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白血病の治療法とは?Medical DOC監修医が白血病の治療法・治療期間や何科へ受診すべきかなどを解説します。

監修医師:
杉山 圭司(医師)

2011年、東海大学卒業。卒業後は国立病院機構名古屋医療センター(腫瘍内科)、東京都済生会中央病院(血液・腫瘍・感染症内科)、愛知がんセンター(薬物療法部)で悪性腫瘍の治療(薬物療法)について研修。現在は名古屋医療センター腫瘍内科に勤務。専門はがん薬物療法。内科認定医、がん薬物療法専門医(日本臨床腫瘍学会)、血液専門医(日本血液学会)。

「白血病」とは?

白血病とは、赤血球、白血球、血小板などのもととなる造血幹細胞が分化する途中でがん化する病気です。造血幹細胞とよばれる、いわば血液細胞の赤ちゃんに相当する細胞はだんだん成長していき、最終的には赤血球、白血球(さらに骨髄系、リンパ系細胞に分かれます)、血小板などに分かれていきます(これを分化とよびます)。白血病はこの血球の分化過程に異常を生じて、血球細胞が無秩序に増殖し、体に大きな影響を与えうる状態になります。
今回は、白血病の種類、治療法、治療期間についてお話します。

白血病の種類

白血病は大きくわけると4つに分類されます。

・急性骨髄性白血病

・急性リンパ性白血病

・慢性骨髄性白血病

・慢性リンパ性白血病

ひとつずつ説明しますので、特徴をつかんでください。

急性骨髄性白血病(AML)

急性骨髄性白血病は、本来であれば骨髄系の細胞になるはずの未熟な細胞(骨髄芽球)が無秩序に増殖した状態です。白血病細胞が増加すると正常な造血が困難となり、正常な赤血球が減少し、息切れや動悸といった貧血症状が出現します。同時に正常な血小板も減少するため、鼻血や歯肉出血、内出血といった出血症状も出現するのです。倦怠感も強くなり、正常な白血球が減少するため抵抗力が低下し肺炎などの重篤な感染症にかかりやすくなります。

急性リンパ性白血病(ALL)

白血球のひとつであるリンパ球になる前の、リンパ系幹細胞ががん化することで起こります。成人より小児でより一般的なタイプです。症状はAMLと似ています。

慢性骨髄性白血病(CML)

血球を作りだすもととなる造血幹細胞ががん化することで起こり、顆粒球、赤芽球、骨髄芽球が増殖することが特徴です。急性白血病と異なり、未熟な血液細胞である芽球のみならず、正常な細胞も増殖します。血液検査では、顆粒球、赤血球、血小板が上昇し、脾臓や肝臓が腫大することも特徴です。
自覚症状は乏しいのですが、職場の検診で「白血球が多い」という理由で精密検査を行い診断されるパターンがしばしばあります。慢性骨髄性白血病は慢性期、移行期、急性転化期と段階があり、急性転化期は急性白血病と同じような状態です。この疾患に特徴的な異常にフィラデルフィア染色体と呼ばれるものがあります。体の中にいくつかある染色体の一部に転座という異常が生じることで、正常よりも血液細胞を作るスイッチが入ってしまいこの病気になることが分かっています。現在では、このメカニズムに基づく治療薬(チロシンキナーゼ阻害薬)が使用されています。

慢性リンパ性白血病(CLL)

リンパ球のなかの、Bリンパ球ががん化することで起きる病気です。日本では症例が少なく、なかでも高齢者にみられやすいのが特徴です。血液検査ではBリンパ球の異常な増加がみられ、リンパ節や肝臓、脾臓にもBリンパ球が存在するようになります。
初期症状に乏しく、血液検査異常、貧血やリンパ節腫脹などが見られたため検査することで診断されるケースが多いです。

白血病の治療法

代表的な4つの白血病の治療法についてお話します。

急性骨髄性白血病(AML)の治療法

化学療法がメインとなります。65歳くらいまでの強力な治療に耐えられる方の場合は、イダルビシンもしくはダウノルビシンのいずれかとシタラビンを用いた寛解導入療法が行われます。その後、地固め療法とよばれる治療を繰り返し、白血病細胞の根絶を目指します。高齢者の方など強力な治療が難しい方の場合は、シタラビンもしくはアザシチジンとベネトクラクスという分子標的薬を併用することが一般的です。ベネトクラクスは比較的最近、導入された治療で、治療成績が向上しました。AMLの中には化学療法だけで治癒を目指せる確率が高いものから低いものまでさまざまです。遺伝子検査、染色体検査、年齢、AMLの種類に応じて、追加の分子標的薬を用いたり、造血幹細胞移植を実施したりすることもあります。長らく治療に変化がなかったのですが、ここ数年、新薬の導入が進んでいます。

急性リンパ性白血病(ALL)の治療法

治療の中心はAMLと同様に化学療法です。ビンクリスチン、メソトレキセート、シタラビン、アントラサイクリン、L-アスパラギナーゼ、ステロイド薬など多彩な薬剤が使用されます。ALLのなかにはCMLと同様に、フィラデルフィア染色体陽性の方がおられます。その場合、イマチニブ、ダサチニブ、ポナチニブなどの分子標的療法を組み合わせて治療します。また、ブリナツモマブなど新たな薬剤も登場し、治療成績の向上が見られます。65歳くらいまでの方では、造血幹細胞移植を念頭においた治療を考えることが一般的ですが、薬物療法の進歩に伴い、少しずつ変わっていく可能性があります。

慢性骨髄性白血病(CML)の治療法

CMLの原因ともいえる、物質に直接作用する分子標的薬が治療の主役です。イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブなどいくつかの中から選択されます。これらの薬剤が登場してから、CMLで命を落とす方は非常にまれになりました。以前は化学療法、造血幹細胞移植が必要な疾患でしたが、がらりと様相が変わりました。

慢性リンパ性白血病(CLL)の治療法

慢性リンパ性白血病は白血病と名前がついていても、上記3疾患と異なり、すぐさま治療は行わないことが多いです(経過観察といいます)。貧血や発熱などCLLに伴う症状が出現している場合に限って、薬物療法を行います。

*白血病とひとくちにいっても急性白血病か否かで大きく変わります。急性白血病の場合は速やかに専門施設での診断、治療が必要となります。慢性骨髄性白血病(CML)は内服薬で長期的に付き合うタイプの疾患です。慢性リンパ性白血病(CLL)は経過観察から薬物療法までさまざまです。白血球に特徴的な症状はあまりない(発熱、だるさなど)のですが、長期に続く場合や、理由もなく出血(特に、小さなあざがたくさんでてきた)するような場合は、かかりつけの内科にまずは相談してください。血液検査で異常があればさらに詳しい検査を行うことになります。

白血病の治療期間

治療期間は幅広く、外来で完結することが多い、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)と異なり、急性白血病は入退院を繰り返しながら、月単位~1年(またはそれ以上)にわたる治療が行われます。
化学療法では、白血病細胞も良好な細胞も影響を受けるため、赤血球、白血球、血小板の3つが減少する「汎血球減少」という状態になり、感染しやすい「易感染状態」となります。そのため入院期間が長くなるのです。

急性骨髄性白血病(AML)の治療期間

治療期間、入院期間ともに長期となり、半年間から経過によっては数年間という方がほとんどです。
症状が安定して感染に対する抵抗力があると判断されると、一時退院や外泊を繰り返す方もみられます。小児の場合、症状が安定していても退院は難しいというケースで「院内学級」への編入が認められ、短時間ながらも学校生活を楽しむことができます。入院しながら学習の遅れを取り戻したり、生活リズムを整えたりします。

急性リンパ性白血病(ALL)の治療期間

入院期間と治療期間ともに長期に渡ります。急性骨髄性白血病(AML)の項目をご参照ください。

慢性骨髄性白血病(CML)の治療期間

慢性期のうちに診断された場合は、薬物療法(チロシンキナーゼ阻害薬)のみで多くの方がコントロールが可能です。しかし、急性転化という急性白血病のような症状が出現してからの治療となると、急性白血病に準じた治療が必要となります。

慢性リンパ性白血病(CLL)の治療期間

治療を行わずに経過をみることも多いため、一概にはいえません。

「白血病の治療」についてよくある質問

ここまで白血病の治療法を紹介しました。ここでは「白血病の治療」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

白血病を発症した高齢者が治療をしなかった場合、余命はどれくらいでしょうか?

杉山 圭司 医師

高齢者に限らず、急性白血病に対して適切な薬物療法を行わない場合の生存期間は月単位となります。高齢者であっても比較的マイルドな薬物療法を適切なサポートとともに行うことで、以前より治療がしやすくなっているようです。

一般的な白血病の治療費はいくらぐらいなのでしょうか?

杉山 圭司 医師

厚生労働省「令和3年度医療給付実態調査」の調査結果によると、白血病による1件あたりの入院費(公的医療保険あり)は自己負担額が43万~68万円でした。この額を見ると払えないのではないかと不安になるかもしれませんが、「高額療養費制度」を利用すれば、ひと月の上限額を超えた分の医療費は払い戻しされるため、自己負担額が上限なく増えていく心配はありません。
小児では、白血病が「小児慢性特定疾患」の対象であるため、市町村窓口で手続きをすると公費負担を受けられます。

編集部まとめ

白血病は急性から慢性まで様々なタイプがあり、それぞれ治療法や期間が異なります。治療には、化学療法や造血幹細胞移植などがあり、個々の病状や体力に応じたアプローチが必要です。症状が似ている他の病気との鑑別も重要なため、不安な症状がある場合はまずかかりつけの内科を受診し相談してください。血液検査の結果などを踏まえ、白血病が疑われる場合は血液内科で精査と治療を行いましょう。

「白血病の治療」と関連する病気

「白血病の治療」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

心不全不整脈

消化器科の病気

肝機能障害

呼吸器科の病気

間質性肺炎

腎臓科の病気

膀胱炎

皮膚科の病気

帯状疱疹

白血病そのものや白血病の治療は様々な臓器にダメージを与えます。新しい症状に気づいた時には、それが白血病と関連するものかどうか主治医と相談し、必要に応じて治療計画の調整をしましょう。

「白血病の治療」と関連する症状

「白血病の治療」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

倦怠感

のどの渇き

口内炎

手足のしびれ

皮膚の赤みやかゆみ

白血病の治療により正常な細胞もダメージを受けるため、様々な症状が出現します。付き合っていくしかない症状の場合もありますが、薬の調整をすれば改善が見込める症状である可能性もあるので、主治医に一度相談してみましょう。

参考文献

造血器腫瘍診療ガイドライン(日本血液学会)

成人急性骨髄性白血病の治療(がん情報サイト)

成人急性リンパ性白血病の治療(がん情報サイト)