地下鉄新線「都心部・臨海地域地下鉄」は、将来的にはつくばエクスプレスや羽田空港方面と接続する構想があります。果たして実現するのでしょうか。

臨海地下鉄と既存の「りんかい線」を結ぶ連絡線はできる?

 つくばエクスプレス(TX)には、東京駅まで延伸のほか、東京駅方面と臨海部をつなぐ地下鉄新線「都心部・臨海地域地下鉄」と接続する構想があります。さらにこの「臨海地下鉄」は今後、羽田空港までの接続を検討するとされています。TXから羽田空港までの直通運転は実現するのでしょうか。


つくばエクスプレス(画像:写真AC)。

 東京都は2022年11月、「都心部・臨海地域地下鉄」について、事業計画案を発表。さらに2024年2月、「りんかい線」を運営する第3セクターの東京臨海高速鉄道が、事業計画の検討に参画することで合意するなど、実現に向けた動きが相次いでいます。
 
 臨海地下鉄は東京駅が起点で、勝どき、晴海を経由して有明方面へ向かいます。終点となる「有明・東京ビッグサイト」駅は、りんかい線の国際展示場駅の近くに設けられる見込みです。事業計画案では臨海地下鉄について、2040年代の開業を目指して単独で整備。その後、将来的につくばエクスプレスを東京駅まで延伸し、接続を検討していくとしています。

 TXは現在、秋葉原とつくばを結び、他線との直通運転を行っていない単独路線となっています。秋葉原から東京駅への延伸は、国の交通政策審議会答申において、国際競争力の強化に貢献するプロジェクトとして位置付けられ、沿線自治体も要望を展開している状況です。

 臨海地下鉄の事業計画案では、さらに「羽田空港への接続を今後検討」という文言も盛り込まれています。これにより「TX〜臨海地下鉄〜りんかい線〜羽田空港アクセス線(JR東日本が整備中)」という壮大な羽田アクセスルートが生まれると考えられるのです。

 そこで焦点になるのが、臨海地下鉄とりんかい線の連絡線が国際展示場駅近くに設けられるかどうかです。この点について東京臨海高速鉄道は「臨海地下鉄とりんかい線の線路をつなげるのかは現時点では決まっておらず、今後検討していくことになります」(総務部総務課)と話しました。

TXの運営会社は過去に「慎重にならざるを得ない」

 TXから羽田空港までの直通運転をひとつのゴールと考えると、実現にはいくつものハードルが立ちはだかります。臨海地下鉄はおろか、TXの秋葉原駅から東京駅までの延伸も具体化はしていません。
 
 TX沿線自治体は2023年2月、東京延伸や、臨海地下鉄と接続した場合の需要予測などに関する調査の実施を、運営会社である首都圏新都市鉄道に要望しています。要望に対し同社は「現状および将来を見据えて、前向きな事業を進めていけるかについては、慎重にならざるを得ない」としたうえで、「コロナ禍の間にリモートワークなどの働き方や生活スタイルの変化が定着したことや、2022年度から続く世界的な物価高など厳しい状況であり、安定的に運行を続けていくことが一番の課題である」という見解を示しています。
 
 また、「地下鉄構想について、東京都はこれから徐々に精度を上げて検討し、追々情報が出てくると思うので、しっかりとタイミングを逃さずに聞いていきたい」と返答。「秋葉原〜つくばのお客様にご迷惑のかかるような、また、新たな負担をかけるようなものにならないことが重要である」と指摘しています。運営会社は昨今の厳しい情勢も踏まえ、あくまで慎重姿勢を示したことがあります。
 
 現時点では、TXから羽田空港までの直通運転が実現するかは不透明な状況です。仮に実現するとしても、遠い将来になることが見込まれます。