「膵臓のMRI検査」で「膵臓がん」を早期発見できるの?検査費用も医師が解説!

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膵臓がんを早期発見できる可能性がある、膵臓のMRI検査とは?Medical DOC監修医が検査結果の見方や検査内容などを詳しく解説します。

≫「膵臓がんを発症すると感じる痛みの場所」はご存知ですか?初期症状も解説!

監修医師:
木村 香菜(医師)

名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

膵臓のMRI検査とは?

膵臓のMRI検査は、膵臓の病気を非侵襲的かつ高精度に評価するために重要な手段となりつつあり、膵臓がんなどの病気の早期発見や詳細な診断が可能となり、体への負担も少ない検査です。
本記事では、膵臓MRIとはどのようなものか、そして膵臓に関して何がわかるのかについて、詳細に解説していきます。

膵臓のMRI検査とはどんな検査?

膵臓MRI検査は、MRI(magnetic resonance imaging:核磁気共鳴法)を使って膵臓の状態や病変がないかを調べる検査です。
強い磁場が発生しているトンネルのような装置の中で、電波を体に当て、体の内部のさまざまな方向からの断面像を撮影していきます。CTやレントゲンと異なり、被曝は生じないという利点があります。
一方、検査時間は15~45分とCTなどより長くかかります。また、強力な磁場を用いるために、刺青をしている場合や、MRI不対応のインプラントなどの金属が体内に入っている場合には検査ができない場合があります。
膵臓のMRI検査では、さまざまな方向から、複数の条件で画像を撮影していきます。膵臓の他にも膵管や胆管という管の構造について、MRCP(MRcholangiopancreatography)という撮像方法を用いて調べることができます。さらに、造影剤を点滴で注入しながら、ダイナミックMRI画像というものも撮像する場合があります。これによって、膵臓そのものにできた病気や膵管や胆管の病変についても詳しく調べることが可能です。 CT結果では病変の性状は詳しくわからないこともあります。しかしながら、MRIではより詳細な病変の状態を調べることができるという利点があります。

膵臓のMRI検査を受けると膵臓がんや膵臓の健康度がわかる?

膵臓の検査にはエコーやCT、血液検査がありますが、膵臓がんは早期の段階では見つけにくいことがあります。一方、膵臓のMRI検査では膵臓がんが疑われるような腫瘍性病変も検出することが可能です。また、脂肪の特徴的な信号をMRIで描出することが可能なので、どれくらい膵臓が脂肪に置き換わってしまっているかも調べることができます。
膵がんによって膵管が詰まったり、その他の原因で慢性的な膵臓に炎症が起こったりすることによって、膵臓が線維化、つまりカチカチに固くなり機能を果たせなくなることがあります。MRIはこの線維化の評価を行うこともできます。

膵臓のMRI検査費用は?

MRIの検査費用は、参考になりますが以下のようになります。
・造影剤を使わない場合
約26,000円健康保険加入者で3割負担の場合は約7,800円
・造影剤を使う場合
約35,000~42,000円健康保険加入者で3割負担の場合は約10,500~12,600円

膵臓のMRI検査前日や当日の注意点

膵臓のMRI検査を受ける際の注意としては、検査の3時間前からは食事は禁止です。これは、造影剤を使用するかどうかに関わらず必要となります。
また、MRI検査を受ける際には、金属類を身につけていると発熱や装置の破損につながる危険があるので、全て外すようにします。心臓ペースメーカーや埋め込み型除細動器、人工内耳、補聴器などの医療機器をつけている場合には、MRI検査によって誤作動する可能性があるので、あらかじめ主治医に確認しましょう。

膵臓のMRI検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見

ここまで膵臓のMRI検査について説明をしました。
再検査・精密検査を受診した方が良い場合もあるので、しっかりと検査の結果を確認しましょう。。

膵臓のMRI検査結果の見方と主な所見

・異常所見なし
今の所、膵臓MRIでは特に異常が見つからない状態です。膵炎や膵癌のリスクとなるような大量飲酒などに気をつけ、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。

・膵腫瘍
膵臓がんなどの悪性の腫瘍や、良性の腫瘍が膵臓に認められることがあります。

・嚢胞性病変
嚢胞といって、水や血液などの成分が含まれる袋のような病変がある状態です。

・膵萎縮
膵臓の大きさが通常よりも小さくなっている状態です。もともと小さい人もいますが、慢性膵炎などで膵臓が萎縮している場合には、膵臓の機能である膵液の分泌や、膵臓が作るインスリンなどのホルモン分泌能力が低下していることもあります。

・膵腫大
膵炎や腫瘍によって、膵臓のサイズが正常よりも大きくなっていることがあります。膵炎の場合には、膵臓の周りの組織も影響を受けていたり、液体が溜まっていたりすることがあります。

・膵管拡張
膵臓が作った膵液を十二指腸まで送るための管が膵管です。これが、腫瘍や膵石などで詰まると、膵管が拡張することがあります。また、慢性膵炎や自己免疫性の膵炎でも膵管が拡張することがあります。

膵臓のMRI検査の再検査基準と内容

健康診断や人間ドックのオプションなどで受けた膵臓MRI検査に異常がでた場合には、再検査を受けることが必要です。CTやMRI、ERCPなどの検査を受けられる、総合病院の消化器内科を早めに受診するのがよいでしょう。
検査内容としては、採血やCT、超音波検査、そしてMRCPやERCP(造影剤を用いて、膵管や胆管の様子を透視下で調べる検査)を行うこととなります。
検査の費用は、保険適応となりますので3割負担になることが多いかと思います。
もしも悪性腫瘍である場合には、手術などそれぞれの病気に合わせた治療が行われます。

膵臓のMRI検査で発見できる病気

ここではMedical DOC監修医が膵臓のMRI検査で発見できる病気・疾患について解説します。

膵臓がん

膵臓がんの多くは、膵臓の中にある膵管(すいかん)から発生します。膵臓がんは早期の段階では症状が出にくく、早期発見は困難です。進行すると、腹痛や背部痛、食欲低下、お腹が張る感じ、そして黄疸(おうだん)という目の結膜や皮膚が黄色くなる症状、または急に糖尿病になることもあります。
膵臓がんのリスクとしては、血縁者に膵臓がんの人がいることや、ある特定の膵腫瘍を持っていること、糖尿病や慢性膵炎、喫煙、飲酒、肥満などが挙げられます。
頑固な腹痛または背部痛、さらに食欲低下や体重減少などがあれば、まず消化器内科を受診しましょう。膵癌の治療法としては、切除可能な段階であれば手術が行われます。一方、病変が大きかったり、周りに広がっていたり、あるいは他の臓器に転移している場合などには、化学療法を併用していくことになります。

膵腫瘍

膵臓には、膵臓がんの他にも腫瘍(良性あるいは悪性のできもの)ができることがあります。膵臓のMRI検査では、特徴的な影として発見できることもありますが、膵臓がんと区別がつきにくいものもあります。
膵臓にできる腫瘍としては、神経内分泌腫瘍(しんけいないぶんぴつしゅよう:NEN)や、膵管内乳頭粘液性腫瘍(すいかんないにゅうとうねんえきせいしゅよう:IPMN)などがあります。NENの場合には、インスリンやセロトニンなどのホルモンを過剰に作るタイプのものがあり、ホルモンによる症状として、低血糖症状や、皮膚の赤みや下痢などがでるといった、それぞれの腫瘍に特徴的な症状が現れることがあります。
NENの治療としては、手術や薬物療法も有効なものがあります。
一方、IPMNの場合、一部に膵臓がんになりやすいものがあり、手術が推奨される場合もあります。
いずれにしても腹部膨満感や、何らかの体の不調がある場合には、万が一を考え、まずは内科を受診するようにしましょう。

膵嚢胞

膵嚢胞(すいのうほう)は、膵臓の中や外側にできる袋のようなもののことで、よほどの大きさがない限り症状はなく、CT検査やMRI検査、エコー検査によって偶然発見されることが多い病気です。また、膵炎などが起こったあとに、嚢胞ができることもあります。
袋の壁が薄く、中身が水であることが画像的にわかっているような場合には、大きさを経過観察していくことになります。一方、数が多かったり、壁が分厚かったりするような場合には、先に述べたIPMNなどの可能性もあるため、治療が必要となる場合もあります。

膵炎

膵臓に炎症が起こった状態のことを膵炎といい、急性膵炎と慢性膵炎に大きく分けることができます。
急性膵炎の場合は、急に上腹部痛や圧痛が生じます。検査データ上は、膵酵素が血液中または尿中の値が高くなったり、超音波検査やCT、MRIといった画像検査で膵臓が腫れていたり、まわりの脂肪などの組織にも炎症が及んでいたり、あるいは周りに液体が溜まっているなどの所見が認められた場合に、膵炎を疑います。急性膵炎の原因としては、アルコールの多飲や胆石が多くみられます。重症化すると、ショック症状などの命に関わることもありますので、放置は禁物です。治療は、絶飲食と十分な量の輸液の点滴を行います。急性の腹痛が生じた場合、早めに消化器内科を専門とする医療機関を受診するようにしましょう。

「膵臓のMRI検査」についてよくある質問

ここまで精密検査について紹介しました。ここでは「膵臓のMRI検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

膵臓がんはMRI検査を定期的に受けていれば早期発見できますか?

木村 香菜 医師

MRI検査を定期的に受けることで、早期の段階で膵臓がんの他、膵臓にできる様々な病気を発見することができる可能性は高まると考えられます。

膵臓がん検診(MRCP)には上腹部のMRI検査が含まれますか?

木村 香菜 医師

MRCPとは、MRIを用いて膵管や胆管を描出する検査のことです。膵臓がん検診には、上腹部のMRIにMRCPも付帯していることが多いかと思います。

膵臓のMRI検査はどれくらいの頻度で受けるのが良いですか?

木村 香菜 医師

膵臓に嚢胞などの所見がある場合には、半年から1年ごとにMRI検査を受けるようにしたほうが良いでしょう。異常なしの場合でも、膵癌になったことがある人が家族にいるような場合には1年に1回程度のMRI検査を受け、経過観察をしましょう。

膵臓のMRI検査時間はどれくらいかかりますか?

木村 香菜 医師

膵臓のMRI検査の所要時間としては、前後の着替えなどの時間を含めて20分から1時間程度かかると思っておけばよいでしょう。

まとめ 膵臓MRI検査で膵臓がんを早期発見

今回の記事では、膵臓MRI検査でどのような病気がわかるのか、またどのように検査を行なっていくかなどについて解説しました。
膵臓がんは早期発見が難しいがんですが、MRIによって早期発見できる可能性があります。膵臓がんの方が家族にいる方など、リスクが高いような場合には、膵臓MRIをぜひ活用してみるとよいでしょう。

「膵臓のMRI検査」の異常で考えられる病気

「膵臓のMRI検査の異常」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器系の病気

膵嚢胞

膵嚢胞性腫瘍

膵臓がん

膵腫瘍

急性膵炎慢性膵炎自己免疫性膵炎

膵臓MRI検査を受けることで、このような膵臓の病気がわかる可能性があります。人間ドックのオプションなどで異常が見つかった場合、経過観察で良いこともありますが、もしも精密検査や受診が必要だと判定された場合には、消化器内科を受診するようにしましょう。

参考文献

[日本臨床検査医学会]膵臓の疾患

[がん情報サービス]膵臓がんについて

[日本肝胆膵外科学会]急性膵炎と慢性膵炎