子どもを「賢い子」にするためには……(『のびる子はやっている最大効果を出す 小学生の勉強法』より)

コロナ禍やICTの普及により、小学生の学習環境は大きく変化しています。かつての常識は通用しなくなり、親世代も戸惑うことばかりです。AI化やグローバル化が進む時代では、「自分から勉強する」主体的な子どもに育ってほしいと願う親御さんも多いでしょう。全国の保護者の方の悩みを聞き、子どもたちを直接指導してきた石田勝紀さんの著書『のびる子はやっている最大効果を出す 小学生の勉強法』より、主体的な学習者を育てるための具体的な方策を一部抜粋、再構成してお届けします。

言葉攻めでは、子どもは勉強しない

親世代とは大きく変わった現代の小学生の勉強事情。AIやグローバル化に対応できる能力を育てる学習指導要領に戸惑う保護者の方も多いのではないでしょうか。親世代がやってきた勉強方法そのままでもよい部分もあるし、新しい時代に対応した学び方も知る必要があります。

では、私たち親世代も学校の先生や親から、家庭学習の方法や学び方をくわしく教わったことがあるでしょうか? ほとんどないと思います。実は、この状況は今でもほとんど変わりません。子どもたちは自分で勉強する方法を知らないのです。方法を知らずに「勉強しろ」と言われても、やる気は出ません。

これからの子どもたちに特に必要となるのは「思考力(考える力)」です。これには「問題解決」「発見力」「創造力」「論理的・批判的思考力」「メタ認知・適応的学習力」などが含まれます。

これらの力を身につけていくためには、土台作りが必要になります。


(『のびる子はやっている最大効果を出す 小学生の勉強法』より)

賢い子とはどういう子なのか


(『のびる子はやっている最大効果を出す 小学生の勉強法』より)


(『のびる子はやっている最大効果を出す 小学生の勉強法』より)

「疑問を持つ力」と「まとめる力」

勉強法について解説する前に、「賢い子」とはどんな子どもなのか考えてみます。

「賢い子」とは「考える力」を持っている子です。そして、「考える力」とは、具体的には「疑問を持つ力」と「まとめる力」の二つを指します。

まず、「疑問を持つ」とは、「なぜ?」や「どうする?」という疑問を持つことです。わからないからその答えを考えたり調べたりすることで思考力が高まり、新しい知識を身に付けていきます。ただ機械的に覚えただけの知識に比べ、疑問を解決するために興味関心をもって身に付けた知識は、しっかりと記憶されます。

次に「まとめる力」とは、高い所から俯瞰して物事を見る力です。上から俯瞰的に見ることで、共通点や、違いを見出すことができます。過去に学習した内容との共通点や違いが見えてくると、効率的に学習が進みます。「賢い子」は、共通点を見出すのが速いので、過去に学習したことを適用することができ、一般的に全教科できることが多いのです。


(『のびる子はやっている最大効果を出す 小学生の勉強法』より)

そして、「賢い子」こそ、21世紀型能力でも重要視されている「思考力」を身に付けた子どもなのです。

子どもを「賢い子」にするために、つまり「疑問を持てる子」、「まとめることができる子」になるようにするためには、日常の子どもとの対話が重要です。

日常生活の中で、「なぜだろう?」「どう思う?」「どうしたらいい?」と問いかけてあげることです。周囲の大人が問いかけてあげることで、考える習慣がだんだんついてきて、子どもが自然と自分から疑問を持つようになります。

また、「要するにどういうこと?」と聞いてあげることでまとめる思考を促すことができます。

子どもの頭脳が進化する「魔法の言葉」

賢い子とは、自分で考え、疑問を持つ力、自分の考えを言葉で表現する力、抽象的な概念を理解し、具体例を挙げられる力を持っている子です。これらの力を育むために、日常会話の中で以下の魔法の言葉を活用しましょう。

〇疑問を育む言葉

「なぜ?」「どうして?」「どんな理由があると思う?」

これらの言葉は、子どもの好奇心を刺激し、自ら考えようとする意欲を高めます。


ねえねえ、この虫ってなんでこんな色なの?
車が空を飛べないのはどうして?
友達と喧嘩したんだけど、どうやって仲直りすればいいと思う?

〇 自己表現を育む言葉

「どう思う?」「どんな気持ち?」「自分の言葉で説明してみよう」

これらの言葉は、子どもの思考力と語彙力を高め、自分の考えを相手に伝えようとする力を育てます。


今日の給食、どうだった?
この絵、どんな気持ちで描いたの?
この文章の意味、自分の言葉で説明してみよう

〇 問題解決力を育む言葉

「どうしたらいいと思う?」「他にどんな方法がある?」「一緒に考えてみよう」

これらの言葉は、子どもの問題解決能力と創造性を高め、困難な状況にも積極的に取り組む姿勢を育てます。


宿題で困ったことがあったら、どうしたらいいと思う?
部屋が散らかっているんだけど、どうしたら片付けられるかな?
テストの点数が悪かったんだけど、他にどんな方法で勉強すればいいと思う?

〇抽象化と具体化を促す言葉

「つまり何が言いたいわけ?」「どんな例がある?」「共通点は何?」
これらの言葉は、子どもの論理的思考能力を高め、抽象的な概念を理解し、具体例を挙げられるようにします。


この漫画、何が言いたいんだかよくわからないんだけど、どう思う?
この歴史上の人物って、どんな人だったと思う?どんな例がある?
この図形とあの図形、どんな共通点がある?

以上のような魔法の言葉の効果を高めるためには、以下のような使い方のポイントがありますので覚えておきましょう。

・子どもの年齢や理解度に合わせる
・答えが出なくても焦らない
・楽しく会話しながら使う
・無理強いしない
・全部の言葉を使う必要はない

これらの魔法の言葉を毎日少しずつ使うことで、子どもの頭脳はどんどん進化していくでしょう。

親子で楽しく会話しながら、賢い子に育てましょう。魔法の言葉は、子どもの頭脳を高めるだけでなく、親子間のコミュニケーションを円滑にする効果も期待できます。

ぜひ、今日から魔法の言葉を活用して、親子で楽しい時間を過ごしながら、子どもの成長をサポートしましょう。


(石田 勝紀 : 教育デザインラボ代表理事、教育評論家)