「子宮頸部腺がん」の前兆となる初期症状はご存知ですか?医師が徹底解説!

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子宮頸部腺がんとは?Medical DOC監修医が花咲乳がんの症状・初期症状・原因・生存率・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

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監修医師:
阿部 一也(医師)

医師、日本産科婦人科学会専門医。東京慈恵会医科大学卒業。都内総合病院産婦人科医長として妊婦健診はもちろん、分娩の対応や新生児の対応、切迫流早産の管理などにも従事。婦人科では子宮筋腫、卵巣嚢腫、内膜症、骨盤内感染症などの良性疾患から、子宮癌や卵巣癌の手術や化学療法(抗癌剤治療)も行っている。PMS(月経前症候群)や更年期障害などのホルモン系の診療なども幅広く診療している。

「子宮頸部腺がん」とは?

子宮頸がんとは、子宮の入り口にある子宮頸部で発生するがんのことを指します。
子宮頸部腺がんとは、子宮頸がんの中のタイプの一つです。
子宮頸がんの主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によるものです。
このがんにはいくつかの異なるタイプがありますが、最も一般的なのは扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんと腺がんです。中でも、扁平上皮がんが一般的ではありますが、腺がんも年々増えており、注意が必要です。
子宮頸がんの検査は、まずは細胞診といって、少量の組織を採取して、顕微鏡で調べる検査をします。HPVに感染しているかどうかを調べる検査をすることもあります。そして、がんが疑われる場合は、さらに量の多い組織を採取し、調べるコルポスコピー(腟拡大鏡)下の組織診という検査を行います。
がんと診断された場合には、内診・直腸診、超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査、PET検査などのさらに詳しい検査を行います。
子宮頸がんのステージングは、がんの広がりを評価し、治療計画を立てるために重要です。ステージングは、がんがどれだけ進行しているかを示し、ステージ0(非浸潤がん)からステージⅣ(最も進行したがん)までの範囲で分類されます。以下に、主なステージごとの特徴を簡単に説明します。

・0期
この初期段階では、がん細胞は子宮頸部の表層内(上皮内)に限定されており、周囲の組織や器官への浸潤はありません。
子宮頸部腺がんの前癌病変は、上皮内腺がんとなります。

・I期
がんは子宮頸部に限定されていますが、表層である上皮から、より深部の間質といわれる組織へと広がり始めています。
- IA1期: 病理学的に診断可能で、間質への浸潤が3mm以下。
- IA2期:間質への浸潤が3mmを超えるが、5mm以下。
- IB期: より大きな浸潤があり、間質への浸潤が5mm以上。腫瘍の大きさが2cm以下ならIB1期、2cmを超え、4cm以下ならIB2期、4cmを超えるとIB3期となります。

・II期
がんが子宮頸部を越えて上部の腟部分や子宮体に広がっていますが、骨盤壁や下部腟は侵していません。
-IIA: 腟の上部のみに広がりありだが、子宮傍組織浸潤は認めない。腫瘍最大径が4cm以下ならIIA1期、4cmを超えるとIIA2期になります。
-IIB: 子宮傍組織浸潤が認められるが、骨盤壁までは達しない。

・III期
がんが骨盤壁に達する場合、腎臓の機能に影響を与えるほど腎臓の尿管を圧迫している場合があります。また、腟の下部までがんが広がっていることもあります。さらに骨盤リンパ節や傍大動脈リンパ節に転移を来すこともあります。
-IIIA: 腟の下部に広がるが、骨盤壁には達しない。
-IIIB: 骨盤壁に到達または尿管を圧迫する。
-IIIC:骨盤リンパ節や傍大動脈リンパ節に転移している。骨盤リンパ節にのみ転移している場合は、IIIC1期、傍大動脈リンパ節に転移がある場合はIIIC2期となります。

・IV期
最も進行した段階で、がんは骨盤外に広がり、膀胱や直腸などの近隣の器官を侵しています。また、遠隔転移(肺や肝臓など他の器官への転移)も含まれます。
- IVA: 膀胱や直腸などの近隣の器官に侵入する。
- IVB: 遠隔の器官に転移する。

今回の記事では、子宮頸部腺がんについて、子宮頸がんとの違いがあるのかについても詳しく解説していきます。

子宮頸部腺がんと子宮頸がんの違い

「子宮頸部腺がん」は「子宮頸がん」の一部であり、子宮頸がんの中でも特に腺細胞由来のがんを指す言葉です。
子宮頸がんは、扁平上皮がんというタイプと腺がんというタイプが大半を占めています。
扁平上皮がんは、子宮頸部入口のあたりにある粘膜組織の扁平上皮細胞から発生します。
それに対し、腺がんは、子宮体部の近くにある、腺組織から発生します。
子宮頸部腺がんは、扁平上皮がんと比べると少ないです。
日本産科婦人科学会学会による、2021年治療開始の患者年報では、扁平上皮がんは全体の73.1%、腺がんは21.4%となっています。
現在、子宮頸がんについてはがん検診の普及で扁平上皮がんは減少傾向ですが、腺がんは年々増加しています。また、若い女性で診断されることが増えているなどの特徴があります。
腺がんは扁平上皮がんと比べて、治療の際に放射線治療に抵抗性(つまり、放射線治療が効きにくい)があります。そして、特に進行がんの予後が不良と言われています。

子宮頸部腺がんの代表的な症状

子宮頸部腺がんは初期段階では症状に乏しいですが、進行すると以下のような症状が現れることがあります。

下腹部の重だるさや圧迫感

この症状は、がんの進行によって周囲の組織や臓器に圧力がかかっている場合に生じることがあります。
対応としては、安静にして鎮痛薬を使用することが方法としてありますが、あくまで一時しのぎにとどまります。
症状が軽減されない場合は、産婦人科や状況により消化器内科で診察を受けるようにします。特に、症状が急に悪化したり、日常生活に支障を来したりする場合は、早めに受診するようにしましょう。

腰痛

腰痛は、がんが周囲の組織や神経に圧迫や影響を与えている場合に発生することがあります。痛みを和らげるために、適度な休息を取る、温かい湿布を使うなどが有効です。また、過度の身体活動は避け、医師の許可のもとで軽いストレッチや体操を行うことが推奨されます。
腰痛が持続する場合は、産婦人科での評価が必要です。がんの影響を受けやすい背部や腰部に痛みがある場合、早めに医師に相談し、必要に応じて画像診断を含む詳細な検査を受けることが重要です。痛みが急激に強くなる場合は緊急を要します。

体重減少

意図しない体重減少はがんが進行している兆候の一つとされています。この症状に対する直接的な自宅での処置は限られていますが、栄養状態を保つためにバランスの取れた食事を心がけることが大切です。
体重減少が見られる場合は、産婦人科の他に内科的な評価も必要になることがあります。この症状自体に緊急性は低いかもしれませんが、原因を明らかにし、適切な治療を行うために早めの受診をお勧めします。

子宮頸部腺がんの前兆となる初期症状

子宮頸部腺がんの初期症状について解説していきます。

不正出血

不正出血は、月経周期に関係なく発生する出血で、特に性交後の出血や予期せぬ出血が含まれます。
出血が見られた場合は、過度に体を動かすことを避け、生理用のナプキンなどでまずは対応しますが、自己判断での薬の使用は避けましょう。
不正出血が見られた場合、産婦人科の受診をお勧めします。出血のパターン、量、付随する症状を詳細に伝えることが大切です。出血がひどい場合や止まらない場合は、緊急性が高いため、すぐに医療機関を訪れるべきです。

異常な膣分泌物

色、量、臭いが普段と異なる腟分泌物、つまりおりもの増加が見られます。これは感染ではなく、子宮頸部からの異常な分泌物の可能性があります。
症状の原因を特定するためには医師の診察が必要ですので、産婦人科を受診してください。分泌物の変化について具体的な説明を準備しておくと良いでしょう。

骨盤痛または性交痛

子宮頸部腺がんが進行すると、骨盤痛や性交時の痛みが生じることがあります。これはがんが周囲の組織に影響を与えている可能性があるためです。
痛みがある場合は、激しい活動を避け、必要に応じて医師の指導のもとで痛み止めを使用することができます。ただし、これは一時的な対処であり、原因の診断と治療が必要です。
症状が出た場合は産婦人科を受診し、痛みの性質や発生時の状況を詳細に説明してください。痛みが強い、または日常生活に支障をきたす場合は、早めに医療機関への受診するようにします。

子宮頸部腺がんの原因

子宮頸部腺がんの原因やリスク因子について解説していきます。

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸がんの最も一般的な原因であり、特に高リスク型のHPVは子宮頸部腺がんを含む多くの子宮頸がんを引き起こすことが知られています。
定期的な子宮頸がんスクリーニング(擦過(さっか)細胞診検査やHPV検査)を受けることが勧められます。
HPVワクチンの接種も予防策として有効です。定期検診により早期発見・治療が可能となります。

子宮頸部腺がんのステージ別・生存率

それでは、子宮頸部腺がんのステージ別生存率を解説します。
ステージⅠからⅣの生存率については、婦人科腫瘍委員会報告 第64回治療年報(2016年治療開始例)のデータとなります。

子宮頸部腺がん・ステージ0の生存率

ステージ0の子宮頸がんは、上皮内に癌がとどまっている段階です。リンパ節転移などはほとんどなく、手術で摘出すればほぼ完治が見込めます。
上皮内腺がんでは、妊娠を希望する女性に対して子宮頸部円錐切除術(しきゅうけいぶえんすいせつじょ)の適用が可能です。しかし、がんを取り残してしまうリスクや再発するリスクなどをかんがみて、治療方針を決めていくことになります。その他には、単純子宮全摘術も選択肢になります。

子宮頸部腺がん・ステージIの生存率

ステージⅠの子宮頸部腺がんの5年生存率は、92.5%で、扁平上皮がんの5年生存率は93.9%であり、大きな差はありません。
上皮を超えて、より深くまで癌が浸潤していることがステージ0との違いです。
早期の段階では症状がないことも多いと考えられます。
産婦人科で、検査や治療を行います。
ステージⅠでは、単純子宮全摘出術や、病変がより広がっている場合には、骨盤の中のリンパ節郭清術などの手術を行います。

子宮頸部腺がん・ステージIIの生存率

5年生存率は61.4%で、扁平上皮がんの5年生存率が80.8%と比べると低くなっています。ステージⅠとの違いは、がんが子宮頸部を超えた部位にも広がっているかという点にあります。
治療は、広汎子宮全摘出術などが行われます。5年生存率はステージⅠよりも低くなりますが、根治の可能性はあります。

子宮頸部腺がん・ステージIIIの生存率

5年生存率は46.1%で、扁平上皮がんの5年生存率が58.2%と比べると低くなっています。
ステージⅡとの違いは、がんがさらに広い範囲に広がっていたり、リンパ節に転移が認められるようになったりすることがあります。また、尿の通路に影響がでるために、水腎症という腎臓の障害が起こることもあります。
治療方針としては、手術療法や同時化学放射線治療(CCRT)が選択されます。
完治の可能性はステージⅡよりは低くなりますが、可能性はあります。

子宮頸部腺がん・ステージIVの生存率

5年生存率は24.5%で、扁平上皮がんの5年生存率が32.3%と比べると低くなっています。
ステージⅢとの違いは、他の臓器にもがんが及んでいるということがあります。
IVA期の場合は、放射線治療(±化学療法)が行われます。IVB期、つまり肺や肝臓などの他の臓器にもがんが及んでいる場合には、化学療法や転移した病変に対する放射線治療が行われます。

子宮頸部腺がんのステージ別・治療法

子宮頸部腺がんのステージ別の治療方針は、原則として子宮頸部の扁平上皮がんと同様です。しかし、再発のリスクが高いことなどに注意が必要です。

子宮頸部腺がん・ステージ0の治療法

扁平上皮がんと腺がんともに、初期の段階では局所的な外科的処置(例えば、子宮頸部円錐切除)が一般的です。この処置では、異常細胞を含む組織の小部分を切除します。
産婦人科で行われ、必要に応じて専門の腫瘍科も関与します。外来手術として行われることが多いです。
多くの場合、入院の必要はなく、手術は日帰りで行われます。
定期的なフォローアップが必要で、手術後の経過観察のために定期的に通院します。

子宮頸部腺がん・ステージIの治療法

小さながんに対しては外科的な手術が行われることが一般的です。
ステージⅠの中でも早期の段階の腺がんについては、扁平上皮がんと同じように扱うという意見が多いとされています。
ただし、腺がんの一種である、悪性腺腫胃型腺がんについては、妊娠を目的とする妊孕性温存手術は勧められないとされています。
再発リスクが高いと考えられる症例では、術後治療として、放射線療法や化学療法が組み合わされることもあります。
産婦人科で手術が行われ、必要に応じて放射線科や腫瘍内科なども連携して治療を行っていきます。
手術を伴う場合、数日から1週間の入院が必要です。手術後のフォローアップのために定期的に通院が必要です。

子宮頸部腺がん・ステージIIの治療法

放射線療法や手術療法が行われます。進行がんでは手術の前後にこれらの放射線治療や化学療法が行われることもあります。
腫瘍が子宮の頸部にとどまっている場合には主に手術療法が行われます。そして、高齢や合併症がある場合には、放射線治療が行われることが多いです。
産婦人科、放射線科、腫瘍科での治療が行われます。
放射線療法や化学療法を受ける場合、外来での治療が多いですが、手術が必要な場合は入院が必要です。
定期的な治療とフォローアップのための通院が必要です。

子宮頸部腺がん・ステージIIIの治療法

放射線療法と化学療法の組み合わせ(化学放射線治療)が主となります。病状に応じて手術が加えられることもあります。
化学療法には、シスプラチンという抗がん剤を用いることが一般的です。
産婦人科、放射線科、腫瘍内科などによる包括的な治療が行われます。
化学療法を行う際に入院が必要な場合があります。
腺がんは扁平上皮がんと比べ、通常のX線による放射線治療が効きにくいとされています。しかし、2022年4月、手術による根治的な治療が困難である局所進行子宮頸部腺がんに対して重粒子線治療が保険診療として認可されました。今後も、その治療効果が期待されるところです。

子宮頸部腺がん・ステージIVの治療法

ステージの中でも、IV A期の方に対しては、ステージⅢと同じように放射線療法が基本となります。放射線治療には、シスプラチンを使用した同時化学放射線治療が推奨されています。時には手術が用いられます。
一方、IVB期、つまり他の臓器に転移がある場合には、患者さんの状態に合わせてさまざまな治療が行われます。化学療法や放射線治療などが選択肢になります。
産婦人科、放射線科、腫瘍科、および緩和ケアチームが関与します。症状管理や治療のための長期間の入院が必要になることがあります。症状管理のための定期的な通院が必要です。

「子宮頸部腺がん」についてよくある質問

ここまで子宮頸部腺がんの症状・原因・生存率・治療法などを紹介しました。ここでは「子宮頸部腺がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします

子宮頸部腺がんが進行するとどうなりますか?

浅野 智子 医師

子宮頸部腺がんが進行すると、がんは子宮や骨盤の他の器官に広がり、腹部の痛み、体重減少、遠隔部位への転移などの重篤な症状を引き起こす可能性があります。
進行がんで発見される前に、がん検診を受け、早期発見に繋げましょう。そして、気になる症状があれば受診するなどすることが大切です。

編集部まとめ

今回の記事では、子宮頸部腺がんについて、扁平上皮がんとの違いや治療法について解説しました。
腺がんは年々増加中ですが、まずは自分でできるリスク管理として、がん検診を受ける、禁煙する、などの方法をとるようにしましょう。

「子宮頸部腺がん」と関連する病気

「子宮頸部腺がん」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

婦人科の病気

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染

子宮体がん卵巣がん外陰がん

腟がん

これらの病気はいずれも女性の生殖器に関連しており、特にHPV感染は子宮頸がんのリスクを大きく高める要因です。

「子宮頸部腺がん」と関連する症状

「子宮頸部腺がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

不正出血

異常な腟分泌物

骨盤痛または性交痛

下腹部の重だるさや圧迫感

腰痛

体重減少

これらの症状がある場合は、子宮頸がん以外の可能性も考慮に入れつつ、専門医による診察を受けることが推奨されます。

参考文献

子宮頸がんについて(がん情報サービス)

子宮頸癌治療ガイドライン2022年版(日本婦人科腫瘍学会)