“激辛”で死亡事故も。子どもに辛いものを出す前に必ず確認しておきたい3つの事実
 辛い食べ物は、慎重に。

 こんにちは、食文化研究家のスギアカツキです。『食は人生を幸せにする』をモットーに、「一生モノの能力を養う食育」についてさまざまな実践法を提案しています。

 子どもの味覚に合わせて、大人の食事を我慢していることはありませんか? たとえば、「辛い食べ物」。子どもが食べられないという理由で、カレーは甘口、明太子はたらこにしているという家庭は少なくないでしょう。

 ではいったい、いつから食べさせられるようになるのでしょうか? 辛い食べ物が国民食になっている韓国、メキシコ、タイなどでは幼少期から食べるケースもあるようですが、「要は慣れでしょ!」とたかをくくって食べさせてよいものなのでしょうか?

◆“激辛”で子どもの死亡事故も……

 先日、やっぱり慎重になるべきだと痛感する報道がありました。

 それは、アメリカで流行した激辛チップスを食べる企画「ワン・チップ・チャレンジ」で当時14歳の少年が死亡。解剖の結果、高濃度のカプサイシンを含有した食品を摂取したことによる心肺停止であることが明らかになりました。やっぱり、甘くみてはいけないと痛感させられました。

 そこで私は冷静に、大人が子どもに辛い食べ物を食べさせる時期を慎重に判断するためのエビデンスを整理してみたいと考えました。特に2021年にノーベル医学・生理学賞を受賞した研究者によって発見された「辛み成分を感じ取るセンサー」の話などを筆頭に、判断材料として参考にしていただく3つの事実をご紹介していこうと思います。

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 そもそも「辛み」は、甘味や酸味などの他の味と比べて大きな違いがあります。それは、味覚ではなく、痛みであるという点です。

 この事実は、2021年のノーベル生理学・医学賞(カリフォルニア大学サンフランシスコ校のデビッド・ジュリアス氏とスクリップス研究所のアーデム・パタプティアン氏)によって広く知られるようになりました。

 受賞テーマは「温度受容体と触覚受容体の発見」。この研究によって唐辛子の辛味成分であるカプサイシンを感知するセンサーが発見され、私たちに改めて辛い食事について考えるきっかけを与えてくれました。

 つまり辛みについてのヒミツが一般に周知されるようになったのは、実は最近の話ということになります。

 研究内容の詳細はここでは省きますが、ここで確認したい事実は、辛みを感じるセンサーは、もともと“痛み”を知覚するセンサーであるということ。つまり、カプサイシンが口に入ると、刺激(電気信号)が味覚神経ではなく三叉神経を経て脳に届き、痛みや熱さを感じるのです。

 唐辛子の辛み成分「カプサイシン」は脂溶性(油に溶けやすい性質)の物質なので、口の中に入ると舌の組織内部まで浸透してきます。つまり、唐辛子料理を食べた後に急いで水を飲んで舌の表面を洗っても辛味はおさまりません。

 生まれた瞬間からトウガラシを好む赤ちゃんはほとんどいません。どの国においても親が少量から少しずつ増やしていくか、辛いものが苦手な子どもには強制をしないというのが慣習になっています。

 それでは大人が辛い食べ物を与えるタイミングを検討するために、次のポイントに移りましょう。子どもの神経回路は何歳頃までに完成するのでしょうか?

◆脳の神経回路は12歳頃にほぼ完成する

 東京都教育委員会が発行している手引き(※1)によれば、脳は出生直後から急激に発育し、4〜5歳までに成人の80%程度までにも重量を増やし、6歳で90%、 12 歳頃にほぼ100%まで発達します。

 この時期には神経系の発達が著しく、脳をはじめとしてさまざまな神経回路が作られる大切な時期ですから、神経回路に適切な刺激を与えて、脳をしっかり育てることが大切です。