ライブドア(LD)事件で証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載など)の罪に問われた元社長、堀江貴文被告の第18回公判が25日、東京地裁(小坂敏幸裁判長)で開かれた。LDのメディア事業部の責任者だった伊地知晋一・元執行役員副社長と、出会い系サイトの責任者だった男性(32)が証人出廷し、2人とも架空売り上げの計上を認めた。

 検察側は9月4日の冒頭陳述などで、メディア事業部は04年9月期決算で、買収予定だった消費者金融「ロイヤル信販」から3億1500万円、出会い系サイト運営会社「キューズ・ネット」から1億3500万円の架空売り上げを計上したとしている。

 検察側の主尋問で、伊地知元副社長は04年9月期中に両社への仕事をしたことがないことに加え、仕事の交渉すらしたことがないことを認め、売り上げ計上について「不適切な部分はあると思う」と語った。堀江被告の関与に関しては、ウェブで行われる電子稟議(りんぎ)書が承認されていることから「堀江さんが承認ボタンを押したことになる」と述べた。

 一方、弁護側の反対尋問では、10月以降にポータルサイト「livedoor」にバナー広告を出したり、メニューを設けたと証言。両社からの売り上げ計上は04年8−9月に決まったことで、期ずれになるとの認識はあったが、「メニューを作ったし、バナー広告を出していた期間も長かった。(売り上げ計上額との)バランスは取れているし、それほどおかしいところはない」と語った。

 伊地知元副社長にとって堀江被告は直属の上司だったが、事件前には「部分的には尊敬できる」と思っていたという。尊敬できる部分は「慣例や前例に惑わされず、自分が正しいと思うことは相手がエスタブリッシュ(メント:既成の権力や体制)であっても立ち向かっていくところ」だとし、尊敬できないところは「女性関係」と述べた。

 紺のスーツに黄色いワイシャツ姿で証言台に立った伊地知元副社長は、被告人席の堀江被告を前に非常に緊張した様子で、小坂裁判長から何度も「もっと大きな声で話してください」「語尾をはっきり言ってください」と促されていた。

出会い系サイト運営会社の元担当者も粉飾認める

 この日の午前中には、ライブドア・ファイナンスで出会い系サイト運営会社「キューズ・ネット」の責任者を務めていた男性が証人として出廷した。

 検察側の主尋問では、04年6月にファンドを使って「キューズ・ネット」を買収後、LDFの上司にあたる中村長也被告=分離公判中=の指示により、LDの04年9月期第4四半期(7−9月)にメディア事業部への広告費を費用計上したと証言。期中にはメディア事業部との交渉や広告活動の実態がなく「いわゆる架空(取引)だったかなと思います」と述べた。

 また、同期のライブドア・マーケティング(当時はバリュークリックジャパン)への広告費など1億500万円の計上についても、期中に広告活動などは行われず、架空取引だったとの認識を示した。LDグループ全体への費用計上でみると、計8億8000万円になるとも語った。10月以降には一部作業が行われたが、通常は10分の1ほどの費用でできるとの見方も示した。

 ただ弁護側の反対尋問では、「一部が04年9月中に作業が行われたのではないか」との弁護側の質問に対して「2年前のことなので、(時期は)はっきり覚えていない」と発言。高井康行弁護士が「じゃあ、さっきの主尋問での証言もはっきりしていないことになるのか」と尋ねると、男性は「そうですね」と答え、傍聴席からは失笑がもれた。

 ファンドの出資元などについては、男性は「知らない」と答えた。

 また、尋問中に男性が証言台にひじをついたり、あごひげをいじっていたため、高井弁護士が「その手やめなさい。普通はそういう姿勢で証言する人はいないよ」と注意すると、男性は「普通は知りませんから」と反論する場面もあった。

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 小坂裁判長は25日、会計処理に関して専門家を証人に採用することを職権で決めた。尋問は11月21日、28日に行われる。

 次回公判は10月27日の予定。【了】

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