【闘病】大量出血の原因は子宮体がん一歩手前…『子宮内膜異型増殖症』を知ってほしい

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子宮体がんの一歩手前と言われる「子宮内膜異型増殖症」と診断され、子宮全摘出術を経験したナオミさん(仮称)。強い症状を感じつつも、数年間病名が分からないまま不安な日々を過ごされていました。「がん検診へ行ってほしい」と訴えるナオミさんは、どんな闘病期間を過ごされたのでしょうか? 当時の様子から現在に至るまでお話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年12月取材。

体験者プロフィール:
ナオミさん(仮称)

夫と4人の子どもを持つ40代の女性。以前から月経周期の乱れや出血過多が気になり、2019年にがん検診を受けたところ、子宮内膜がんが偽陽性と判定、総合病院を受診。2019年2月に「子宮内膜異型増殖症」と診断され、がんのリスクを考慮して子宮全摘出術を選択。術後の細胞診検査の結果、子宮内膜がんだったことが判明。

記事監修医師:
佐藤 綾華(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

貧血や倦怠感の原因は「子宮内膜がん」だった

編集部

はじめにナオミさんが経験された「異型内膜異型増殖症」について教えていただけますか?

ナオミさん

最初に診断された「子宮内膜異型増殖症」は、子宮内膜が異常に分厚くなり増殖する疾患です。症状としては月経過多、月経痛、不正出血などがあります。また、子宮内膜異型増殖症は子宮体がんの前段階とされていて、約30%の方が子宮体がんになるそうです。

編集部

ナオミさんの病気が判明するまでの経緯も教えていただけますか?

ナオミさん

2013年頃から月経周期の乱れがあり、当時は仕事環境の変化とストレスのせいと思っていました。しかし、徐々に月経周期が不安定になり、ものすごい出血量に不安を感じるようになりました。クリニックや総合病院の婦人科を受診しても、子宮は綺麗な状態との説明。不安になりながら様子を見ていると、次はとてつもない疲労感、記憶があいまいになるほどの無気力、氷を常に食べたくなるなど、これまでにない症状が現れました。

編集部

症状がどんどん強くなっていったのですね。

ナオミさん

はい。この頃には、会社の健診でも貧血を指摘され、内科受診をしたところ顔色も真っ白で重度の貧血状態と言われました。そして、2019年にクリニックでがん検診を受けたところ「子宮内膜がんが偽陽性」という結果になったため、紹介状をもらって総合病院を受診しました。そこで「子宮内膜異型増殖症」と診断されたという流れです

編集部

病名が明らかになるまで時間がかかったのですね。

ナオミさん

そうですね。いくつかの病院で検査して、子宮は綺麗と言われるだけで終わったので「病院に行っても変わらないならこのままでいい」と思うようになりました。症状が現れてからは、氷を食べてからガムを噛むと心地よかったため、ボトルガムを常備しているほどでした。ひどい時は半日でボトルガムが空になるほどだったので、かなり悪い状態だったのだと思います。

編集部

医師からはどのような説明がありましたか?

ナオミさん

子宮内膜異型増殖症は子宮体がんへの進展およびすでにがんが併存しているリスクが高く、「がん細胞が含まれている確率が高いので子宮摘出が望ましい。だが、卵巣を残すこともできる」と言われました。私は幸いにも30代後半で4人の子宝に恵まれており、5人目は望んでいなかったので子宮摘出を選択しました。

編集部

術後の検査で子宮内膜がんが判明したのですね。

ナオミさん

はい。手術を行い、組織診をしたところ「子宮内膜がん」が確定し、ステージ1Aと説明されました。

編集部

術後はいかがすごされていますか?

ナオミさん

幸い転移はなく、月経が来なくなり、貧血がすぐになくなりました。そしてガムを食べたくなる欲も収まっています。現在は3か月おきに採血のため総合病院へ通っていますが、腫瘍マーカーの値も問題ないそうです。既に4年が過ぎているので、あと1年で通院は卒業になる予定です。

原因がはっきりしたことで安心した反面、不安もあった

編集部

病気が判明した時の心境はいかがでしたか?

ナオミさん

数年間は原因がはっきりしないまま過ごしていたこともあり、やっと自分の現状を知ることができたと一安心しました。それと同時に、正直4人の子どもを授かったとはいえ、子宮を摘出するという決断には少なからず気持ちが揺らぐところがあったのも事実です。

編集部

症状が強くなってから、生活面で大きく変化したことはありますか?

ナオミさん

まず、不正出血がずっと続いていたので、貧血症状でとにかくふらふらしました。また、出血の影響なのか疲労感も大きく、いくら寝てもすっきりしませんでした。私は元々片頭痛持ちですが、ほぼ毎日頭痛がするので市販の鎮痛剤も手放せない状態でした。精神面ではいらいらが続き、長引く不調のせいで不安な日々を送っていました。

編集部

現在の体調はいかがですか?

ナオミさん

手術をしてから貧血に悩まされることがなくなりました。また、月経もなくなったのでPMSで悩むこともなく、PMS(月経前症候群)などで感情の起伏に左右されることもなくなりました。女性に多いナプキンによる肌トラブルから解放されて、とても快適に生活しています。

編集部

仕事はどうされていますか?

ナオミさん

術後に転職して、15年ぶりに医療事務に復職しました。現在は自宅近くのクリニックで働いています。

婦人科は敬遠しがちだが、がん検診は必ず受けてほしい

編集部

診断から手術までどのくらいの期間があったのでしょうか?

ナオミさん

手術は決定してから実際に行うまで約2カ月ほど間があったと思います。その間は家族が家事を手伝ってくれて、負担を減らそうとしてくれました。ほかにも、推し活や友達が私を連れ出してくれたことがストレス発散になりました。

編集部

子宮内膜異型増殖症は一般的には馴染みのない病名かと思います。ナオミさんからそうした病気について、知ってほしいことはありますか?

ナオミさん

私の場合もそうでしたが、「いつか診てもらおう」と思って放置していると、症状が治まるまでに時間がかかります。悪化しても薬を飲んで治るものなら良いのですが、検査が続けばお金・体力・時間も費やします。そうならないためにも、「いつもと何か違うな」と感じたら、一度病院へ行ってみましょう。

編集部

ナオミさんの闘病体験を通して、医療従事者に望むことはありますか?

ナオミさん

しっかり患者さんと向き合って治療を進めてくださる先生が大半だと思いますが、ぜひもう少し親身になってほしいと思いました。自分の身体に起きた不調に対して、「原因や改善策を知りたくて病院に行ったのに」という思いになると、治療へのモチベーションが下がってしまう可能性があります。

編集部

ナオミさんが本記事の読者の最も伝えたいことをお願いできますか?

ナオミさん

一番はがん検診を絶対に受けてほしいということです。そもそも、不調がないと病院に行くことはないと思います。特に婦人科は敬遠しがちで、私自身も妊婦健診と産後健診で行ったきりでした。私は家系的にがん家系ではありましたが、自分はならないと油断していたため、「まさか自分ががんになるなんて」と大きなショックを受けました。一度きりの人生ですから、後悔しないためにも検診や病院受診をもっと身近なものにしてほしいです。

編集部まとめ

子宮内膜異型増殖症で重度の貧血や多くの症状に苦しめられ、手術によって元の生活を取り戻したナオミさん。子宮内膜異型増殖症は月経過多や月経痛、不正出血、月経不順などの症状があり、症状だけでは発見するのは困難です。だからこそ、年に1度のがん検診で異常がないか精査し、自らの体についてよく知っておくことが大切です。悪化すれば重度の貧血で日常生活も困難になり、最悪の場合は子宮体がんに発展することもあります。普段の体調との違いや些細な違和感でも、そこから病が始まっていることがあります。異変を見逃さないためにも、定期健診と早期受診を心掛けましょう。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

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