市場での環境意識がますます高まりつつあるなか、「グリーンウォッシュ(greenwashing)」という言葉が重大な懸念事項として挙げられるようになった。グリーンウォッシュとは、企業が本当は環境に配慮していないにもかかわらず、しているように見せかけ、消費者に商品またはサービスを提供することを指す。

「グリーンウォッシュは要するにマーケティングの一環であり、だからこそファッション業界では特に根強い」と、環境保護団体「Action Speaks Louder(ASL)」でキャンペーン責任者を務めるジョージ・ハーディング・ロールズ氏は言う。「人々は皆、気候変動問題をはじめとする環境問題や持続可能な社会に関する問題を深刻に受け止めるようになった。ファッション業界はこれを巨大なマーケティングの好機と位置づけ、『新商品を販売し、マーケティングすることで、あなたの罪悪感を薄める手助けをする』と謳っているのだ」。

そして今、企業は暴露されたグリーンウォッシュの正体と対峙することを余儀なくされている。

グリーンウォッシュによる軋轢を生まないために



たとえばアクション・スピークス・ラウダーは4月18日、ルルレモン(Lululemon)の生産の実態と、同ブランドが公表している環境への配慮に関するメッセージとの矛盾を明らかにした報告書を発表した。また2月には、環境保護非営利団体である「Stand.earth」がカナダ産業省競争局(Competition Bureau Canada)に、ルルレモンのグリーンウォッシュについて告発した。こうした訴訟は今後ますます増えると予想される。

社会的影響について訴求するストーリーテリング・エージェンシーであるジュニパー・メディア(Juniper Media)の創設者でCEOを務めるマデリン・モイトーソ氏は「(サステナビリティに向けた取り組みに関して)、印象や見栄えをよくするのか、それとも実際によいことをするのかという葛藤が、企業の内部でしばしば生じる」と話す。

2024年3月に施行された「グリーンウォッシュ禁止令(Greenwashing Directive)」のようなEUでの規制が、コミュニケーションの改善を加速させる流れをつくりだしている。マーケティングおよび広告エージェンシーは、ブランドコミュニケーションにおいて正確な情報を発信する上で、ますます重要な役割を担うようになるだろう。2020年6月に発足した国連が支援するグローバルキャンペーン「レース・トゥ・ゼロ(Race to Zero)」のようなイニシアチブも、こうした動きを後押ししている。このキャンペーンは、エージェンシーに対して顧客リストを開示し、広告による二酸化炭素排出量を公表することを促すものだ。

「エコフレンドリー(eco-friendly)」や「グリーン(green)」といった曖昧で根拠のない具体性を欠く表現や、商品が実際よりもサステナビリティであるように見せかけるラベルや認証の使用まで、グリーンウォッシュにはさまざまな形態がある。たとえばあるブランドはある商品ラインについて、実際その商品のなかにリサイクル素材が占める割合はごくわずかであることは伏せながら、「リサイクル素材使用」と謳って販売しているかもしれない。しかしブランドはそれでも商品を売り込まなくてはならないため、そこでの問題はどのような方法ならば正当といえるかということだ。多くのブランドは「グリーンハッシング(greenhushing)」、あるいはサステナビリティに関する取り組みへの一切の言及を避けるという方法をとっている。

間違った主張を避けるために、従うべき明確な指針はいくつかある。有用な経験則のひとつとして、たとえば生産工程や使用素材に関する情報を明確に開示し、透明性の優先に努めることが挙げられる。サステナビリティを主張する場合は、どんなものであれ検証可能なデータと詳細な説明によって裏付けられているべきだ。また消費者がウェブサイトやブログからこうした情報に簡単にアクセスできるようにしておく必要がある。

「企業によるグリーンウォッシュは、組織が縦割り型で、商品開発部門とマーケティング部門のあいだでの意思疎通が十分でない場合に起こりやすい」とモイトーソ氏は指摘する。

Bコープ(B Corp)やクライメート・ニュートラル(Climate Neutral)など、実績ある第三者機関からの認証を取得することも、マーケティングにおけるサステナビリティの主張に信頼性をもたらす。こうした認証機関は、特定の環境基準に準拠しているかどうかを評価する役割を担う。また、ブランドが使用する綿の生産元の認証を行う、エコテックス(Oeko-Tex)のような認証もある。

サステナビリティに向けた漸進的な取り組みや、マーケティングコミュニケーションにおいてブランドがつまずいている部分を率直に明かすことも、信頼性を高めるのに役立つ。たとえば、ベーシックアイテムを扱うオーガニック・ベーシックス(Organic Basics)は年次成果報告書を通じて、サステナビリティに関する改善点や目下の問題の両方を顧客に説明している。

ソーシャルメディアやeコマースでのコミュニケーションに関しては、明確さが鍵を握る。ブランドリセールプラットフォームのリキュレート(Recurate)でCEOを務めるウィルソン・グリフィン氏は「結局のところ、メッセージを明確にし、実際の取り組みを誇張しないことに尽きる」と語る。

ストーリーテリングに力を入れるエバーレーン



ファッションブランドのエバーレーン(Everlane)は、マーケティングにおけるグリーンウォッシュを避けるため、サステナビリティに関するストーリーテリングに力を入れている。この取り組みは同社が4月22日に発表した正式かつ化学的なインパクトレポートや、ブログ、ウェブサイトの商品詳細ページ、そしてTikTokへの投稿を通じて行われている。

エバーレーンでサステナビリティ担当責任者を務めるカティナ・バウティス氏は、「博士号を持っていなくても科学的裏づけや指標の妥当性が理解できるような方法で顧客に情報提供していく必要がある」と話す。「だが同時に情報を削りすぎて、自分たちが本気で取り組んでいる問題を軽視されるようなことも避けたい」。

バウティス氏によれば、ソーシャルメディアやブログでのグリーンウォッシュを避けることは可能であり、それには情報をブランドに関連する認証制度と結びつけ、大げさな主張をしないことが重要だという。

「何事にもある程度の根拠が必要だ」。

その一例としてエバーレーンは、「透明性の火曜日(Transparency Tuesday)」と題した一連の企画を実施しており、顧客やスタッフにブランドのサステナビリティ戦略がどのように商品に反映されているのかを問いかけている。この企画は「多大な反響があった」とバウティス氏は語る。

実際、同ブランドのサステナビリティに焦点を当てた投稿は、それ以外の投稿よりも反響が大きい傾向にある。今年はインスタグラムとTikTok向けに、サステナビリティに関する嘘を暴き、透明性の大切さを訴える教育的内容の短編動画を制作した。通常、同社のTikTok動画の平均エンゲージメント率は12%で、すでにファッション業界の平均である5.1%を大きく上回っているが、サステナビリティに焦点を当てたコンテンツのエンゲージメント率は24%を達成した。

加えて、エバーレーンのブログ「エバーワールド(Everworld)」においても、サステナビリティに関する記事はほかの記事に比べて2倍以上のコンバージョン率を達成しているとバウティス氏は言う。

[原文:How greenwashing became the fashion marketer’s biggest concern]

Zofia Zwieglinska(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:都築成果)