「30代女性は問題が多い」持論持つ彼の婚活の結末
やや古風な結婚観を持つ47歳男性。紆余曲折のすえ、彼が結婚したお相手とは?(イラスト:堀江篤史)
彼を知り己を知れば百戦殆からず。古代中国のことわざだ。現代日本の婚活においては、「結婚相手候補のニーズを知り、自分が求めるものと持っているものを知れば、良い結婚ができる」と言えるかもしれない。
「結婚するなら34歳までの女性」
「結婚するなら子どもは必須なので、子どもを産む気がある34歳までの女性としかお見合いしませんでした。できれば20代がよかったです」
やや古風な本音を口にするのは首都圏でネットベンチャー企業をほぼ1人で運営している河田道弘さん(仮名、47歳)。毎日筋トレしているというガッチリした体格で、体にフィットした黒いセーターとジーパン姿がよく似合う。素朴で話しやすい雰囲気だが、粘り強くしたたかな商売人の一面も持っているのだろう。最寄り駅から徒歩3分のところにあるシェアオフィスで、みかんを一緒に食べながら話を聞くことができた。
道弘さんは5年前に一回り年下の恵美さん(仮名)と結婚し、今は1歳の娘を一緒に育てている。結婚当時の恵美さんはちょうど30歳。道弘さんはほぼ有言実行したことになる。恵美さんは、道弘さんの会社の役員として仕事もときどき手伝っているが、基本的には専業主婦。道弘さんと同じく自営業の家庭で育った恵美さんには自然なことのようだ。お互いのニーズがマッチした夫婦だと言える。
ただし、道弘さんはこの結婚に行き着くまでにかなりの苦労と努力をしている。商売の道を究めるために大学を中退して、父親の友人が経営する大阪の会社で丁稚奉公。さらに東北にある父親の会社に入って10年間修業し、32歳のときに独立開業した。
「男は年収を上げれば結婚できると思って仕事に集中していました。20代で遊んだ記憶はほとんどありません。29歳のときに父の知人が経営している結婚相談所で10人ほどとお見合いをしたことはあります。でも、起業前だったこともあって私の本腰が入らず、どなたともご縁がありませんでした」
なぜかドタキャンやすっぽかしが頻発
会社が軌道に乗ってからは結婚を意識して、仕事や英会話スクール、異業種交流会で出会った女性たちと交際をした。このときから道弘さんの少し偏った女性観が形成され始める。
「当初は不慣れな私が拙速な行動をとったりして、相手の気持ちを害したりしていました。デートのドタキャンやすっぽかしをされても笑って許していたのでなめられていたのかもしれません。私の行動が変わっても、30代の女性はドタキャンなどのトラブルが多かったです。20代の女性にはそういう問題はありませんでした」
と言いつつ、20代女性とも交際が長続きしなかった。40歳になったときに、実家の父親から「結婚はどうするんだ!」と強く迫られた。
「父は当時70歳。この年で孫がいないとは思わなかった、お前は何を考えているんだと叱られました。私には弟が2人いますが、上はバツイチ独身で、下は結婚していますが子どもはいません」
父親を尊敬しつつも対抗心もある道弘さん。「わかった。2年以内には結婚してみせる」と宣言。以前に入っていた結婚相談所に再登録し、結果が出ないとわかると大規模なデータマッチングが可能な相談所に変更した。ここで道弘さんは苦い経験をする。
「30代以降の女性はトラブルが多い」という自分統計
「年収750万円ほどになっていた私が相手に求めたのは、34歳までで子どもを産む気があることだけです。自分から積極的に申し込んで、50人とお見合いして15人とは仮交際に進みました。そのうち30歳以下は6人で、31歳から34歳までが9人です」
相手から断られたことが多かったが、問題はその断り方だと道弘さんは強調する。
「仮交際に進んだのに連絡が取れないとかドタキャンを繰り返すなどの問題行動をした人が7人もいたんです。そのうち6人が30代でした!」
よほど悔しい思いをしたのだろう。道弘さんは顔を紅潮させて語気を強める。この経験で道弘さんは「30代以降の女性はトラブルが多い」という自分統計に確信を抱き、さらに「大手の相談所やアプリなどでのデータマッチングは自分に合わない」とも感じた。そして、父親の友人が経営する相談所に3度目の登録をした。
「昔ながらのやり方をしているところで、その男性の知人の子弟しか登録できません。年齢や学歴、家族構成などの必要最小限の情報が載った釣書が郵送で送られてきます。月会費はありませんが、お見合い料は2万円で成婚料は50万円です。仮交際といった概念はなくて、お見合いして双方がいいと思ったら結婚に向けて交際を深めます。仕事でも数より質を重視する私には合う仕組みだと改めて思いました」
そこで出会えたのが恵美さんだった。12歳年下の30歳。道弘さんとしては何の文句もない。
「会ってみたいと言ってもらい、すぐに彼女が住む京都に会いに行きました。2カ月後には東京でプロポーズし、さらに2カ月後に結婚。今日に至るまでドタキャンなどの問題行動はありません」
恵美さんも道弘さんと同じく3人きょうだいの一番上で、大学卒業後は会社員を経て、家業の事務と現場の両方で働いていた。仕事観や家族観が道弘さんと近いのだ。
「なぜ私と結婚したのかは詳しく話したがりません。でも、『妥協せずに結婚できた』とは言ってくれています。頭がいい人なので、私の会社の手伝いも上手です。戸建て派で、お受験のように子どもに無理やり勉強させようとは思わないところも私と似ています」
満足そうな道弘さんの結婚に学ぶこと
満足そうな表情を浮かべる道弘さん。「料理と育児は妻に任せている」と言いつつ、自分の家事分担も増やしている。子どもが動き回るようになった現在はシェアオフィスに「出勤」する日も減らして在宅勤務。3人家族の幸せを堪能している。
自分がアラフォー独身だったのに「30代以降の独身女性は問題行動が多い」と断じる道弘さんに筆者は共感できない。むしろ、そのような偏見を持った道弘さんの態度が相手の「問題行動」を引き起こしている可能性があると思う。
ただし、自分自身が結婚相手に何を求めているのかをしっかりつかみ、地道な努力と果敢な行動を重ねたことは素晴らしい。現在の道弘さんの幸福に直結しているとも感じる。
ドタキャンしない、子どもを作って家庭を守る――。10代20代だった頃の道弘さんの周辺にもいたはずの女性像だが、当時の道弘さんはその価値に気づかなかったのだろう。回り回ってでも己を知ってその理想に辿りつくことが、現代人の成功と言えるのかもしれない。
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(大宮 冬洋 : ライター)