選ばれる人ほど「フルネームで名乗る」納得のワケ
「選ばれる人生」を歩むための「自分ブランド」のつくり方をお伝えします(写真:EKAKI/PIXTA)
「自分より仕事がデキないアイツが、先に出世するのは納得できない!」
「大して実力は変わらないのに、なぜあの人にお客様が殺到するんだ!?」
あなたが今、こんな思いを抱えているのだとしたら、それは「選ばれる技術」を知らないから。どんなに高い仕事スキルを身につけていても、「人から選ばれるかどうか」で仕事人生に大きな差が生じてしまうのが、現実社会です。
本稿では、これまで経営者やタレント、政治家、弁護士など2500人以上の人生を変えてきた守山菜穂子氏の初の著書『選ばれる人になる「パーソナル・ブランディング」の教科書』から一部を抜粋し、「選ばれる人生」を歩むための「自分ブランド」のつくり方を3回にわたってお伝えします。今回は3回目です。
自分をフルネームで名乗っていますか?
自己紹介で「フルネーム」を名乗ると、いきなり重要人物になれる
テレビやイベントなどで有名人を見かけたとき、その自己紹介にちょっと耳を澄ましてみてください。タレント、スポーツ選手、文化人、政治家など、メディアに出ている人は、自己紹介で「フルネーム」を名乗っています。
私が初めてこれに気付いたのは、広告会社で働いているときでした。
CM撮影にお招きした有名な俳優さんが、ヘアメイクを終えて衣装に着替えてスタジオ入りする際、現場スタッフに向けて自分の姓と名をフルネームで名乗り、あいさつしていたのです。
私自身が、フルネームで名乗ることを意識したのは、独立してセミナー講師の仕事を始めたときです。ふと、過去に仕事をご一緒した、タレントさんや文化人、すなわち重要人物たちがみんなフルネームで名乗っていたことを思い出しました。
これから自分が、受講生より一段高い壇上に登り、有料の講義をする。信頼の置ける人物として受講生に認めてもらうために、フルネームで名乗ることが必須だと感じたのです。
そこで「今日の講師を務めます、守山菜穂子です」と自己紹介しました。
氏名には「姓(ファミリーネーム)」と「名(ファーストネーム)」があり、その組み合わせで自分自身が表現されています。
重要人物になりたければ、唯一無二の自分であるために、この組み合わせを両方伝えなくてはいけません。姓だけ、名だけでは、自分を半分しか伝えられていないのと同じです。
これから、人と会うたびに、自分の名前をフルネームで、丁寧に名乗りましょう。大切な自分の名前が尻すぼまりにならないように、最後の1音まではっきり発音します。続けることで確実に、周囲からの扱われ方が変わってきます。
思いは「ジェスチャー」を交えて伝える
身振り、手振り、しぐさで自分の思いを伝えることを「ジェスチャー」といいます。ジェスチャーはボディランゲージ(身体言語)の一種で、それ自体が1つの言葉でもあります。あなたも、言葉が通じない国に行ったときや、小さい子どもに対し、身振り手振りで意思を伝えたことがあるのではないでしょうか。
言葉での会話に、ジェスチャーを追加すると、思いを強く伝えることができます。これは歌に伴う、ダンスの振り付けのようなものです。
あふれる思いをプレゼンしたり、スピーチをしたりするとき、また強い拒否を示すときなどに、手が自然に動き出し、言葉を強化した経験は、誰にでもあるでしょう。
ビジネスシーンにおいて、頻繁にジェスチャーを加える人と、まったくしない人がいます。欧米人は比較的ジェスチャーが大きく、日本では郊外や地方で仕事をしている人のほうがジェスチャーが大きい傾向があります。
例えば中小企業の社長さんと、それに対する士業の人、農場、工場、工事現場などで働く人たちは、ジェスチャーをよく使います。
欧米もそうですが、多様性がある人々の関係性、かつにぎやかな場所で、自分の意思を間違いなく、しっかり伝えるために身につけた方法なのでしょう。
一方、都市部のビジネスパーソン、特に狭くて堅く静かなオフィスに詰め込まれて働いている人ほど、動きが小さくなりがちです。ほとんど自分をキュッと絞っているのではないかと思えるほど脇が締まっていて、文字通り肩身も狭そうです。
あなたも、会話にジェスチャーを積極的に取り入れましょう。
強調したいときは、両手をやわらかく広げて前に出し、ろくろを回すような動き(通称ろくろ回し)を取り入れる。何かを止めたいときは、腕ごと手を引いてみる。
ジェスチャーは、慣れや習慣です。最初は変なポーズになってしまうかもしれませんが、続けるうちに確実に存在感が高まり、大きな人間に見えること間違いなしです。
ほめられたとき、照れてはダメな理由
「最近、いい仕事をしてますね!」と人からほめられたら、あなたはどう答えますか?
人からほめられるのが恥ずかしい、ほめられるのが苦手、という人も結構いますよね。とっさに声をかけられて、動転して、こんな反応をしていないでしょうか。
例えば、「いやいや、とんでもない」「全然、そんなことないですー」という反応。
本人は謙遜したつもりですが、これは「拒否」の構えです。相手からせっかく贈ってもらった「愛」の言葉を、あなたが受け取っていません。ドッジボールに例えると、投げられたボールを、素早くよけた状態。ボールは、力なく、床へ。
言葉を贈った側は「あれ? 『愛』を贈ったのに、受け取ってもらえなかった。スルーされた」と傷つきます。せっかくの心遣いを、残念ですよね。みんな無自覚にこうやって、相手を傷つけたり、傷つけられたりしているのです。
「最近、いい仕事をしてますね!」に対し、こんな返し方をする人もいます。「まあ、ぼちぼちですかね」「うーん、不景気なんですよねえ」。
これは最もひどい返しで、相手からの愛の言葉を茶化してしまっています。
言葉を贈った側からすると、「愛を贈ったのに、受け取ってもらえなかった」。ドッジボールに例えると、投げたボールを取らずに、たたき落とされたみたいな感じ。シラケて、ゲーム終了です。二度とほめられることはないでしょう。
(イラスト:『選ばれる人になる「パーソナル・ブランディング」の教科書』より)
謙遜は、奥ゆかしい日本の美徳ではありますが、選ばれる人になるパーソナル・ブランディングの観点からは好ましくありません。
謙遜しすぎは、自分を安く扱うことになります。どうしても謙遜したい場合は、「恐れ入ります」「もったいないお言葉で」と答えてはいかがでしょう。相手を立てていることにもなるので、上品です。
では、「最近、いい仕事をしてますね!」という言葉に、選ばれ続ける人はどう答えるべきでしょう? 私が考える模範回答はこれです。
「ほんとですか!? うれしいです、ありがとうございます!」
これが、愛のボールを、ガッチリと受け取っている状態。
「◯◯さんにそう言ってもらえるなんて、また頑張れます」
こんなふうに付け加えたら、お互いにうれしいもの。
「これからもご指導をよろしくお願いします」「お客様がいつも利用してくださっているおかげです」、ここまで伝えたら、リピーターが増えそうです。
「ほめ言葉」に気付かない人の盲点
愛のボール、すなわちほめ言葉は、日常生活で急にこちらに飛んでくることがあります。投げる人も上手に投げてくれるとは限らなくて、半端な体勢からほめ言葉を急に放ってきたりします。
だから、どんなときも、自分からきちんと受け取りに行くことが必要です。それが、相手への優しさであり、謙虚ということなのです。
「なぜ自分は、人から選ばれないのか」と思っているあなたは、実は指名の前段階で、軽い前触れとして飛んでくる「ほめ言葉」に気付かず、失礼な態度を取っている可能性があります。
ほめ言葉を上手に受け取れない人は、指名されません。
人からの愛の言葉を大切にし続ける人は、いずれ「自分が大切にされていること」「周囲に必要とされていること」を実感できるようになります。
ここまできたら、自分が確実に選ばれる人に近づいていること、自分の存在感が上がっていることに気付くでしょう。
(守山 菜穂子 : ブランドコンサルタント/株式会社ミント・ブランディング代表取締役)