腎臓機能評価を専門医が解説 eGFRを調べる尿検査・血液検査で腎臓病を早期発見する重要性
健康診断、とくに血液検査の結果を見ても、どの検査項目が何を示すか、あまりよくわからないという人は多いのではないでしょうか。今回は「腎機能」に焦点を当て、検査方法や腎機能の低下によって発症する疾患について「まごめ内科・腎クリニック」の井上先生に解説していただきました。
監修医師:
井上 禎子(まごめ内科・腎クリニック)
東京女子医科大学医学部卒業。東京女子医科大学病院腎臓病総合医療センター入局、茅ヶ崎徳洲会病院、東京労災病院などで経験を積む。2016年、東京都大田区に「まごめ内科・腎クリニック」を開院。日本内科学会認定医・専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医・指導医、日本糖尿病学会会員。日本医師会認定産業医。
腎臓の機能・健康度を調べる腎臓機能検査とは?
編集部
まず、腎臓の主な機能について教えてください。
井上先生
腎臓は血液から老廃物を取り除き、尿として排出する役割があります。また、尿の量・濃さも調節できるので、体内の水分バランスや電解質、pH値の調整なども担っています。 加えて、血圧の調整をするホルモンや貧血を治すホルモンを生み出したり、ビタミンDを活性化させたりする働きもあります。
編集部
腎機能が悪くなると、どのような症状が出るのですか?
井上先生
むくみや高血圧といった症状がみられることもありますが、特に症状がなく健康診断などで指摘を受けて発見される場合が多くあります。症状が出てからではかなり進行しているケースも多いため、やはり検査を大事にしていただきたいですね。
編集部
具体的に、どのような検査でわかりますか?
井上先生
尿検査でタンパク尿や血尿などを指摘されたり、血液検査で腎機能に関連する項目に異常値が出たりした場合などは、腎機能異常の可能性があります。
腎臓機能評価・腎臓検診でよく見る項目の説明(eGFR、クレアチニンなど)
編集部
血液検査で、腎機能に関連する項目にはどんなものがありますか?
井上先生
「クレアチニン」という項目が代表的です。クレアチニンは筋肉の老廃物で、腎臓から排出されます。しかし、腎機能が悪化するとクレアチニンが排出できずにクレアチニンの値が上昇するのです。 ただし、クレアチニンは筋肉の量に比例して大きくなったり、軽度の腎機能障害ではあまり上昇しなかったりするため、腎機能障害が見逃されてしまうこともあり、注意が必要です。
編集部
ほかには、どのような項目がありますか?
井上先生
「BUN(Blood Urea Nitrogen):尿素窒素」という項目もあります。BUNは腎臓より排出されるタンパク質の老廃物なので、腎機能が悪化すると上昇します。ただ、タンパク質の摂取状況などに影響されるため、クレアチニンと比較すると少し不正確な部分もあります。もう少し正確な腎機能を知るためには、「GFR(Glomerular Filtration Rate):糸球体ろ過量」の値をみます。
編集部
GFRについて、もう少し詳しく教えてください。
井上先生
GFRは腎臓のろ過能力の指標です。腎臓で1分あたり何mlの原尿が作られているかを表します。実測するためには「イヌリンクリアランス」という検査が必要ですが、血清クレアチニンの値と性別・年齢から推算することができます。推算された値は「eGFR(推算糸球体ろ過量)」と呼ばれ、90ml/分/1.73㎡前後が正常値ですが、腎機能が悪くなるにつれて、数値は低くなっていきます。以下に、それぞれの検査項目とその正常値を示します。
尿タンパク陰性(0.15g/gCre未満)
尿潜血(‐)
BUN(尿素窒素)8mg/dl~20mg/dl
血清クレアチニン濃度男性1.2mg/dl以下、女性1.0mg/dl以下
eGFR 60~100ml/分/1.73㎡
編集部
ほかにもありますか?
井上先生
腎臓を専門としているクリニックでは「シスタチンC」も調べます。シスタチンCは、全身の細胞で生み出される小さなタンパク質で、クレアチニンと同様に腎臓の働きが悪くなると値が上昇します。クレアチニンと異なり、筋肉量の影響を受けないため、シスタチンCが用いられることも多いですね。
腎不全・腎臓病など腎臓機能が低下することで起きる可能性のある病気・疾患とは?
編集部
これらの数値が異常だと、どのような病気の可能性がありますか?
井上先生
尿異常がある場合には、慢性糸球体腎炎という病気が隠れていることが多く、長く続くと慢性腎不全となり、最終的に透析療法が必要となることもあります。また、健康診断の尿検査で再検査を求められ、その後糖尿病と診断されている患者さんも多くいらっしゃいます。さらに、「腎硬化症」という病気もあります。腎硬化症は、高血圧が原因で腎臓の血管が動脈硬化を起こし、腎臓の機能障害をもたらす疾患です。
編集部
様々な病気があるのですね。
井上先生
そうですね。さらに最近、「慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)」という新しい病気の概念も注目されています。慢性腎臓病は一般的にタンパク尿、血尿や、クレアチニン上昇といった腎機能低下が慢性的に続く状態で、心疾患のリスクファクターでもあるため注意が必要です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
井上先生
腎不全や腎機能障害は、早期発見がとても大切です。健康診断で早期に発見し、治療や食事に気をつけていけば、進行を食い止めることが期待できます。今は様々な治療薬が開発されており、病気のステージに合わせた治療薬が選択されます。さらに、一人ひとりのライフスタイルに合わせた食事療法や運動療法などと組み合わせてアプローチしていくことが可能です。健康診断で気になる数値がある人は、ぜひ一度、腎臓専門のクリニックに相談することをおすすめします。
編集部まとめ
腎機能評価、腎機能障害を早期発見する重要性などについて、解説していただきました。血液検査の項目などは、よくわからないまま健康診断を受けている人も多いと思います。この記事で紹介した項目に気になる数値のある人は、お近くの腎臓専門クリニックに相談してみてはいかがでしょうか。
参考:腎不全 治療選択とその実際
https://jsn.or.jp/jsn_new/iryou/kaiin/free/primers/pdf/2021allpage.pdf
医院情報
まごめ内科・腎クリニック所在地〒143-0025 東京都大田区南馬込5-27-13
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診療科目内科、腎臓内科
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