南越谷駅の様子

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みどりの窓口、期間限定で復活

 7月10日から期間限定ではあるものの、JR東日本の一部の駅でみどりの窓口が復活した。再開するのは50の駅で、仙台駅や長野駅、船橋駅などのように窓口の数を減らした駅から、南越谷駅、北千住駅、川口駅などのように、駅員と通話しながら操作ができる「話せる指定席券売機」が設置されて窓口そのものがなくなった駅まで様々だ。

【写真】「みどりの窓口」が臨時復活したJR武蔵野線南越谷駅の様子

 今回の決定は、鉄道ファンは言うに及ばず、JR東日本の社員の間でも驚きをもって迎えられたようである。一度決定したことを滅多に覆さないJR東日本が、利用者やネットの声を受けて方針転換を図ったのか、という具合だ。それほど、みどりの窓口廃止は大きな問題となっていたのである。

南越谷駅の様子

 2021年、JR東日本は切符をネットで買い求めるチケットレス化の推進を決定。その一環として、2025年までに、440カ所にあったみどりの窓口を140カ所まで削減する目標を立てていた。その計画は順調に進み、半数以下の209カ所まで減少していた。半分以下に減っており、かなり大胆にバッサリ切ったことになる。

 ところが、2023年に入ると、コロナ騒動が終息。国内の旅行需要が回復し、インバウンドの増加に伴い、みどりの窓口は慢性的に混雑するようになった。そして今年に入り、状況が著しく悪化する。4月は定期券の購入シーズンとなり、さらにGWには利用者が押しかけて窓口が大混乱となり、時には怒号が飛び交うなど、未曽有の混雑が続いていた。

 にもかかわらず、JR東日本はみどりの窓口を容赦なく廃止し続けていた。そのため、利用者はもちろんだが、おそらく駅員の間からも不満が噴出したのであろう。混乱を受けて、JR東日本は5月8日、みどりの窓口を削減する計画を一時凍結すると発表した。

南越谷駅は期間限定で窓口が復活

 筆者の最寄り駅である武蔵野線の南越谷駅は、みどりの窓口が廃止され、使いにくいとして悪評が高い「話せる指定席券売機」が置かれていたが、このたび、めでたくみどりの窓口が復活した。7月10日〜18日という期間限定で、営業時間は10〜12時、13〜17時である。閉鎖前より限られた時間帯での営業ではあるものの、実際に駅を訪れてみると、パーティションで封鎖されていたスペースにみどりの窓口が復活していた。

 7月10日〜18日に復活したのは、お盆の帰省シーズンの切符を販売するためと思われる。新幹線や特急の指定席は乗車日の1カ月前の10時から販売開始されるのだ。埼玉県は地方出身者が多く住む県の一つなので、この時期は切符を買い求める客でどの駅も慢性的に混雑する。それを想定しての対応であろう。

 首都圏近郊のJR東日本の路線の中でも、武蔵野線は極端なまでにみどりの窓口が閉鎖された路線である。数年前は大半の駅にみどりの窓口があったのだが、南浦和駅や北朝霞駅など、他社線との乗換駅まで閉鎖してしまったのは明らかにやりすぎであった。結果、沿線で数少ない、みどりの窓口が現存する武蔵浦和駅が混雑するようになってしまった。しかも武蔵浦和駅はカウンターが1カ所しかないため、平日でも行列ができることが珍しくなかった。

 南越谷駅の指定席券売機の前には、駅員が作成したであろうポスターが掲げられていた。“お手伝いが必要なお客さま”は窓口へ、“ご自身で操作できるお客さま”は券売機へと誘導しようとしている。興味深いのは“ご自身で操作できる”の箇所にわざわざアンダーラインが引かれていることだ。極力、券売機に誘導し、みどりの窓口を使わせないようにしている印象を受ける。

 しかし、指定席券売機はとにかく使いにくいのである。以前に大宮駅を取材した際にも感じたことだが、人々はみどりの窓口が開いているならそちらで買いたくなるものだ。大宮駅ではみどりの窓口が40分待ちという状況だったが、十数台ある券売機はガラガラであった。誤操作で間違った切符を買うリスクもあるため、自信がない人は券売機で買うのが不安なのである。

話せる指定席券売機の利用者に駅員が対応

 筆者が南越谷駅を訪れたのは、お昼時の12時30分ごろである。この時間帯はみどりの窓口がいったん昼休みに入っているため、指定席券売機を操作できない人は、話せる指定席券売機に並ぶことになる。ちょうど1人の女性が話せる指定席券売機で切符を購入しようとしていた。その隣で、駅員が付きっきりで対応している。話せる指定席券売機が、機械に不慣れな人にとっていかに使いにくいか、よくわかる。

 こうした光景は、北千住駅や川越駅など、みどりの窓口が廃止された駅でたびたび見られる。特に高齢者は機械に不慣れであり、何かと駅員に頼りがちだ。すると、結局駅員が最初から最後まで対応することになる。駅員の手間は変わらないし、むしろ増えているように思う。それならば、最初からみどりの窓口を開けたほうが遥かにマシだと思う。

 13時からみどりの窓口のカウンターが開いた。比較的年齢が高めの人が、みどりの窓口で切符を買い求めていた。券売機で切符を買おうとしたものの、うまく操作ができず、みどりの窓口に向かった人もいた。この日は思ったほど利用者が多くなく、時間帯によっては並ばずに利用できたようだ。だが、帰省シーズンの1カ月前に当たる、13日頃になると混雑してくると思われる。

 駅員が切符を販売している姿は、かつては当たり前にあった光景だったが、久しぶりに見て懐かしさを覚えてしまった。やはり、販売のプロがいる安心感は何物にも代えがたいと思った。

券売機の改良が進むまで窓口を復活させよ

 JR東日本は窓口削減計画を一時凍結し、期間限定で復活させはしたが、各地のみどりの窓口が混雑していることには変わりない。都心の山手線京浜東北線、中央線もみどりの窓口がかなり削減されたが、本当なら全駅にあったほうがいいくらいである。筆者は、「えきねっと」などのアプリや指定席券売機の機能がみどりの窓口並みになるまでは、みどりの窓口を維持すべきだと思うし、廃止した駅は可能な限り復活させるべきだと考える。

 今回は7月10日〜18日に限っての復活だが、8月にも復活させてほしい。というのも、8月は学生が夏休みに突入し、高齢者は青春18きっぷなどで旅行をするため、みどりの窓口がとにかく混雑するためである。そして、お盆の帰省シーズンも、毎年のように切符を買い求める人の大行列ができる。できれば8月は1カ月間、毎日開けてもいいくらいだと思うのだが、どうだろうか。

 GWは各地の駅で尋常ではない行列ができ、みどりの窓口がパンク状態に陥った。さらに近年、JR東日本はお盆や年末年始の多客期に、新幹線が止まるトラブルをたびたび引き起こしている。すると切符の払い戻しが発生し、ただでさえ混んでいるみどりの窓口がますます混雑する事態になっていた。

 切符の払い戻しや、区間が異なる切符の乗車変更などが指定席券売機でできるようになるだけで、混雑はかなり緩和するはずだ。こうした要望はかなり前から出されているはずだと思うが、未だに改良されていない。みどりの窓口の廃止を進める前に、ユーザー目線で使いやすいように券売機を改良するべきであろう。窓口の廃止はそれからでも遅くないはずだ。

ライター・宮原多可志

デイリー新潮編集部