「客が怖い……」と離職する若手多数! タクシーよりも深刻なバス運転士不足の理由
この記事をまとめると
■タクシーよりも深刻な人手不足という問題を抱えているバス運営会社
■働き方関連法で業務時間が制限されて収入減になることを危惧して離職するバス運転士が多い
■新人の場合は客への対応やすべきことの多さから業務が怖くなりバス運転士を辞めるケースも目立つ
バスの運転士不足が解決しない
バスやタクシー運転士が不足しているという話題はよく聞いていると思う。しかし、単に新規募集をかけても集まらないというだけではなく、離職者もけっして少なくない。離職する理由はさまざまあるが、よくいわれるのが「稼ぎがよくない」ということ。とくにバス運転士は、タクシー運転士とは異なり、「歩合給」というものが存在しないからなおさらのようだ。
そして、ここへきて2024年問題。「いままでならば、たとえば“最終バス”まで運転士、車庫で休息を取ってから始発バスを運行して業務終了ということもあり、もちろん“手当”もつきましたが、2024年4月以降、つまり働き方関連法により時間外労働時間が厳しく制限されることとなり、前述したようなシフトでの乗務ができなくなるなど諸手当が減り、収入減につながるとされています。また、時間外労働が厳しく管理されることになれば、減便や路線廃止も目立って増えるともいわれており、乗務回数自体も減るのではないかとされています」とは事情通。
バスでも、とくに多くの乗客と日々接客する路線バスの運転士だと、仮に普通免許しかもっていなかった人が、「養成運転士」として入社して大型二種免許を取得し、社内のさまざまな研修を受けめでたく独り立ちするまでが順調でも、いざひとりでバスに乗って営業運行した際に、乗客との対応が「怖くなった」として辞めてしまうケースも目立っているという。
この「怖くなる」というのはストレートに、利用客との間で料金収受などで対応したり、停留所及び周辺施設の問い合わせ、そしてクレーム対応することに対し「怖く」なってしまうとのこと。
「怒鳴り散らすといった典型的なクレームもあるでしょうが、たとえば前扉乗車(おもに均一料金区間)の路線で乗車してきた乗客が『今日はずいぶんくるのが遅かったね』などと嫌味をいわれることはしょっちゅうあるようです。また、降車するときにはとくに高齢の乗客となりますが、停留所にバスが停車する前、つまり走行中に降車扉まで車内移動しようと動き出すことも多く(車内転倒事故防止の観点からもやめてもらうようにしている)、とにかく乗客が怖くなってしまうようです」(事情通)。
日本のバス運転士のプロ意識の高さが離職を後押ししている可能性
もうひとつの「怖い」は、バスの運転以外にやることが多すぎるということ。クルマだけではなく、自転車や歩行者なども多い複雑な交通環境となっている街なかでは、大きなバスを運転するだけでもかなりの重圧となる。それに加えて料金収受など、乗客にも対応しなければならず、とにかくやることが多くなっており「怖い」となってしまうようである。
そのような傾向もあるのか、東日本でとくに顕著なのだが、いままでの大型路線バスメインから中型路線バスへ運行車両を切り替える動きが目立ってきている。乗降客数の少ない路線も増えており、それも中型バスへの切り替えを目立たせているようである。
筆者はあえてプロドライバーを強調し尊敬を表すため「運転士」という表現を使っているが、世間では「運転手」として、自分より格下に見る人がじつに多い。そのような意識で接してくる乗客も多く、運転士への風当たりもことさらきつくなることが多い。
筆者が子どものころは怖くて声もかけられないような、「武闘派」とも表現できる運転士ばかりだったが、令和のいまでは世代交代で減少し、しかもそれはなかなか通用しない。
路線バスに乗ってここまで丁寧に運転士が接客してくれる国はまずお目にかかったことはないが(安心・安全に送り届けるのが最大のサービスであり業務だからという意識も大きいようだ)、それが裏目に出ることも多く、それが運転士の離職を後押ししてしまっているのかもしれない。