「なかなか寝付けない..」更年期の睡眠障害、どうすればいい? 看護師が解説
更年期における不眠は、多くの女性が直面する一般的な悩みです。寝ようとしても眠れず、時間が過ぎていくと焦りを感じる方もいるのではないでしょうか? 不眠を含め、更年期による不調は日々の生活習慣を見直すことで改善される場合もあります。そこで更年期の睡眠障害の原因や対策について看護師の安部さんに解説していただきました。
監修看護師:
安部 直子(看護師)
新見女子短期大学(現・新見公立大学)看護学科を卒業後、大学病院で働きながら通信制を利用して看護学学士を取得。民間病院での勤務を経て2022年よりフリーライターとして活動。病棟、外来、救急など様々な部署や、複数の診療科での経験を活かして「誰かの役に立つ情報」を発信中。
更年期障害に多い睡眠障害にはどんなものがある?
編集部
更年期を迎えるとなかなか寝つけないということを聞きますが、これは不眠症でしょうか?
安部さん
睡眠障害は60種類以上もあり、国際分類では大きく7つに分けられています。その中のひとつである不眠症に悩む人は多く、以下のような特徴があります。・入眠困難:寝つきが悪い
・中途覚醒:途中で何度も目が覚める
・早朝覚醒:早朝に目覚める
なお、以前は「熟眠障害」も含まれていましたが、主観的で評価が難しいため、最新の分類には入っていません。
編集部
睡眠障害をおこすと体に影響がありますか?
安部さん
頭痛や肩こりなどのほかに、食欲が増すこともあります。睡眠不足は食欲を抑えるホルモンのレプチンを減少させ、食欲を高めるホルモンのグレリンの分泌を亢進させます。慢性的な寝不足状態になると糖尿病や心筋梗塞などの生活習慣病にもなりやすいことが明らかになっています。
編集部
更年期で注意した方がいい睡眠障害はありますか?
安部さん
閉経前後の10年を更年期といい、この期間は女性ホルモンの分泌が低下します。女性ホルモンのひとつであるプロゲステロンは鎮静作用や呼吸促進作用があり、欠乏すると不眠障害や睡眠時無呼吸症候群になるリスクを高めます。「睡眠時無呼吸症候群」は肥満気味の中年男性に多いイメージがありますが、更年期の女性も注意した方がよいでしょう。
なぜ更年期に睡眠障害になる? 原因について
編集部
更年期だとなぜ寝つきが悪くなるなどの睡眠障害になるのですか?
安部さん
更年期では血管拡張作用によるホットフラッシュや発汗、動悸、めまいなどが起こる不眠になると考えられます。また、夜間の排尿回数が増える、腰や肩などの痛みが持続する、睡眠に関係するホルモンのメラトニンが減少するなど加齢による理由も挙げられます。
編集部
更年期障害に見られる精神的な症状も原因ですか?
安部さん
更年期にはホルモンの影響で、抑うつ症状や不安など精神症状が出ることがあります。イライラする、考え込んで不安になるなど眠れないこともあるでしょう。また、ストレスにより自律神経が乱れることも睡眠障害につながります。
編集部
ストレスも関係しているのですね。
安部さん
はい。社会的立場から見ても、問題を多く抱えてしまうのが更年期です。子どもの受験や親の介護、職場での役割などたくさんの問題がストレスとなり、不眠症につながります。
更年期の睡眠障害への対策・ケア方法について
編集部
睡眠対策として何ができますか?
安部さん
睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌を高め、自律神経を整える工夫が必要です。自律神経には、交感神経と副交感神経があり、全身のあらゆる部位に分布しています。体に重要な役割を果たすこれらの神経は、自分の意思や意識では動かせません。休息時に働く副交感神経が優位になるような生活を心がけてください。おすすめの方法は下の通りです。・朝日を浴びる:メラトニンの分泌を高める
・寝る前にスマートフォンなどを使用しない:ブル―ライトがメラトニン分泌に悪影響を及ぼす
・入眠2時間前に湯船につかる:体内温度の変化により、眠気につながる
・飲み物に注意する:過度なアルコール摂取は眠りが浅くなる。コーヒーや緑茶のカフェインには覚醒作用がある
編集部
ほかにもできる対策はありますか?
安部さん
眠くなってから寝床に入る、眠れない時は思い切って寝床から出るのも効果的な方法です。寝床は寝る場所と脳に覚えさせることで、不眠症を改善できる可能性があります。寝具や照明など環境を整えることや、真っ暗な状態で寝るようにしてください。また、靴下を履いたまま寝る人もいますが、足先の冷え対策に靴下を履いたままで眠ると足から放熱できず、睡眠に悪影響です。ほかにも、リラクゼーション法が不眠症に有用である可能性が示されており、自己訓練法や誘導イメージ法などを取り入れてもよいでしょう。なお、リラクゼーション法は一般的には安全ですが、持病のある方は症状が悪化する場合があるため主治医に相談してください。参考:厚生労働省eJIM「健康のためのリラクゼーション法[各種施術・療法 - 一般]」
編集部
食べ物は睡眠に効果がありますか?
安部さん
はい。睡眠によいとされる栄養素をご紹介します。・トリプトファン:睡眠ホルモンメラトニンの材料となるセロトニンを活性化する。大豆食品、乳製品、ナッツ類、バナナなどに含まれる。ビタミンB6(マグロなどの青魚、肉類、ごまなど)、炭水化物(穀類、いも類など)と一緒に食べると効果的
・グリシン:深部体温を下げ、睡眠の質が向上する。肉や魚介類などに含まれる
・GABA(ギャバ):興奮した神経を落ち着かせる。発芽玄米、発酵食品、きのこ類、トマトなどに含まれる
あくまでも良い睡眠のために摂取しなければと思わず、楽しんで食べることが大切です。
編集部
睡眠障害がひどい場合の治療法はありますか?
安部さん
市販薬は「睡眠改善薬」で、不眠症の治療薬とは異なります。内科や心療内科、精神科、睡眠専門の外来などで行われる治療は、薬物療法や生活習慣指導、認知行動療法などです。更年期障害による不眠症の場合は婦人科でホルモン補充療法やその人に合った漢方薬が処方されています。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
安部さん
更年期障害全般、そして不眠に悩む女性はたくさんいらっしゃいます。忙しい日々の中で少しでも立ち止まり、副交感神経を優位にして良い睡眠が得られるよう意識をしてみましょう。
編集部まとめ
睡眠障害のひとつである不眠症で悩む人は多いです。更年期はホルモンの影響でさまざまな症状が出現し、社会的にも抱える問題が多く睡眠障害につながります。睡眠障害は重大な病気につながる可能性もあり、周囲の人に相談する、専門医を受診するなど一人で背負わないようにしてください。
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