「包丁」の正しい手入れ方法は? さびを防ぐには? 貝印に聞いてみた
包丁を使っていて、表面にさびが生じた経験はありませんか。放置すると劣化が進むため、すみやかにさびを取り除く必要があります。
包丁にさびが生じないようにするためには、どのように手入れをしたらよいのでしょうか。さびが生じた場合、どうすればよいのでしょうか。貝印(東京都千代田区)マーケティング本部 マイスター推進部 シニアエキスパートの林泰彦さんに聞きました。
塩素系の台所用漂白剤の使用はNG
Q.包丁の素材によって、さびやすさに違いはあるのでしょうか。
林さん「もちろんあります。鋼の包丁は硬くて強度がありますが、さびに弱いため、手入れに手間がかかります。
一方、市場で最も流通しているステンレス製の包丁は、鋼に『クロム』という成分を加えて製造されているため、さびに強いのが特徴です。なぜかというと、クロムが空気中の酸素と結びつくことで、包丁の表面に目に見えない薄い皮膜を作り、さびの原因となる成分をはじくほか、皮膜が壊れても自己再生するからです」
Q.包丁のさびを防ぐには、どのように手入れをしたらよいのでしょうか。注意点も含めて、教えてください。
林さん「包丁のさびは、切ったものに含まれる塩分や水気、酸などに空気が触れて酸化することで生じます。さびを防ぐには、これらの成分を小まめに取り除くことが重要です。調理が終わった段階で、料理を食べる前に包丁とまな板だけでも洗うようにするとよいでしょう。
包丁を洗う際に、食器洗い用の洗剤やスポンジを使うのはまったく問題ありませんが、スポンジの硬い面に直接刃先が当たると痛むため、軟らかい面で洗うようにするとともに、塩素系の台所漂白剤は使用しないでください。ステンレスの包丁を漂白剤入りの水にひたしてしまうと、塩素により、クロムによって作られた包丁の皮膜が破壊されてしまい、自己再生できなくなります。それにより、包丁がさびやすくなります。
このほか、包丁を洗うときに、刃先が直接スポンジに当たる状態でスポンジを挟んで洗う人がいますが、危ないので絶対にやめてください。切れ味がよい包丁だと、スポンジごと切れてしまうため、手をけがする恐れがあります。
スポンジで洗うときは、包丁の背中側(峰)をスポンジに当てて、刃元を両側から挟む状態にした後、切っ先に向かって真っすぐ動かしてください。包丁の刃先をまな板に付けた状態で洗うと、より安全です」
Q.包丁を洗った後の注意点はありますか。
林さん「包丁を洗った後、水滴が包丁に残っているとさびの原因となります。包丁を洗った後はタオルや布巾などで水分をしっかり拭いてから乾かしましょう。
当社は包丁の研ぎ直しサービスを有料で行っており、さまざまなお客さまからの依頼を受けていますが、先端だけさびている包丁を比較的多く見掛けます。お客さまに使用状況を聞くと、洗った後、水分を拭き取らないまま、刃を立てて乾かしていることが分かりました。
また、金属製の食器かごで乾かす際は、できるだけ包丁をかごの金属部分に触れないようにして置きましょう。包丁を他の金属に触れた状態で保管すると、他の金属を通じてさびが生じる『もらいさび』の原因となります」
Q.食洗機を使って包丁を洗ってもよいのでしょうか。
林さん「包丁の種類によって、食洗機の使用可否が異なるため、注意が必要です。当社の包丁の場合はパッケージに使用可否を記載しているため、必ずご確認ください。例えば鋼の包丁や持ち手が木製の包丁は、食洗機の使用時に生じる水分や熱によって、刃先や持ち手が劣化しやすくなるため、食洗機は使用できません」
Q.もし包丁の刀身や刃先がさびてしまった場合、どうすればよいのでしょうか。
林さん「刀身にさびが生じた場合はクレンザーを付けた後、市販のプラスチック消しゴムや貝印のサビ消しゴムでこすりましょう。注意点として、事故を防ぐため、刃先をまな板に付けた状態で作業を行ってください。刃先にさびが生じた場合は、砥石(といし)やシャープナーを使って研ぎましょう」