失敗を恐れ勇気を持てないときはどうすれば良いのでしょうか(写真:pearlinheart / PIXTA)

実現させたい夢があっても、うまくいかない未来を想像すると怖くなり、挑戦に二の足を踏んでしまう経験はありませんか。

本稿ではアメリカのカリスマトレーナー、ジリアン・マイケルズさんの著書『Unlimited 制限しない生き方』から一部を抜粋。気持ちにブレーキをかけてしまう原因を明らかにし、夢を実現させるステップをお伝えします。

起こりうる最悪の事態は何か

私たちは「自分の行動が取り返しのつかない結果につながるのではないか」と頻繁に恐れます。あなたはこの恐怖に押しつぶされて自分の殻に閉じこもり、問題から逃げようとするかもしれませんが、恐怖から逃げ切ることはできません。

それどころか、逃げると問題が雪だるま式に大きくなるばかりです。逃げれば逃げるほど、怪物は大きくなっていきます。

そこで、逃げるのではなく、起こりうる最悪の事態を徹底的に想像してみましょう。

たいていの場合、あなたが抱いている恐怖は非現実的で、起こりうる最悪の事態はそんなに悪くありません。恐怖を深く掘り下げることによって、本当のリスクを分析し、不合理な側面を打ち消し、残ったものと正面から向き合うことができます。

恐れている最悪のシナリオを想像する具体例を紹介しましょう。

ある若者は職場の女性をデートに誘うのをひどく恐れていました。彼は彼女がすごく好きだったのですが、なかなかアプローチできずにいたのです。

そこで私は彼の相談に乗り、起こりうることを一緒に考えてみました。もちろん私は冷静に話をしたのですが、彼はびくついていました。私たちの会話は次のように進行しました。

「ふられるのが怖い」

彼「彼女を誘ってふられるのがとても怖いんだ」

私「それがあなたの人生にどんな影響を与えるの?」

彼「別にないけど、毎日職場で彼女と顔を合わせなければならない」

私「それで?」

彼「気まずいし、職場全体に知れてしまうかもしれない」

私「死にたいくらい恥ずかしい?」

彼「そんなことはない」

私「耐えられないくらい怖い?」

彼「そんなことはない」

私「職場の人たちがあなたの仕事以外のことを考えているのが気になる?」

彼「すごく気になる」

私「どうして?」

彼「周囲の人によく思われたいから。職場が快適だと気分がいい」

私「誰かを誘ってふられたという理由で職場の人たちがあなたをさげすむなら、そんな人たちとは一緒にいたくないでしょ。落ち込んでいるときに支えてくれないような薄情な人たちと付き合いたい?」

彼「付き合いたくない」

私「あなたには本当の友人がいるでしょう。本当の友人ならそういう状況であなたを批判せずに支えてくれるはずだし、私もあなたを応援する。あなたが困っているときに人々が冷たくするなら、そんな人たちはこちらから願い下げよ。それがその人たちの本性だからね」

彼「なるほど」

私「彼女に断られて失うものは何だと思う? たしかにそのときはプライドが傷つくよね。でも、しょせんそれが最悪の事態。それで職場の人たちが冷たくするなら、その人たちの人間性がわかっていいでしょう。

その一方でうまくいく可能性もあるなら、思い切って少し恥をかく価値があると思わない? 恐怖と向き合って自分を奮い立たせることで、将来、その経験は勇気が必要な状況で有利に働くはずだよ」

彼「うん、よくわかった。明日、勇気を出して彼女を誘ってみる」

最悪の事態を想定して分かったこと

彼は段階を追ってシナリオを検証し、メリットとデメリットを客観的に比較することができました。

この準備は最悪の事態を想定するのに役立っただけでなく、自分が抱いている恐怖の大半が根拠に乏しいか、うまくいった場合の恩恵にくらべて取るに足らないことを理解するのに役立ちました。

私たちが乗り越えられないものは、死を除いてほかにありません。立ち直る力があれば、より強く、より賢く、より早く目標を達成することができます。

恐怖を乗り越えて突き進むためのもう1つの素晴らしい方法は、「自分が得ることのできる恩恵に注目する」ことです。リスクをとる価値のある結果が得られそうなら、乗り越えられない恐怖はありません。

起こりうる最悪の事態ばかり想像するのをやめて、起こりうる最高のシナリオを想像してください。先ほど紹介した、職場の女性に惚れ込んでいる若者の話に戻しましょう。

私「なぜその女性を誘いたいの?」

彼「綺麗だし、魅力的だし、おもしろいし、頭がいいから。彼女はいつも職場の人たちを楽しい気分にさせてくれるんだ」

私「なるほど。ではもし彼女を誘って了解してくれたら、どういうことになるの?」

彼「デートをすることになる」

私「それでどうなるの?」

彼「わからない」

私「言葉を濁さずに、しっかり答えて」

彼「デートをして親しくなって結婚する。子どもを2人ほどつくって幸せに暮らす」

私「それは素晴らしいわね。それだけの恩恵を得る可能性があるなら、断られて職場の人たちの前で気まずい思いをしても、どうということはないじゃない」

彼「たしかにそうだけど、そんなに簡単じゃないよ。彼女に断られたら、すっかり落ち込んでしまうから」

私「よく考えて。あなたはまだ彼女を誘っていないのに、すでに落ち込んでいる。今、あなたは何も失っていない。第一、デートすらしていないでしょう。

たぶん彼女は現時点ではあなたを恋人候補だとは思っていないわ。彼女と一緒に過ごしたいなら、勇気を出して誘ってみたらどう? それで断られても落ち込むことはないでしょう」

彼「いや、彼女は現時点で少なくとも友人だ。彼女を誘って断られたら、気まずくて職場で顔を合わせられなくなる」

私「そんなことはないわ。あなたがそんなふうに思うからそうなるのよ。彼女をデートに誘って断られた場合、その後の関係はあなたの振る舞いにかかっているわ。彼女が断っても、あなたが冷静さを保って笑い飛ばすだけの度量があるなら、気まずさは消えて友人でいられるわ。

たしかにあなたはがっかりするでしょうけど、仲のいい友人と相談すればいいのよ。私のようにあなたを応援してくれる人とね。あなたが彼女の前で気まずいと思うと、彼女だってあなたの前で気まずさを感じるものよ」

彼「なるほど、そういうものなんだね」

勇気を出して一歩を


たしかに未知なるものは怖いです。苦痛をともなうことすらあります。

しかし、勇気を出して未知の領域に足を踏み入れると、たいてい何らかの恩恵を得ることができます。たとえ結果が望んでいたものでなくても、貴重な教訓を学んで人生の他の分野で成長するのに役立ちます。

あなたのすべての行為は種をまきます。純粋な気持ちで行動するなら、やがて素晴らしい収穫を得ることができるはずです。

ところでこの若者ですが、憧れの彼女とついに婚約しました。私はこういう幸せな展開が大好きです。

(ジリアン・マイケルズ : ライフコーチ)