『となりのナースエイド』©︎日本テレビ

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 現在放送中の『となりのナースエイド』(日本テレビ系)は回を重ねるごとに、その回の後半を観るのが怖くなっている。これまでは澪(川栄李奈)がまた少し成長したり、仲間の絆が深まったりしてほっこりした気持ちになるのに、その後、絶対に誰かの裏の顔が見えてくるのだ。どんでん返しがあると身構えて観ていても、ゾッとしてしまう。

参考:『となりのナースエイド』小手伸也演じる猿田が強面キャラへと変貌 “裏”を感じさせる回に

 第6話では、澪も頼りにしていたベテランナースエイドの晴美(水野美紀)が、澪の監視を謎の人物に命令されていたことが判明したが、第7話では、晴美に加えて同じナースエイドの相馬(矢本悠馬)と夏芽(吉住)もそれに協力していたことがわかった。澪と大河(高杉真宙)は彼らを脅して従わせていた人物が、澪の姉・唯(成海璃子)を殺した犯人、もしくはそれに一番近い人物と考えたが、実はその人物こそ、大河の同僚で統合外科の医師・猿田(小手伸也)だったのだ。

 猿田は澪のことをナースエイドだからと馬鹿にしており、見かけると横柄な態度で嫌味を言い、大河には表面上は丁寧に接するが、内心では見下している。「医者は偉い」と考えているところもあり、退院する患者に「手術が成功したのは私のおかげ」などと恩着せがましいことをわざわざ言うこともある。だが、医者の実力としてはそれほどではなく、いつも一緒に行動している看護師の明菜(織田梨沙)やちえみ(あかせあかり)からも呆れられている。猿田はコメディ要素の強いキャラではあるのだが、端的に言って“嫌なやつ”だ。

 猿田を演じる小手伸也はこうしたクセの強い“嫌なやつ”が得意な名脇役である。『SUITS/スーツ』(2018年/フジテレビ系)で演じた蟹江は、主人公の敏腕弁護士・甲斐(織田裕二)と同じ法律事務所に所属する弁護士で、若い頃からしのぎを削ってきたライバル。だが、蟹江はひねくれ者で嫌味なところがあり、自分より上の立場の者にはいい顔を、目下の者には圧力をかけて自分に従わせようとする。しかも蟹江は甲斐と事あるごとにぶつかるのだが、時に姑息な手段を使って甲斐の妨害をしようとしていた。

 『スタンドUPスタート』(2023年/フジテレビ系)で演じた林田は、かつては、メガバンクの融資部門の次長として働いていたがとある事がきっかけで左遷。それでも過去の栄光が忘れられず、林田は左遷先では威張り散らし、クラブではホステスに、銀行員時代の古い名刺を見せながら自慢話をしていた。このように揃いも揃って第一印象から嫌われそうな性格をしているキャラクターを小手は全力で憎たらしく演じている。だが、蟹江も林田もどこかコミカルで、だんだん優しい部分が出てくることもあり、完全に“悪役”とは言えないのが特徴的だ。

 では、『となりのナースエイド』で演じる猿田はどうだろう。あろうことか澪が信頼していた同僚たちの弱みを握り、脅して監視役をさせていたのはあまりにも陰湿だ。元々“嫌なやつ”な猿田だったが、今回の騒動で、思っていたより“もっと嫌なやつ”だということがよくわかった。だが、猿田の言動にはいい意味でも悪い意味でも“小物感”があり、「唯を殺害する」とか「星嶺医大を巻き込む事件を起こす」というような大それたことをする真の首謀者とは思えない。第8話の予告でも猿田には真犯人ではなく「新・犯人」という呼び名が付けられている。本当のミステリーは猿田が関わるところ以外にありそうだが、猿田はこれからもいろんな意味で物語を掻き乱してくれそうだ。(文=久保田ひかる)