こちらの画像、右側に写っているのは「ヘルクレス座」の方向約5億7000万光年先の相互作用銀河「Arp 122」です。相互作用銀河とは、すれ違ったり衝突したりすることで重力の影響を及ぼし合っている複数の銀河を指す言葉です。相互作用銀河のなかには潮汐力によって形が大きくゆがんだり、渦巻腕(渦状腕)が長い尾のように伸びていたりするものもあります。


【▲ 相互作用銀河「Arp 122」(画像右)。銀河の名前は上が「NGC 6040」、下が「LEDA 56942」(Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Dalcanton, Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Acknowledgement: L. Shatz)】

Arp 122を構成する2つの渦巻銀河のうち、地球に対して正面を向けているものは「LEDA 56942」、その上に写る横を向けているものは「NGC 6040」と呼ばれています。LEDA 56942は比較的形が整っていますが、もう1つのNGC 6040は渦巻腕がめくれ上がるように歪んでいるように見えます。


銀河どうしの相互作用は人間からすればとてもゆっくりと進行する現象です。欧州宇宙機関(ESA)によれば私たちが住む天の川銀河も約250万光年先のアンドロメダ銀河(M31)といずれ衝突・合体するとみられていますが、実際に衝突するのは今から40億年ほど後ですし、合体して1つの銀河が形成されるまでには数億年を要する可能性もあるといいます。Arp 122として相互作用が観測されているLEDA 56942とNGC 6040も最終的に合体して1つの銀河になると考えられていますが、その姿は遠い未来まで見られません。


この画像の作成には「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope:HST)」の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」で取得されたデータが用いられています。ハッブル宇宙望遠鏡によるArp 122の観測は、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)」やハッブル宇宙望遠鏡自身による将来の詳細な観測の対象になり得る銀河を探す取り組みの一環として2023年3月に実施されたということです。


また、画像の作成にはハッブル宇宙望遠鏡のACSだけでなく、セロ・トロロ汎米天文台のブランコ4m望遠鏡に設置されている「ダークエネルギーカメラ(Dark Energy Camera:DECam)」による光学観測データも使用されています。DECamはその名が示すように暗黒エネルギー(ダークエネルギー)の研究を主な目的として開発された観測装置で、当初の目的である暗黒エネルギー研究のための観測は2013年から2019年にかけて実施されました。


冒頭の画像は“ハッブル宇宙望遠鏡の今週の画像”として、ESAから2024年1月8日付で公開されています。


 


Source


ESA/Hubble - When one plus one (eventually) equals one

文/sorae編集部