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宗教虐待について国が初めて実施した調査の結果が公表されたことを受け、キリスト教系宗教団体「エホバの証人」の元信者らでつくる3団体が5月16日、こども家庭庁を訪れ、さらなる実態把握や宗教2世への支援などを求める要望書を提出した。

●国の調査で親の宗教に巻き込まれる子どもの存在が明らかに

こども家庭庁は2023年度、保護者が信仰する宗教を背景にした児童虐待の実態を把握するために児童相談所や学校などを対象に初めて調査を実施。今年4月にその調査結果を公表した。

要望書を提出した団体の関係者はこの日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで記者会見を開き、国の調査で子どもが宗教の布教活動に関与させられたり学校生活を制限されたりする事例が明らかになったことを説明した。

団体の1つ「JW児童虐待被害アーカイブ」代表の綿和孝さん(仮名)は、「こうした調査をしていただいたことは非常に評価している」とした上で、調査対象が限定されていることから「ぜひより大規模な調査をして実態をつかむようにしてほしい」と話した。

●宗教3世「信仰という理由で子どもの福祉を害してはいけない」

3団体が国に要望したのは以下の六つの柱。

▽(報告書で)提言のあった施策などについて、こどもまんなか実行計画に明記し、十分な予算措置を講じたうえで、速やかに実施すること
▽当事者への大規模な調査や子どもの回復に向けた支援策の検討を速やかに実施すること
▽子どもの権利侵害との判断が難しい子どもの搾取、制限などへの対応を実施すること
▽子どもの生命や健康、人格形成などに著しい悪影響を及ぼす偏った情報や価値観を子どもに教育することへの対応を実施すること
▽保護者による宗教の信仰等に起因する児童虐待の背景にある宗教団体への対応を実施すること
▽児童相談所とエホバの証人の医療機関連絡委員会との関係を断絶し、子どもの治療の決定に関与させないようにすること

3団体は上記の各項目についてより詳しい要望をまとめ、宗教に関する相談窓口を周知するためのポスター掲示やパンフレット配布を学校で実施することや、終末論などといった各宗教の独自の考え方や価値観を親が子どもに植え付けることへの対応などを国に求めたという。

エホバの証人の宗教3世で一般社団法人「スノードロップ」代表の夏野ななさん(仮名)は、「信仰という理由があっても子どもの福祉が害されてはならない」と述べた。