脈にだけプロリンという、コラーゲン修復機能成分も存在します。美肌には欠かせない部位です。

一方、にはカルシウム・カリウム・マグネシウム・リンといったミネラルが内葉の約2倍も含まれています。

ビタミンCも外葉の次に多く、筋肉の源となるアラニンは葉の3.4倍という栄養の宝庫。ただし加熱しすぎは栄養ロスになるので注意しましょう。


芯の旨みは葉の8倍!(出所:『完全版 その調理、9割の栄養捨ててます! 調理科学×栄養がとれる食べ方のコツ』)

「栄養価が高いとはいえ、芯はおいしくない」と思うなかれ。キャベツの芯は旨みのもと、アミノ酸が葉の8倍以上も含まれるおいしい部位なのです。

茶色くなった部分はくさみが出やすいので切り落としますが、それ以外は細かく切って炒め物やカレーに入れるほか、そのまま漬物やマリネにするのもおすすめ。芯こそ、旨みの宝庫です!

ただし、キャベツの芯には成長点があり、収穫した後も蓄えた栄養を葉に送ろうとします。半分にカットしたキャベツが、時間が経つと芯を中心に盛り上がってくるのはそのせい。

芯の豊富な栄養が抜けてしまうだけでなく、葉先から栄養がどんどん消失し、傷みも早くなってしまいます。

買ってきたらまずは芯をくりぬいて外しましょう。キャベツのビタミンは保存中の減少が少ないので、5日ほどを目安に食べ切れば栄養ロスもほぼなし!

キャベツの「体にいい栄養」は?

キャベツに含まれるビタミンU(キャベジン)は、ビタミンという名前ですが実はアミノ酸。胃の粘膜を回復させ、過剰な胃酸の分泌を抑える働きを持つ成分で、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の予防に作用します。


キャベツの体にいいこと(出所:『完全版 その調理、9割の栄養捨ててます! 調理科学×栄養がとれる食べ方のコツ』)

もちろん、ビタミンCや体内の消化の過程でがん予防、抗酸化効果もあります。

キャベツサラダはできるだけ細かくカット

キャベツは、ブロッコリーや大根などと同じ「アブラナ科」。アブラナ科は消化を助け、潰瘍を防ぐ効果を持ちますが、キャベツは特にこの効果が高い野菜で、まさに「食べる胃腸薬」。

この働きは細かくすればするほど活性化し、切らない場合と比較すると18倍にもなります。胃が疲れていると感じた時に食べるなら、できるだけ細かく切るか、ジューサーなどですりつぶして、スムージーにするなど用途ごとに切り方を変えてみましょう。

たんぱく質を代謝する力は大根の3倍以上!

消化を助けてくれる野菜として有名なのは大根ですが、キャベツの消化・代謝活性は大根の3倍以上! 健康野菜として知られるブロッコリーと比較するとほぼ5倍。ビタミンUは胃を守る効果と併せて、弱った胃腸を助け、粘膜を修復してくれる力を持っているのです。


キャベツのパワー(出所:『完全版 その調理、9割の栄養捨ててます! 調理科学×栄養がとれる食べ方のコツ』)

キャベツは刻めば刻むほど消化率17.9倍に!

キャベツの消化パワーは生の状態で活性化しますが、70℃で失活してしまうため、加熱はしないほうが◎。また、刻むほど消化率はUP! 食べるときに脂質があると消化酵素が高くなります。おすすめは、マヨネーズ。卵を使ったものなら3倍、大豆でも2倍以上アップ。


調理による消化酵素の活性化(瓜倉真衣「抗胃腸障害機能の強化を目的としたキャベツの効果的な調理および食べ合わせに関する研究」(2013), 東洋食品研究所 研究報告書(29)P.145-153 福山大学生命工学部 生命栄養科学科)(出所:『完全版 その調理、9割の栄養捨ててます! 調理科学×栄養がとれる食べ方のコツ』)

がん予防成分も細かく切って活性!

キャベツなどアブラナ科の野菜には「スルフォラファン」というファイトケミカルが含まれています。ブロッコリーなどに多く含まれる成分で、有害物質を解毒し、抗酸化力を高める役割があり、がん予防効果が期待できる体の強い味方。


キャベツは刻めば消化率UP(出所:『完全版 その調理、9割の栄養捨ててます! 調理科学×栄養がとれる食べ方のコツ』)

スルフォラファンはグルコシノレートという成分が切断されることで酵素と混じり合い活性します。消化酵素だけでなく、抗酸化成分をしっかり摂るためにも、やはり細かく切るのがおすすめです。

ふんわりなら横・千切りシャキシャキなら縦に切る

ついなんとなくやってしまう千切りですが、切る方向によって食感が大きく変わります。

やわらかくふんわりと仕上げたいなら、葉脈に対して直角に切って繊維を断ちます。逆にシャキッとした食感にするなら葉脈と平行に。


ふんわり仕上げたいときの千切りの仕方(出所:『完全版 その調理、9割の栄養捨ててます! 調理科学×栄養がとれる食べ方のコツ』)

(1)ふんわりと仕上げるなら葉脈と垂直に切って、繊維を断ち切るような千切りに。やわらかい口当たりになり、甘みも感じやすくおいしくなります。


シャキシャキの千切りにしたいときの切り方(出所:『完全版 その調理、9割の栄養捨ててます! 調理科学×栄養がとれる食べ方のコツ』)

(2)シャキシャキした食感を楽しむなら葉脈と平行に切りましょう。ただしあまり太く切ると硬さを感じてしまうので、できるだけ細めに切るのがおすすめです。

抗酸化機能を上げるなら油炒めが最適

ビタミンCやミネラルなど水溶性の栄養を多く含むキャベツは、茹でたりレンジで加熱すると栄養素が大幅にダウン。しかしポリフェノール由来の抗酸化機能は炒めると増加するという実験結果が多数報告されています。


調理法によるビタミンC流出の違い(出所:『完全版 その調理、9割の栄養捨ててます! 調理科学×栄養がとれる食べ方のコツ』)

蒸し:蒸し調理はロスが少ない

蒸し調理ならビタミンCのロスは8.1%。蒸すことで、栄養を最大限に保つことができます。ただし、これは50℃で蒸した場合。高温になるほどロス率は高く、100℃で蒸せば、茹で調理並みにビタミンCは減少してしまいます。

茹でる:ビタミン類は半分以下に

キャベツの水溶性ビタミンは茹で調理で4〜6割が流れ出します。茹でる場合は切らずにさっと加熱するか、スープごと食べるのがおすすめ。また、塩を2%ほど入れると、ビタミンCが約10%多く残存します。

炒める:総合的ベスト調理法

キャベツは炒めるとビタミンCは減りますが、ポリフェノールは、約4割アップ。またβ-カロテンも油によって吸収率が6割ほどアップするので、加熱調理なら「油炒め」が最適!

レンチン:レンチンもロス多め!

栄養ロスが少ないレンジ調理。ただ、がん予防成分はレンジ調理の場合ロスが激しく、ビタミンCは炒め調理の1/2に。また水分の多いキャベツは、レンジで水分流出が増えると、茹で調理と同様にビタミンCが減ります。


(東京慈恵会医科大学附属病院 栄養部)