「胃カメラ後の食事」は何を食べたらいいかご存知ですか?医師が徹底解説!
胃カメラ後の食事はどうすべき?Medical DOC監修医が胃カメラ検査後の食事や水分の摂り方や注意点、消化に良いおすすめメニュー等を解説します。
≫「胃がん発症時に食べてはいけないもの」はご存知ですか?予防法も医師が解説!監修医師:
木村 香菜(医師)
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
胃カメラ後の食事は何を食べたらいい?
胃カメラは検査のために、前日から食事の調整を行います。検査終了後には、当日のうちに食事も摂取して問題はありませんが、検査後の胃の負担にならないように配慮することが必要です。当記事では、胃カメラ後の食事の注意点を中心にご紹介します。
胃カメラ(胃内視鏡検査)とは?
胃カメラ(胃内視鏡検査)とは、上部消化管と呼ばれる人の口腔、食道、胃、十二指腸までを調べる検査です。先端にカメラのついた内視鏡(直径6mm~12mm程度)を鼻もしくは口から挿入します。内視鏡を口腔からさらに十二指腸まで移動させ、カメラが写した画面を通して、上部消化管を直接見て健康状態の確認を行う検査となります。
胃カメラ前日の食事
主に胃の役割は、食物を貯留し、胃に入ってきた食物を消化・殺菌し少しずつ十二指腸に送り消化・吸収を促すことです。ただ、食事の内容によって食物の胃内滞在時間が大きく違います。食べものが胃に滞在する時間は、平均2~3時間といわれています。そして、お肉や天ぷらなど脂肪分の多い食べものは4~5時間かかります。
そのため、胃カメラ前日には21時頃までに食事を済ませておきます。牛乳やコーヒーなどの色のついた飲み物も検査に影響が出る可能性がありますので、前日からこれらのものを控えておく必要があります。
胃カメラ当日の食事
午前中に胃カメラ検査がある場合、検査当日は何も食べずに来るように指示される医療機関が多いかと思われます。夕食は、検査前日の20時頃までにとるようにしましょう。
お水・お茶は検査の2時間前まで飲むことが可能です。
また、胃カメラ当日は、水分についてはコップ一杯程度であれば飲んでも良いということが一般的です。胃に食べ物などが残っていると、胃カメラ検査が正確に行えない場合があるからです。
胃カメラ検査の何時間後から食事はできるの?
胃カメラ検査後、いつから食事ができるのか気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。基本的に、胃カメラ検査の直後には食事はできません。その理由としては、胃カメラ検査の際に使用する麻酔や鎮静剤の影響があります。検査直後の場合には薬剤の影響により感覚が鈍くなっている場合が多いためです。
これらの薬剤の効果が残っている状態で飲食をすると、食物が器官に入ってしまい誤嚥(ごえん)のリスクが高くなります。そのため、検査後は最低でも1時間は何も口にしないようにしましょう。
胃カメラ検査後におすすめの食事メニュー
胃カメラの際、多くの方が麻酔をかけ入眠中に検査を行っているケースが多いです。
そのため、胃カメラ後に覚醒しても麻酔はまだ残っている場合が多く食事はすぐに行わず1時間経過してから食事を行ってください。
留意したい点としては、胃に負担がかからない食事にする必要があります。タンパク質や脂肪分を含む場合には、胃の滞在時間が長く胃に負担が大きいです。肉・油物・きのこ・豆・野菜・海藻・スイカやキウイフルーツなどは消化が悪いため控えましょう。カレー、香辛料、アルコールなどの刺激物は、胃痛を引き起こす原因にもなりますのでお勧めしません。消化に良いメニューは、うどん・お粥・具の入っていないスープなどがおすすめです。
胃カメラ検査後に気持ちが悪い場合はどうしたらいい?
胃の粘膜が一時的に敏感になっている場合や組織やポリープをとった際には、その部分において敏感になる場合や、検査時に胃に空気を入れた影響で、お腹が張って気持ちが悪いということになる場合もあります。
このような症状の場合には、食事は無理やり食べることはせずに症状が落ち着いてから、食べるようにしましょう。また、そのような時には特に刺激物などは控えておくことをお勧めします。
胃カメラの結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまでは胃カメラ後の食事について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
胃カメラの結果の見方・分類と主な所見
胃カメラの結果の見方としては、カメラで見た所見から、医師が診断を行っていきます。画像所見を基準に食道・胃・十二指腸までの疾患を発見することが可能です。
胃カメラ検査では、胃の粘膜の状態や色調、形状、血管のパターンなどを詳細にチェックし、異常がないかを確認します。
胃カメラの結果の見方や分類には、いくつかのガイドラインや分類法がありますが、ここでは一般的な所見を解説しましょう。
・正常: 胃粘膜はピンク色で滑らか、血管が透けて見える。
・炎症(胃炎): 赤みがかった粘膜、腫れ、出血点が見られる。
・萎縮性胃炎: 胃粘膜が薄くなり、血管がより明瞭に見える。
・胃潰瘍: 粘膜にへこんだ損傷(潰瘍)が見られる。
・胃ポリープ: 粘膜から隆起した腫瘍性の病変。
・胃癌: 早期の場合は小さな隆起やへこみとして見られるが、進行すると大きな塊やびらんを伴う。
胃癌の分類は以下のようなものがあります。
・基本分類
0型:表在型
1型:腫瘤型
2型:潰瘍限局型
3型:潰瘍浸潤型
4型:びまん浸潤型
5型:分類不能型
・パリ分類(Paris classification): 主に表在性病変(隆起、平坦、陥凹)を分類。
0-I: 隆起型
0-II: 平坦型(IIa: 陥凹より隆起、IIb: 平坦、IIc: 陥凹より深い)
0-III: 陥凹型
異常が見つかった場合は、追加検査や治療の必要性について医師と相談することが重要です。
胃カメラの結果で精密検査が必要な基準と内容
胃カメラの結果としては、健康診断と同じように検査結果が渡されます。基本的に再検査の場合、3ヶ月以内には再受診を別の医療機関で依頼しましょう。
このような場合ですと、保険診療になりますので3割負担となり相場としては2,000円~10,000円程度が相場になります。
胃カメラの再検査の場合には、再度胃カメラにて胃の中の様子を確認します。
初回の胃カメラでは主に、再検査が必要かどう中心に異常な所見がないかを確認し、再検査にて胃にどのような病変があるのかを検査していきます。
「胃カメラ」で発見できる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「胃カメラ」に関する病気を紹介します。
どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
胃がん
胃はみぞおちのあたりにある臓器で袋状の形をしています。口から入った食物は、食道を通り胃に溜められ消化されていきます。胃の壁は5層に分けられ、食べ物をため、消化し少しずつ腸へ送り出します。
胃がんとは、この胃の壁の内側を覆う粘膜や細胞が何らかの原因で癌細胞となり、無秩序に増えていくことにより発生する疾患です。
胃がんの原因としては、ピロリ菌感染による慢性的な炎症や喫煙やストレス、過度な飲酒や塩分の多い食事などが挙げられます。
胃がんのなかには、進行がはやくお腹の中にがんが散らばる腹膜播種が起こりやすいスキルス胃がんという病気もあります。そのため、胃がんと診断された場合には、
治療は、がんの大きさが2cm以下で潰瘍のない病変の場合には内視鏡的粘膜切除術(EMR)、がんの大きさが2cmを超える潰瘍のない病変や3cm以下の潰瘍のある病変の場合には、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行います。遠隔転移がなく、内視鏡による切除が難しい場合には手術による治療が推奨されています。
食道がん
食道は喉から胃をつなぐ管状の臓器になります。食道の働きは、口から食べた食物を胃へ送ることになります。食道がんとは、この食道の内面を覆っている粘膜の表面からでき、食道の外側へと広がっていきます。この食道がんの約半数が食道の中央付近からできることが多いです。
食道がんは、がんの中では比較的進行が早いがんになります。そのため、食道がんだと診断された場合には早めに消化器外科のある病院へ受診することが大切です。
食道がんも粘膜を通し、広がってしまうため早めの対処が必要です。リンパ節転移のない0期の早期胃がんのうち、食道の全周に及んでないがんもしくは全周に及んでいる場合には長さが5cm以下のがんは食道を温存できる内視鏡的切除の対象になります。
ほか、本人の状況やガイドラインに沿って、治療をすすめていくことになります。
胃・十二指腸潰瘍
胃・十二指腸潰瘍とは、胃や十二指腸の粘膜が傷つくことで痛みや吐下血を生じる病気です。この原因の60~70%が、ヘリコバクター・ピロリという胃に存在する細菌が原因だとされています。症状としては腹痛(上腹部痛)や食欲低下、背部痛や吐血や下血などがあげられます。治療法としては、胃カメラやバリウム検査を行ったうえで潰瘍の状態を確認後、出血している場合には内視鏡的に止血術を行います。出血がなければ、薬物治療にて胃酸分泌薬抑制薬を内服します。もしピロリ菌が確認された場合には、症状軽快後にピロリ菌の除菌治療を行っていきます。
「胃カメラ後の食事」についてよくある質問
ここまで胃カメラ後の食事について紹介しました。ここでは「胃カメラ後の食事」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
胃カメラ後の食事はどんなものを食べたらよいでしょうか?
木村 香菜 医師
胃カメラ後の食事は、胃に負担のかからない消化の良いものを食べてください。
お粥、うどん、食パン、そうめんなどが良いでしょう。お肉は避け、野菜を食べる場合には繊維質のものは避けて食べてください。ほうれん草、白菜、カブ、大根、キャベツなどがおすすめです。
果物も同様に繊維質の少ない、りんごやバナナがお勧めです。
胃カメラの検査後はすぐに食事を摂って問題ないですか?
木村 香菜 医師
一般的には、検査後にはしばらくの間は飲食を控えるよう指示されることが多いです。これは、検査中に用いられる局所麻酔が喉に影響を及ぼし、一時的に嚥下反射が鈍くなっている可能性があるためです。そのため、食事を摂る際に誤って気管に食べ物が入ることを避けるために、ある程度時間を空ける必要があります。
検査後には、柔らかい食べ物や水分から始めることがすすめられます。また、麻酔が完全に切れるまでの間は熱い飲み物や食べ物を避けるように言われることもあります。
胃カメラ後に食べてはいけないものを教えてください。
木村 香菜 医師
胃カメラ検査後に避けるべき食べ物は以下のようなものが一般的ですが、検査を行う施設や個人の状態により異なる場合があるため、ご自身が検査を受けた施設での指示を守りましょう。
・アルコール: 検査に使用される鎮静剤や麻酔薬と反応して副作用を引き起こす可能性があります。
・硬い食べ物: 喉の麻酔が切れていない状態で硬い食べ物を食べると、飲み込む際に誤って気管に入る危険があります。
・辛い食べ物や刺激物: 胃粘膜を刺激し、不快感を与える可能性があります。
・極端に温かいまたは冷たい食べ物: 喉の感覚が鈍いままであれば、やけどをしたり、胃に負担をかけたりする恐れがあります。
検査後、医師が特に注意を要する食べ物について指示をしていない場合、食事を再開する前に医師や看護師に直接相談しておきましょう。
胃の内視鏡検査の後はコーヒーを飲んでも大丈夫ですか?
木村 香菜 医師
コーヒーの成分として、カフェインやクロロゲン酸があります。これらの成分は、胃の粘膜を刺激して胃液の分泌を促進する効果があるため検査後2~3日間ほどコーヒーは控えた方がよいでしょう。
胃カメラを受けた当日は飲酒をして問題ないですか?
木村 香菜 医師
アルコールは消化管の粘膜に影響する作用を持っています。また、胃カメラの処置内容によっても対応が変わる部分もあります。しかし、基本的に胃カメラ当日は飲酒を控えておいた方がその後の心配はないでしょう。
まとめ 胃カメラ後の食事は消化に良いものがおすすめ!
胃カメラ検査においては、粘膜切除などの処置をしていない場合でも、検査後には一時的に敏感になっているケースもあります。すぐに脂っこいものなどを食べたり飲酒をしたりすると、胃部不快感などの症状が現れることがあります。そのため、
胃カメラ後には消化の良いものを中心に食事をとるようにしましょう。
「胃カメラ」の異常で考えられる病気
「胃カメラ」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器系の病気
胃がん
食道がん胃潰瘍十二指腸潰瘍腹痛や胃部不快感などの症状があった場合には、早めに胃カメラなどの検査対応をお勧めします。消化器系の病気が隠れているかもしれません。
参考文献
[大原薬品工業株式会社]食べものの消化にかかる時間
[がん情報サービス]食道がん 治療
[がん情報サービス]胃がんについて