上段左から ひょっこりはん、矢崎広、永井大、姜暢雄/下段左から 木村花代、平方元基、吉沢悠、大沢あかね

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2022年7月の初演からロングラン上演を続ける舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』東京公演が、2024年7月8日(月)からいよいよ3年目に突入する。総観客数は95万人超、この8月には100万人を突破見込みとますます盛り上がりを見せるなか、3年目の開始を前に、7月からデビューする新キャスト8名が登壇し、意気込みを語った。

本作は、小説「ハリー・ポッター」シリーズの作者であるJ.K.ローリングが、ジョン・ティファニー、ジャック・ソーンと共に舞台のために書き下ろした「ハリー・ポッター」シリーズ8作目の物語。小説の最終巻から19年後、父親になった37歳のハリー・ポッターとその息子・アルバスの関係を軸に描かれる新たな冒険物語だ。世界中で多くの演劇賞を獲得し、国内でも第30 回読売演劇大賞の選考委員特別賞、第48 回菊田一夫演劇大賞を受賞するなど高い評価を得ている。

この日の会見に登壇したのは、平方元基(ハリー・ポッター役)、吉沢 悠(ハリー・ポッター役)、木村花代(ハーマイオニー・グレンジャー役)、ひょっこりはん(ロン・ウィーズリー役)、矢崎 広(ロン・ウィーズリー役)、永井 大(ドラコ・マルフォイ役)、姜 暢雄(ドラコ・マルフォイ役)、大沢あかね(ジニー・ポッター役)の8名。それぞれ、本番の舞台衣装での登壇となった。(※ハーマイオニー・グレンジャー役の豊田エリーは体調不良のため欠席)

衣装は一人ひとりに合わせ時間をかけて製作されているといい、本番衣装の初お披露目の心境を聞かれた平方は、「この衣装と共にロングランを駆け抜けていくんだなと、改めて身が引き締まる思いです」と語った。

平方元基(ハリー・ポッター役)七夕にちなんで願い事を聞かれると、「他界した祖母に観てもらいたかった。きっとどこかで観てくれているんだろうなと思って頑張りたい」と答えた。

吉沢 悠(ハリー・ポッター役)七夕の願いは、「ハリー・ポッターは魔法の世界。何かに願って、何かが手助けしてくれるなら、この劇場を魔法で包んでくれたらなと思う」と回答。

衣装を纏った新キャストが顔を揃え、3年目のスタートを改めて実感した様子の吉沢は、「こういう形でみんなが揃うのは、最初で最後になるんだなあとちょっと寂しい気持ちもある」と前置きしつつ、「力強さが溢れている感じがみんなからもしているので、期待でいっぱいです」と、力を込めた。3年目は、ドイツ・ハンブルク公演での演出家が入っているそうで、「1年目、2年目にすでに劇場で見られた方も、今までとは違った雰囲気に感じられるところも生まれるのではないかと思います。新キャストになり、どのような世界になっているのか、劇場でぜひ体感してください」とPRした。

7月からのデビューに向けては、およそ2か月にわたる稽古を行ってきたという。会見での和やかな様子からも伝わってきたが、キャストは皆、口をそろえて、カンパニーのチームワークの良さに触れ、稽古期間を経て、互いに声を掛け合い、助け合える関係を築くことができたと振り返る。キャスト陣は稽古の早い段階から下の名前で呼び合っていたそうで、それが互いの距離を近づけ、頑張らなくても自然と「ハリー・ポッターファミリー」になれた秘訣だったのでは、と吉沢は語った。ちなみに、ひょっこりはんは本名の「さとし」で呼ばれていたそうで、「一人の人間として見てくれている感じがして、すごくうれしかった」と笑顔を見せた。

「2か月は長いようで短いようで、これから始まるという実感もないくらい」と言うのはハーマイオニー・グレンジャー役の木村花代。「作品力という素晴らしいものが根底にあるので、そこに役者・スタッフ一同、誠心誠意、全身全霊で挑んでいけたらと思っています」と意気込んだ。

木村花代(ハーマイオニー・グレンジャー役)七夕の願いは「『ハリー・ポッターと呪いの子』が、5年、10年といわず、アルバスやスコーピウスがハリー役をやるような、世代交代が起きるくらいに、世界中の人に愛され続ける作品になりますように」

また、ドラコ・マルフォイ役の永井 大は、「1年目、2年目の方たちの想い、創り上げてきたものを引き継ぎ、さらにブラッシュアップしながら、皆さんに表現できたらいいなと思っています」との決意と同時に、まもなく総観客数が100万人を突破することに触れ、「そんなたくさんの方々に観に来ていただけるような舞台に立てることへの喜びも感じています」と沸き立つ思いを吐露。「東京でしか上演されていない舞台なので、夏休みを機に東京にいらしていただき、ハリー・ポッターの世界を楽しんでいただけたらと思います」と誘った。

永井 大(ドラコ・マルフォイ役)最近は稽古が忙しく家のことを妻にまかせがちだったという永井の七夕の願いは、「子供たちのきょうだい喧嘩が減りますように」

姜 暢雄(ドラコ・マルフォイ役)子供の寝かしつけによく昔話をするという姜は、最近自分の息が気になるそうで「僕の口が綺麗になりますように」と願う。

同じくドラコ・マルフォイ役の姜 暢雄は、本番を控えた心境を「なんだか結婚式のような」と独特の表現。「自分が結婚するってこと?」と永井からのツッコミをうけると、「自分もそうだし、みんなが。ダブルキャスト、トリプルキャストいろいろで、明日本番を迎える方々を送り出すようなお父さんのような気持ち」と詳しく説明すると、キャスト陣からは納得の笑顔が零れた。「2か月間の稽古が本当に仲が良くて、ここから1年、さらに濃密な時間で、家族のようになっていくのではと思っています」(姜)とカンパニーへの思いを馳せた。

本作の見どころについて、「『人間は誰もが完全じゃない』というのが、この作品のテーマでもあると感じています」と言うのは、ジニー・ポッター役の大沢あかね。「不完全な部分を、友情や親子の関係が補っていく。そういう偉大な作品だなと思っています」(大沢)。また、平方も同じく、「魔法はもちろん楽しい要素のひとつですが、その裏にある人間模様、苦しみ、怒り、悲しみ、喜び……この物語にちりばめられたいろいろな感情に注目していただけるど、より物語を分厚く、多くの方に楽しんでいただけるのではないかなと思います」とその注目ポイントを語った。

大沢あかね(ジニー・ポッター役)「来月が誕生日なので、皆さんから素敵なプレゼントを」と、七夕の願いにみんなでの食事をオーダー。

「ちょっと違う観点から」と前置きして話し始めたのは、ロン・ウィーズリー役の矢崎 広。矢崎は見どころのひとつとして、劇場周辺の環境に言及した。舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』が上演されている赤坂ACTシアター周辺は、グッズショップやカフェ、街並みも含め、ハリー・ポッターの世界一色になっている。「劇場に来るのが楽しみになるくらい、赤坂の駅だったりがハリー・ポッターの世界になっていて。こんなふうに世界観を作ってくれている劇場は、日本では本当に珍しいと思います。僕らもそういう幸せな環境で毎日芝居できることを喜びながら頑張っていきたいなと思っています」と述べた。

矢崎 広(ロン・ウィーズリー役)は、7月10日が誕生日。七夕の短冊には「欲しいものを書く」のが幼少からの習慣だったそうで、今年は赤坂ACTシアター近くで販売中のドーナツをご所望。

ひょっこりはん(ロン・ウィーズリー役)子供に早朝から起こされることが多いというひょっこりはんの七夕の願いは「たくさん寝られますように」

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は、これまでにロンドン、ニューヨーク、サンフランシスコ、オーストラリア・メルボルン、ドイツ・ハンブルク、カナダ・トロントの6都市で開幕。東京公演はアジアとしては初、世界では7番目の上演だ。

これまで多くの名優たちが演じてきた「ハリー・ポッター」を演じることに対して問われると、「すごくプレッシャーはありましたが」と素直に語った平方。「それぞれの持つ魅力が存分に押し出されていたので、僕も臆することなく、自分が今まで背負ってきた人生、今ここに立たせてもらっている人生をハリー・ポッターという役、表情や感情、セリフに乗せて、見せていけたらいいなと思っています」(平方)。

稽古場での様子

一方の吉沢も、「ハリーと向き合えば向き合うほど、自分がどういうハリーを演じているのかがわからなくなった」と稽古期間を振り返る。「(平方と)二人のハリーが違うと周りの方からは言われるんですが、自分ではその違いがわからないんです。ただ、例えばドラコ役二人とか、他の方々が演じるのを見ていると、それぞれの良さがあるのがわかる。だから、演出されたことを信じて、ハリー・ポッターとして立っていこうと思います」と力強く語った。

稽古場での様子

ちなみに、ハリー二人のお気に入りの呪文は「ルーモス」だそう。と、いいつつも、劇中でこの呪文を使うのは、ハリーではなくジニーだ。「『ハリー・ポッターのような人でも、孤独になると闇に引っ張られる』という作品のテーマの中で、光を照らす「ルーモス」の呪文を、その妻であるジニーが唱えるということに温かい気持ちになるんです」と、吉沢はその好きな理由を明かした。

最後に、平方・吉沢からの挨拶で会見は終了となった。

「ロングラン公演は、観に来てくださるお客様あってこそだと思っています。3年目デビューということで、明日から素晴らしい3年目になるように、そして4年目、5年目とずっと続きますようにという願いを込めて。ぜひぜひ皆様見に来てください」(平方)

「この舞台はヴォルデモーを倒してから19年後の内容です。まだ僕が少年期のハリー・ポッターをやると思っている人が何人かいたので、言っておきたいなと(笑)。アジア、そして日本でも、見られるのはこの赤坂ACTシアターだけなので、ぜひこの夏休みをスタートに、たくさんの方々に来ていただき、熱い魔法の世界を劇場で体感していただきたいなと思っています。応援よろしくお願いします」(吉沢)

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は赤坂ACTシアターにてロングラン上演中。2024年11月~2025年2月までの公演チケットが7月20日(土)より販売開始予定だ。

取材・文・撮影=yuka morioka