大谷翔平選手の元通訳・水原一平さんが陥った「ギャンブル依存症」 治せる? なりやすいタイプも専門家に聞いた
米大リーグ「ロサンゼルス・ドジャース」所属の大谷翔平選手の通訳を務めていた水原一平さんが、球団から「大規模な窃盗」の疑いで解雇されました。日米の複数メディアによると、水原さんが違法なスポーツ賭博に関与し、米連邦捜査局(FBI)の捜査で、大谷さんの口座から違法賭博業者へ6億円超が流出していることが判明したということです。違法なスポーツ賭博に関与した原因について、水原さんは「ギャンブル依存症」であると説明しました。そこで「ギャンブル依存症」はどのような病気なのか、なりやすいタイプ、治療法などについて精神科専門医の田中伸一郎さんに聞きました。
“ギャンブル依存症”の治療法は「考え方を修正」 なりやすいタイプは…
Q.「ギャンブル依存症」とは、どのような病気なのでしょうか。
田中さん「一般的に言われている“ギャンブル依存症”は、古くは病的賭博として知られてきましたが、10年ほど前からアルコール依存症、薬物依存症などと同じカテゴリーに分類されるようになりました。
なお、近年、精神医学関連の病名が目まぐるしく変化していて、最新のアメリカ精神医学会の病名では『ギャンブル行動症』、国際疾病分類の病名では『ギャンブル症』と呼ばれています。
“ギャンブル依存症”の診断基準を列挙すると、(1)生活の中でギャンブルが最優先となる。(2)興奮を求めて賭け金が増える。(3)止めようとしても止められない。(4)ギャンブルをしないと落ち着かない。(5)負けを取り戻そうとする。(6)勝ちを次に注ぎ込んでしまう。(7)うそをついたり借金したりするという7項目になります」
Q. “ギャンブル依存症”になりやすい人はどんなタイプなのでしょうか? 理由も教えてください。
田中さん「“ギャンブル依存症”はギャンブルをする人の中から発生してくるという事実があります。従って、“ギャンブル依存症”のリスク因子としては、若年からギャンブルを始めること、身近にギャンブルをできる環境があること、その他、男性、ストレス発散が苦手なこと、精神障害の併存などがあります。ちなみに、併存しやすい精神障害としては双極性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、発達障害などが挙げられます」
Q.“ギャンブル依存症”は治るのでしょうか? 治療ではどのようなことをするのでしょうか。
田中さん「“ギャンブル依存症”は、必ず治ると断定するのが難しいのですが、治療として患者さんと一緒に取り組んでいけることはたくさんあります。
まず、前提となるのは、患者さん本人と家族に対する心理教育です。大事なのは、患者さんと家族にギャンブル依存症がどういう病気であるかを説明し、心理社会的支援・治療について理解してもらうことです。その際、家族には本人のためを思って債務処理をしてしまわないように取り決めることが重要となります。なぜなら、経済状況がリセットされると、ギャンブルを再開してしまう可能性が高まるからです。
それから、“ギャンブル依存症”のための回復トレーニングプログラムに参加したり、定期的にミーティングを行う自助グループに参加したりすることが治す力となるでしょう。
他にも、ギャンブルに対する考え方(過度な期待)を修正したり、ストレス発散の新しい方法を探したり、人生を振り返りつつ、新しい行動パターンを身に付けたりする目的で、カウンセリングが行われます」