「虚血性心疾患で突然死」する前兆となる初期症状はご存知ですか?医師が解説!
虚血性心疾患で突然死する前兆にはどんな症状がある?Medical DOC監修医が虚血性心疾患で突然死する前兆・発症しやすい人の特徴・原因・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
≫「虚血性心疾患の前兆となる初期症状」はご存知ですか?発症しやすい季節も解説!監修医師:
佐藤 浩樹(医師)
北海道大学医学部卒業。北海道大学大学院医学研究科(循環病態内科学)卒業。循環器専門医・総合内科専門医として各地の総合病院にて臨床経験を積み、現在は大学で臨床医学を教えている。大学では保健センター長を兼務。医学博士。日本内科学会総合専門医、日本循環器学会専門医、産業医、労働衛生コンサルタントの資格を有する。
「虚血性心疾患」とは?
虚血性心疾患は、動脈硬化や血栓などによって心臓の冠動脈が狭くなったり、閉塞したりすることで、心臓の筋肉へ血液がいかなくなることで起こる病気です。狭心症や心筋梗塞などが虚血性心疾患に分類されます。狭心症は、冠動脈が動脈硬化などにより狭まり、心筋に十分な血液供給ができなくなり、それによって胸部に痛みが生じる状態です。一方、心筋梗塞は、血管内のプラークが破れ、血栓が形成されることで冠動脈が閉塞します。心筋梗塞では、壊死した部分が拡大すると生命に危険が及ぶ可能性があり、早急な治療が必要となります。
虚血性心疾患で突然死する前兆
虚血性心疾患によって突然死する場合もありますが、その前兆として初期症状が出ることが多いです。この章では虚血性心疾患で突然死する前兆の初期症状について解説します。
運動で胸が痛くなる
虚血性心疾患では、運動など負荷がかかっていると、胸の痛みが出たり、圧迫感を感じやすくなったりします。これは血流量が安静時よりも運動時の方が必要になることが原因です。このような症状がある場合はなるべく安静にし、できるだけ早めに内科、特に循環器内科を受診するようにしましょう。
胸や肩の痛み
虚血性心疾患では、胸や肩の痛みを生じることがあります。その他にも歯に痛みを感じることもあります。数分程度で治まることもありますが、痛みを繰り返したり、数分以上続いたりする場合は、できるだけ早めに内科や循環器内科を受診するようにしましょう。
虚血性心疾患で突然死する原因
虚血性心疾患は突然死の原因となることがあります。この章では、虚血性心疾患で突然死する原因について解説します。
心筋梗塞
心筋梗塞は、心臓の筋肉に血液を供給する冠動脈が血栓等によって閉塞し、心筋が壊死してしまう病気です。心筋が壊死すると、心臓のポンプ機能が低下し、場合によっては心停止に至り、突然死を引き起こします。特に、激しい胸の痛み、強い圧迫感や締め付けられるような痛みがあり、数分以上続く。また、息苦しいため、呼吸ができない、意識がなくなる、ぼんやりする場合は、一刻も早く救急診療科や循環器内科を受診するようにしましょう。
虚血性心疾患
虚血性心不全は、心臓から送り出される血液量が少なくなったり、末梢血管から心臓に血液が戻る力が弱くなったりする状態です。症状は息切れや疲れやすい、倦怠感、浮腫などがあります。虚血性心不全で突然死することは多くありませんが、虚血性心不全の原因は動脈硬化や高血圧であり、心筋梗塞と共通するものもあります。そのため、虚血性心不全の状態に心筋梗塞が合併すると、突然死に繋がる恐れがあります。息切れなどの症状があれば、一刻も早く救急診療科や循環器内科を受診するようにしましょう。
致死性不整脈
致死性不整脈は、緊急での治療を要する危険な不整脈です。心室細動や心室頻拍も致死性不整脈であり、発症後すぐに意識がなくなったり、突然死の引き金になったりすることもあります。この場合も一刻も早く救急診療科や循環器内科を受診する必要があります。
虚血性心疾患を発症しやすい人の特徴
虚血性心疾患は生活習慣と密接に関係しています。特に、高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙は虚血性心疾患の危険因子ですが、改善可能な危険因子です。この章では、これら危険因子が虚血性心疾患を引き起こす理由を解説します。
高血圧
高血圧によって、血液が血管壁に与える圧力が高くなり、血管の壁は厚く、硬くなります。高血圧が長い間持続すると、血管は狭くなり、閉塞してその先に充分な血液が届かなくなります。これが虚血性心疾患の原因となるため、高血圧の方は注意が必要です。
脂質異常症
血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質異常は、動脈硬化の原因となります。
特に、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や中性脂肪が多い、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が少ない状態は、虚血性心疾患のリスクを高めます。
糖尿病
糖尿病は動脈硬化になりやすく、高血圧や脂質異常症も合併することが多いです。そのため、糖尿病があると冠動脈の血液量が十分でないため、虚血性心疾患の状態になります。
喫煙
タバコはそれ自体も動脈硬化の原因になりますが、タバコによって高血圧や糖尿病などの状態が悪化する場合もあります。このような相乗効果によって、喫煙は虚血性心疾患のリスクになります。
すぐに病院へ行くべき「虚血性心疾患で突然死」
ここまでは虚血性心疾患で突然死について紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
胸の痛みが続く場合は、救急科へ
胸の痛みが続く場合は心筋梗塞を疑う状態です。心筋梗塞は一刻も早い対応が必要であり、早期発見と早期治療が予後に影響します。くれぐれもいずれ治るだろうと放っておかずに、症状があれば救急外来を受診するようにしましょう。
受診・予防の目安となる「虚血性心疾患で突然死」のセルフチェック法
・運動時の胸の痛みがある場合
・胸の痛みが続く場合
・胸の圧迫感がある場合
虚血性心疾患を予防する方法
食事を見直す
高血圧や脂質異常症、糖尿病はいずれも食生活の見直しが重要です。例えば、塩分摂取は1日6g未満にしたり、脂質の多い食事を控えるたりすることが挙げられます。エネルギー、たんぱく質、脂質、糖質(炭水化物)、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を適正量かつバランスよく摂取するようにしましょう。ただし、栄養状態によって、適切な食事管理は異なります。主治医や栄養士に相談すると安心です。
禁煙する
タバコはさまざまな病気の原因になります。自分一人で禁煙できる方はいますが、タバコを辞められない方は少なくありません。禁煙は、ニコチン依存症という病気として医療機関で治療することが可能です。貼り薬や飲み薬によってニコチンの依存作用を抑える薬物療法があります。自分一人で禁煙するよりも、効果的に禁煙することが可能といわれています。禁煙していてもタバコを吸いたくなる方は、禁煙外来を受診してみると良いでしょう。
運動習慣をつける
運動はさまざまな病気の予防に有用で、虚血性心疾患でも運動は良いとされています。規則的な運動はもちろん、日常生活での身体活動も、虚血性心疾患の発生およびそれによる死亡を減らすことは、多くの研究から証明されています。特に、ウォーキングや軽いエアロビのような有酸素運動がよいとされています。具体的には、少し汗をかいて、会話をしながら行える程度の運動が適しています。いきなり毎日何時間も行うのではなく、続けることを意識して短い時間から運動習慣をつけるようにしましょう。
「虚血性心疾患で突然死」についてよくある質問
ここまで虚血性心疾患で突然死などを紹介しました。ここでは「虚血性心疾患で突然死」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
虚血性心疾患で突然死するのはどんな時に多いですか?
佐藤 浩樹 医師
運動中や、強い身体的な負荷がかかった時に、胸の前部に圧迫感を感じたり、痛みを感じたりすることがあります。このように虚血性心疾患は前兆があることが多いですが、前兆なく発症して突然死を引き起こすこともあります。
虚血性心疾患で突然死する方の割合は多いのでしょうか?
佐藤 浩樹 医師
急性心筋梗塞を発症した患者さんのうち、13%の方が病院への搬送途中に死亡していることから、虚血性心疾患で突然死する方は少なくないと言えると思います。一方、狭心症が原因で突然死する割合は少ないです。
編集部まとめ
虚血性心疾患は突然死の原因として知られており、早急な対応が必要です。その前兆となる症状があれば、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。また、虚血性心疾患の原因を知り、それらを避けるための日常生活を送るため、適度な運動習慣、適切な食事、禁煙を心がけましょう。
「虚血性心疾患で突然死」と関連する病気
「虚血性心疾患で突然死」と関連する病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器科の病気
狭心症心筋梗塞急性心不全慢性心不全不整脈心房細動
心房粗動心室細動
心室頻拍
糖尿病内科の病気
糖尿病虚血性心疾患はさまざまな要因が危険因子となるため、その要因は他の病気を引き起こします。例えば、動脈硬化は虚血性心疾患の主な原因ですが、それはさまざまな臓器へ影響します。
「虚血性心疾患で突然死」と関連する症状
「虚血性心疾患で突然死」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
呼吸とともに胸の痛みが変動する
胸を押すと痛い
息が苦しい
運動時に胸が痛くなる
吐き気や嘔吐がある
歯が痛くなる
背中が痛くなる
虚血性心疾患はさまざまな症状を訴えます。時には歯の痛みが心筋梗塞に関連していることがあります。また、心臓の近くには肺や気管支、肋骨など他の臓器もあるため、似た症状でも鑑別が必要な場合があります。
参考文献
国立循環器病研究センターHP
日本心臓財団HP