新しくなったホンダの改良版「ヴェゼル」(写真:三木宏章)

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2024年4月25日にマイナーチェンジを発表し、翌26日から販売を開始したホンダのコンパクトSUV「ヴェゼル」(写真:三木宏章)

本田技研工業(以下、ホンダ)の売れ筋コンパクトSUVで、2024年4月26日に発売した新型「ヴェゼル」に試乗した。

2021年4月に登場した2代目をベースに、内外装の変更や使い勝手などの向上に加え、より上質な走りも実現したという進化版ヴェゼル。とくに先代モデルでも人気が高かった独自の2モーター式ハイブリッドシステム「e:HEV(イーエイチイーブイ)」搭載車は、より静粛性を向上させるなどのアップデートが施され、低燃費で滑らかな走りに磨きがかかっているという。

今回は、そんな新型ヴェゼルの中で、新しくラインナップに加わったハイブリッド車の「e:HEV Xハント(HuNT)パッケージ」のFF(前輪駆動)と、上級グレード「e:HEV Zプレイ(PLaY)パッケージ」の4WD(4輪駆動)に試乗。また、4WDのみの設定となったガソリン車の「G」グレードという3タイプを乗り比べてみた。

【写真】マイナーチェンジで静粛性や走行性能を向上。グレード展開も刷新し、新しくなったホンダの改良版「ヴェゼル」の内外装をチェックする(77枚)

進化版ヴェゼル、マイナーチェンジでの変更点

マイナーチェンジを受けた新型の主な変更点は、まず外観だ。先代の特徴であるフィン形状のボディ同色フロントグリルを継承しつつ、デザインを変更。また、フロントアッパーグリルとボンネットの間に造形を1段追加し、左右ヘッドライトをつなげるようなイメージを演出。これらにより、よりワイド感ある顔つきとなっている。

また、リアコンビネーションライトは、すべてLED化したほか、水平基調のグラフィックに変更。これらにより、360度どこから見ても水平基調が際立つデザインとすることで、シンプルかつクリーンでありながら、精悍さも増したエクステリアとなっている。

内装では、センタートレイの形状を変更し、上下2段タイプを採用。助手席からもアクセスしやすい工夫を施したほか、センターコンソールまわりをよりすっきりとみせる効果も生み出している。加えて、後席のヘッドレストを大型化し、ストラップ付きリアセンターアームレストも全車に標準装備。2列目の乗員が、より快適なドライブを味わえる改良も施されている。


同じくホンダのコンパクトSUV「WR-V」(写真:三木宏章)

グレード構成にも手が加えられた


ハイブリッド車に取り付けられているe:HEVのエンブレム(写真:三木宏章)

ラインナップには、1.5ハイブリッド車に、ベースグレードのe:HEV Xと、上級グレードのe:HEV Zを設定し、いずれにもFFと4WDを用意する。また、パノラマルーフなど充実した装備を持つ従来のe:HEVプレイは、今回のマイナーチェンジでe:HEV Zグレード内に組み込まれ、e:HEV Zプレイパッケージとして新設定。先代がFFのみだったのに対し、4WDも選べるようになっている。加えて、e:HEV Xには、ルーフレールなどの装備により、アウトドアテイストを加味したe:HEV Xハントパッケージも追加する。

なお、1.5Lガソリン車のGグレードは、先代がFFと4WDを用意していたのに対し、新型では4WDのみを設定。これは、同じく1.5Lガソリン車でFFのみを設定する「WR-V」が新たに登場したことで(2024年3月発売)、同メーカーのモデル同士による「ユーザーの食い合い」を避けるためのようだ。

なお、新型のボディは、全長4340mm×全幅1790mm×全高1580〜1.590mm、ホイールベース2610mm。先代モデルと比べ、全長が10mm伸びているが、ほかのサイズは同じだ。

ハイブリッドFF車を街乗りでチェック


試乗したヴェゼルe:HEV XハントパッケージのFFモデル(写真:三木宏章)

今回の試乗では、主に静岡県御殿場市の市街地と、箱根のワインディング、東名高速道路などを使ったコースを使用。それぞれのシーンで、新型ヴェゼルの走りがどう変わったか試してみた。

まずは、新バリエーションであるe:HEV XハントパッケージのFFに乗ってみた。ヴェゼルに新採用されたボタニカルグリーン・パールのボディカラーを採用した仕様だ。ほかにも、カッパー・メタリック塗装が施されたフロントのバンパーロアーガーニッシュやフォグライトガーニッシュなどにより、アクティブな印象を演出。また、内装は、カーキ×ネイビー色のシートなどにより、こちらもアウトドア感が満点だ。


ヴェゼルe:HEV Xハントパッケージのリアビュー(写真:三木宏章)

なお、シート素材は、ファブリックをベースに、サイド部分にしっとりとした質感を持つプライムスムース(合成皮革)を使ったコンビシートを採用。また、ファブリックには、撥水・撥油性を備えるファブテクト加工も施し、アウトドア・ユースでも汚れやシミなどを気にせずに使える工夫も施している。

パワーボタンを押すと、ハイブリッド用バッテリーの充電状況が良好のため、エンジンはかからず、無音のままだ。ステアリング奧にある、7インチのマルチインフォメーション・ディスプレイに配置されたメーターが点灯し、走行可能であることを知らせる。シフトレバーをDレンジに入れ、アクセルペダルをゆっくりと踏み込むと、モータードライブらしいスムーズな発進を味わえる。


ヴェゼルe:HEV Xハントパッケージのインテリア(写真:三木宏章)

ちなみにヴェゼルのe:HEVは、走行用と発電用の2モーターと、1.5Lガソリンエンジンを組み合わせた独自のハイブリッドシステムを採用する。走行シーンに応じてモーター走行とエンジン走行をスムーズに切り替えることが特徴だ。

発進時や市街地などでの低速走行時は、主にモーターのみで走る「EVモード」を使用。また、速度がある程度上がったり、登り坂などで加速したりするようなシーンでは、エンジンが充電のために始動し、走行用モーターで駆動する「ハイブリッドモード」に切り替わる。さらに高速道路の巡航時など、エンジンが得意とするシーンでは、エンジンのみの動力で走る「エンジンモード」に切り替わる仕組みだ。


ハイブリッドシステムの作動状況を表すメーター(写真:三木宏章)

先代モデルとの違いは、市街地の道路でいきなり実感できた。平坦な道で、バッテリーの充電状況が良ければ、50km/h程度までEVモードのままで走ることができるようになったのだ。先代モデルでは、どんなにアクセルをゆるやかに踏んでも、40km/h以上になると、エンジンが始動してハイブリッドモードに切り替わっていた。もちろん、新型でも登り坂などでは、40km/h程度でもハイブリッドモードになるが、一般的な市街地におけるEVモードの走行領域は拡大されているといえる。

ホンダの開発者によれば、「ハイブリッドバッテリーの満充電領域を8%アップ」したことなどが主な要因のようだ。これにより、「市街地走行でエンジンの始動と停止の頻度を従来比で約30%低減」しているという。また、こうした改良は、「ユーザーによっては頻繁なエンジン始動を不快に感じる場合もある」ことに対応したという。

ハイブリッドモードでも差は歴然


試乗シーン(写真:三木宏章)

さらに気づいたのは、ハイブリッドモードになってエンジンが始動しても、エンジン音がかなり静かになったと感じられたこと。先代では、エンジン始動時の音が大きめで、ある意味で、モード切り替わりのタイミングがわかりやすかった。一方、新型では、市街地であれば、いつエンジンが始動や停止したのかがわからないほど静か。もちろん、例えば、登り坂など、エンジンの回転数が上がるシーンでは、始動したことがわかる程度にエンジン音は聞こえる。だが、先代のエンジン音は、ブーンとちょっと大きめのエンジン音が聞こえ、なにか「無理して頑張っているのでは?」と思えるシーンもあった。それに対し、新型のエンジン音には、ちょっと「余裕がある感じ」さえする。

こうした聞こえるエンジン音の変化について、ホンダの開発者は「ダッシュボードやルーフ、フロアの各遮音材と防音材を厚くし、配置も最適化した効果」だと説明する。市街地走行時の静粛性という意味で、新型は格段に向上していることを実感できた。

ダイレクト感が増したスポーツモード


e:HEV Xハントパッケージのエンジンルーム(写真:三木宏章)

次はワインディング。新型のハイブリッド車FFは、例えば、左右のコーナーが連続する道などでも、より軽快になり、安定感も増した印象だ。電動パワーステアリングのソフトウェアを変更したことや、サスペンションのダンパー減衰力をより緻密に見直すといったアップデートの効果が出ているようだ(ハイブリッド車FFのみの変更)。しかもステアリングは、全グレードに本革巻きタイプを採用しており、ホールド感も満点。タイトなコーナーの連続などで、ハンドルを右に左に切り返す際も、手がすべることなく、確実な操作を体感できた。

また、ドライブモードスイッチを切り替えて「スポーツモード」にした際の加速感が、より爽快になった。ヴェゼルのe:HEVには、ほかにも、すべてのシーンでリニアな走りとなる「ノーマルモード」、エコドライブをアシストする「ECON(イーコン)モード」を備える。中でもワインディングでダイレクトな走りを楽しめるのがスポーツモードだ。新型では、このモード設定時、アクセル操作に対する加速応答性を向上。アクセルを踏み込んだときのパワーの出方が、よりリニアになったのだ。そのため、自分の意志に対し、クルマが思うように加速し、よりストレスのない走りを味わえた。


e:HEV Xハントパッケージのインテリア(写真:三木宏章)

なお、こうしたシーンで、ヴェゼルe:HEVは、主にエンジンで発電し、モーターで走行するハイブリッドモードで走るが、市街地と比べるとエンジンの回転数は比較的高い。だが、先述したとおり、エンジン音は聞こえるものの、あまりうるさい感じはない。やはり、どこか余裕を感じられる印象なのだ。ハイブリッド車では、最高出力がエンジン106PS、モーター131PS。最大トルクはエンジン13.0kgf-m、モーター25.8kgf-m。これらスペックは、先代と同様だ。つまり、排気量はもちろん、出力も変わっていないが、ワインディングなどの高回転域でも、より静粛性を向上した効果が表れているといえる。

さらに長い下り坂で、先行車に続いて走るときなど、アクセルを踏む量が少ないか、完全にアクセルオフで走るシーンでは、より静かな走りを体感できる。バッテリーの充電状況が良好であれば、モーターのみで走るEVモードになるためだ。また、アクセルオフ時の減速感を4段階で調整できる減速セレクターや、しっかりとした減速となるBレンジを使えば、アクセルのオン・オフだけで速度調整が可能。いわゆるワンペダル操作だ。長い下り坂で、頻繁にブレーキペダルを踏む必要がないのだ。こうしたロングドライブなどでの疲労軽減に貢献する機能も、e:HEVならではの魅力といえるだろう。

ハイブリッド車の4WDに試乗


e:HEV Zプレイパッケージの4WDモデル(写真:三木宏章)

次は、ハイブリッド車の4WDに試乗。今回は、これも先述のとおり、e:HEV Zプレイパッケージに乗った。

このグレードは、従来と同様、専用の2トーンカラーを採用するが、中でも今回試乗したのは、新色となるシーベッドブルー・パールとシルバーをマッチングさせた仕様だ。外装は、フロントグリルに配置したトリコロールのアクセントの配色を変更。ドアロアーガーニッシュには、ブルーのラインを追加し、より洗練された雰囲気を演出している。

また、内装は、先代でも好評だったグレージュの色味を継承しながら、ピンストライプ/ステッチにライトブルーを追加。外装とのリレーションを図るとともに、より都会的で、先進感のあるコーディネートを採用している。なお、シート素材は、e:HEV Xハントパッケージと同様、プライムスムース×ファブリックのコンビシートを採用している。


e:HEV Zプレイパッケージのインテリア(写真:三木宏章)

市街地では、ハイブリッド車4WDのe:HEV Zプレイパッケージも、EV走行の領域が拡大し、静かな走りを味わえる。また、平坦な道であれば、エンジンが始動しハイブリッドモードとなっても、あまりエンジンの音が気にならないことも同様だ。ただし、ちょっとした登り坂などでは、ハイブリッド車FFのe:HEV Xハントパッケージと比べ、エンジン音がちょっと大きい印象だ。これは、ワインディングの登り坂なども同じで、クルマがちょっと「頑張っている」感が出てしまう。

この点について、試乗後にホンダ開発者に理由を聞いたところ、「おそらく車両重量の違いだろう」という。両タイプの車両重量は、e:HEV XハントパッケージのFFで1350kg(ベースとなるe:HEV XのFFも同じ)、e:HEV Zプレイパッケージの4WDでは1450kg(ベースとなるe:HEV Zの4WDも同じ)だ。


e:HEV Zプレイパッケージのリアビュー(写真:三木宏章)

ベースとなるe:HEV Xとe:HEV Zでは、そもそも装備が違い、例えば、ホイールはe:HEV Xが16インチなのに対し、e:HEV Zは18インチ。また、試乗したe:HEV Zプレイパッケージの4WDには、パノラマルーフなどのオプションも付いている。車体が重たいぶん、登り坂などではエンジンの回転数が比較的高くなることで、よりエンジン音も大きく聞こえたようだ。そう考える、幅広いシーンで高い静粛性を維持するのは、ハイブリッド車FFのほうだといえる。

ちなみに、減速セレクターやBモードを使い、アクセル操作だけで車速を調整するワンペダル操作は、これもハイブリッド車FFと同様、市街地でも効果を発揮する。例えば、ストップ&ゴーの続く渋滞路などでは、ブレーキペダルを頻繁に使わずに済むため、疲れにくいのだ。ヴェゼルe:HEVでは、信号などの停車時にワンペダル操作で完全停止はせず、クリープ状態となるため、最終的にはブレーキをかける必要はある。ただし、オートブレーキホールド機能も持つため、ペダルを踏み続けなくても停止状態を保持できる。こうした機能により、市街地などでも快適なドライブを楽しめる点は、先代と同等だ。

ワインディングでは安定感に磨きがかかる


ワインディングロードでの走行シーン(写真:三木宏章)

一方、ワインディングでは、ハイブリッド車4WDのほうが車体の安定感が高く、ハイブリッド車のFFモデル以上に思いどおりのラインをトレースできる。また、ハイブリッド車のFFでは、急なコーナーを曲がる際に、車体が外側に傾くロール現象が起こる場合もある。とくに左右にコーナーが連続する道では、車体も左右の外側に傾くため、乗り物酔いしやすい乗員がいる場合は、できるだけゆっくりと走るなど、注意も必要だ。対して、ハイブリッド車4WDは、同じような道を同様のペースで走っても、車体のロールは少ない。ドライバーが楽しいだけでなく、同乗者の快適性でも上だといえる。

こうした走りの違いは、独自の「リアルタイムAWD」の効果といえるだろう。これは、アクセル開度や車輪速、ギア段、ステアリング舵角など、各種センサーからの情報をもとに、クルマの状態をリアルタイムに把握し、4輪に最適な駆動力配分を実現するシステムだ。基本的に、アクセルペダルを踏み込んでいるときは4輪駆動であることは、一般的な4WDと同じ。だが、例えば、コーナー進入時、アクセルペダルをオフにした瞬間に後輪への駆動力配分をやめ、2輪駆動へ変更。前輪がより曲がりやすくなるなどの効果を生むことで、ドライバーが思い描くラインをトレースしながら、スムーズにコーナーへ進入することをサポートする。


e:HEV Zプレイパッケージのホイール(写真:三木宏章)

また、コーナーの脱出に向けアクセルペダルを踏み込むと、後輪に最適な駆動力を配分し、加速初期の段階でクルマが外にふくらむことなどを防ぐ。ほかにも、登り坂では、前輪の駆動力を後輪よりも大きくし、よりスムーズな走りも実現。とくに雪道などの滑りやすい路面で坂道発進するシーンでは、絶大な効果を発揮する。ちなみに新型のリアルタイムAWDでは、ブレーキや、最適な駆動力を制御するトラクションコントロールの介入タイミングを最適化。雪道などで車輪がスタックした際なども、より素早い脱出をサポートできるようになっている。

高速道路でも静粛性の高さを実感


e:HEV Zプレイパッケージの走行シーン(写真:三木宏章)

今回、高速道路の走行も、ハイブリッド車4WDのe:HEV Zプレイパッケージで試したが、高速クルーズ時も静粛性がより向上した印象だ。従来のヴェゼルe:HEVでは、道路の勾配に応じて、走行モードを頻繁に切り替えていた。例えば、平坦な道を一定速度で巡航する際は、エンジンの動力のみで走るエンジンモード。ゆるやかな下りでは、モーターのみで走るEVモードとなり、逆にゆるやかな登り坂では、エンジンが発電しモーターで走るハイブリッドモードを使う。

だが、こうした勾配の変化がある場合、例えば、ゆるい下りから道が平坦になってEVモードからエンジンモードに切り替わったり、平坦な道からゆるい登り坂になってエンジンモードからハイブリッドモードに替わったりする場面で、エンジン回転数の変動も頻繁となることで、エンジン音が気になるケースもある。

そこで新型では、エンジンモード時にモーターが動力をアシストする領域を拡大。これにより、回転数をあまり上げずにエンジンのみで走るシーンを増やしている。今回は試していないが、ホンダの開発者によれば、こうした特性は、ハイブリッド車FFも同様。ハイブリッド車の全タイプで、より静かでスムーズな高速走行を実現しているという。

安全運転支援システムも機能向上

新型ヴェゼルでは、先進の安全運転支援システム「ホンダセンシング」のアップデートも行われている。今回は、とくに高速道路などで設定した車間距離を自動で維持しながら前車を追従する「渋滞追従機能付きACC(アダプティブ・クルーズコントロール)」の進化を体感した。例えば、遠くを走っていた前車に追い付いたとき。ACC作動中であれば、設定速度を保つために、車両は自動でブレーキをかけるが、その際の減速フィールがかなり自然でマイルドになったのだ。従来、こうしたシーンでは、ドライバーが思っている以上に急な減速となるケースもあり、「ちゃんと止まれるのか」と不安になることもある。場合によっては、ついつい自分でブレーキペダルを踏んでしまうこともあった。その点、新型では、減速の度合いがゆるやかなため、不安なくシステムに車間保持を任せておけるようになっている。

また、車線内を走行できるようにステアリング操作を支援する「LKAS」も、システムを改善している。隣の車線を走る大型トラックを追い越す際、トラックの風圧で引き寄せられてしまうようなシーンでも、トラックのほうへ引き寄せられないように操舵の制御を修正。進化したACCとのマッチングにより、高速道路などを走る際の安心感やスムーズさなどをアップしている。

なお、新型では、ほかにも、衝突軽減ブレーキ「CMBS」を交差点左折時の自転車や歩行者にも対応させ、左折巻き込みによる事故低減をサポート。また、新規に3つの機能も追加している。0〜65km/hまでの速度領域で自車の走行車線を維持する「トラフィックジャムアシスト」、障害物がない場所でも急アクセルを抑制する「急アクセル抑制機能」、夜間のハイビーム時に先行車や対向車を検知すると、照射範囲を自動で調整し、相手車両への眩惑を防ぐ「アダプティブドライビングビーム(タイプ別設定)」だ。

さらに、新型ヴェゼルでは、コネクテッド機能の「ホンダコネクト」も進化。スマートフォンの遠隔操作で、エアコンやドアロック、エンジン始動などができるホンダリモート操作に、パワーテールゲートの開閉機能も追加している(ホンダ車初)。こうした機能により、最新モデルは、より快適で、さらに便利となっていることも、大きな魅力のひとつといえるだろう。

ガソリン車はFFを廃止、4WDのみの設定に


ガソリン車のG(写真:三木宏章)

今回は、試乗時間の都合で、市街地のみの走行となったが、ガソリン車のGにも試乗した。前述のとおり、ガソリン車FFのみ設定するWR-Vとの兼ね合いで、4WDのみの設定となったG。だが、最高出力118PSを発揮する1.5L・4気筒エンジンと、1320kgというハイブリッド車より軽い車両重量などにより、街中では意外に軽快な走りだったのが印象的だ。

また、メーターを従来の4.5インチから7インチタイプに拡大するなど、各部の装備もハイブリッド車と同等になって、使い勝手や高級感も向上。さらにリアルタイムAWDは、車速をGPSで検知するなどの制御も加えることで、コーナリングの安定性はもちろん、雪道などでのスタックした際の素早い脱出力なども、ハイブリッド車に負けない実力を持つという。


ガソリン車のエンジンルーム(写真:三木宏章)

ホンダによれば、新型ヴェゼルの受注状況は、2024年4月26日の発売から取材した2024年6月6日時点で、ハイブリッド車FFが全体の約8割。対するガソリン車は、約1割程度だという。こうした傾向は、先代も同様なのだが、これは燃費の面もあるのだろう。

新型の燃費性能は、WLTCモード値で、ハイブリッド車が21.2〜26.0km/L。とくに全タイプで最も燃費のいいe:HEV Xやe:HEV XハントパッケージのFFは、先代の25.0km/Lから26.0km/Lと、若干だが向上している。一方、ガソリン車Gでは、WLTCモード値で15.0km/L。ハイブリッド車と比べると、燃費性能にかなり差がある。


e:HEV Xハントパッケージのラゲージスペース(写真:三木宏章)

だが、例えば、高齢者のユーザーなどで、病院や買い物など自宅周辺しか走らず、遠出をしないのであれば、トータルの走行距離は短くなり、燃料もさほど多くは使わないだろう。もし、ガソリン代などのラインニングコストがあまり変わらないのであれば、ガソリン車の安い車両本体価格も十分に魅力だ。

なお、ヴェゼルの価格(税込み)は、ハイブリッド車が288万8600円〜377万6300円、ガソリン車は264万8800円。先代モデルの価格(税込み)は、ハイブリッド車277万8600円〜341万8800円、ガソリン車で239万9100円〜261万9100円だったから、全体的に価格はアップしている傾向だ。

短い納期も好印象、激戦のSUV試乗で首位奪還なるか


ホンダアクセスの純正アクセサリーを装着したカスタマイズ仕様(写真:三木宏章)

日本自動車販売協会連合会の発表したデータによれば、発売直後である2024年5月の1カ月間で、新型ヴェゼルの新車販売台数は5717台を記録(全体の6位)。ホンダが公表した月間の販売計画台数5000台を上まわっており、比較的順調な受注状況だといえる。また、納期も、ホンダによれば、1〜2カ月程度で比較的良好らしい。先代では、とくにe:HEVプレイの納期が伸びていたが、これは、標準装備だったパノラマルーフの生産遅れが原因だったという。新型の場合、パノラマルーフは、e:HEV Zプレイパッケージのメーカーオプションに変更したことで、こうした納期遅れの問題にも対処しているという。


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熾烈なシェア争いをみせるSUVカテゴリーのなかでも、とくにホットなのがコンパクトSUVのジャンル。競合車には、トヨタの「カローラクロス」を筆頭に、現在(2024年6月10日時点)は、認証試験の不正で出荷停止となっているが「ヤリスクロス」もある。ほかにも、日産の「キックス」やマツダの「CX-30」など、なかなかの強敵揃いだ。

初代モデルが国産SUVの代名詞的存在だったヴェゼル。だが、今のところ2代目は、初代ほどのインパクト感を市場で示してはいない。そんな中、マイナーチェンジを受けた新型が、新車販売台数で1位を獲得するなど、かつてのような存在感を示せるのか、非常に興味深い。

(平塚 直樹 : ライター&エディター)