「インフルエンザ」異例の“2回目”ピーク、A型とB型の2種類が流行拡大
季節性インフルエンザが2023年12月にピークを迎えた後、今年に入って再び感染者が急増して2回目のピークに差し掛かっています。この内容について甲斐沼医師に伺いました。
監修医師:
甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。2023年、TOTO関西支社健康管理室産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
インフルエンザの感染状況は?
現在のインフルエンザの感染状況を教えてください。
甲斐沼先生
厚生労働省が2024年2月26日時点で発表した内容によると、約5000箇所の定点医療機関で2024年2月12日~18日の1週間に報告されたインフルエンザの患者数は、10万1832人でした。去年の同じ時期には、6万2101人の患者が報告されていたので、約1.6倍の数値となっています。1医療機関あたりの患者数は20.64人で、4週間以内に大流行が起きる可能性を示す「注意報レベル」の基準である1医療機関あたりの患者数10人を超えている状態です。
異例とも言える1シーズン中で2回のピークができているのは、2023年末にかけて2種類のA型インフルエンザ「H1N1型」「H3N2型」が流行し、2024年1月以降にインフルエンザB型が拡大している背景があるためです。B型のインフルエンザウイルスはこの4年間流行がなかったため、免疫を持っていない子どもが多く感染している傾向があります。2月初旬の患者の約7割を、15歳未満が占めていました。
インフルエンザの感染状況への受け止めは?
季節性インフルエンザの感染が異例の2回目のピークを迎えています。こうした感染状況への受け止めを教えてください。
甲斐沼先生
インフルエンザは例年、年末前後に流行入りしてピークの峰が1つできますが、今シーズンは2023年9月から流行が拡大し、2023年末に流行したA型に代わってB型の感染が広がり、2回感染する恐れがあります。従来のコロナ禍では、インフルエンザがほとんど流行せず、十分な免疫を持たない人が増加した中で、昨春以降に社会経済活動が活発化したことも影響して、インフルエンザが通常よりも3~4カ月早く感染が広がったのだと考えられます。季節性インフルエンザを感染予防するための対策を徹底的に講じて、万が一にも感染して発症した際には水分摂取を十分におこなうなど、適切な対応をとるようにしましょう。
インフルエンザの感染予防で大事なことは?
季節性インフルエンザの感染予防で大事なことについて、改めて教えてください。
甲斐沼先生
一般的な風邪は様々なウイルスや細菌によって起こりますが、その多くは喉の痛み、鼻汁、くしゃみや咳などの症状が中心で全身症状はあまりみられません。しかし、インフルエンザは38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身症状が突然表れます。子どもの場合は稀に急性脳症を発症し、高齢者や免疫力が低下している場合には肺炎を伴うなど、重症化することもあります。
改めて、インフルエンザを感染予防するためには、感染経路を断つ(飛沫感染・接触感染を防ぐ)ことが重要であり、帰宅時や調理の前後、食事前など、こまめに手洗いをしてください。また、予防接種を受けて、インフルエンザの重症化リスクを減らしましょう。
普段から免疫力が低下していると感染しやすくなることに加え、感染した際に症状が重くなってしまう恐れがあるので、日常的に十分な睡眠とバランスの良い食事を心がけて、免疫力を高めておきましょう。
まとめ
季節性インフルエンザが2023年12月にピークを迎えた後、今年に入ってから急増して2つ目のピークができています。直近の調査結果によると、31都府県で前週より患者数が減少しているとのことですが、引き続き警戒の必要がありそうです。
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