2023年ベスト・ムービー トップ20
歴史的悲劇を描いた超大作やちょっぴりエッチな学園コメディ、さらには『オッペンハイマー』や『バービー』など--これらの作品は、映画がさまざまな困難を乗り越え、かつてないほど良くなったことを私たちに教えてくれた。ローリングストーン誌が選ぶ今年の20作品はこれだ!
2023年のはじまりに次のようなことを予言されたとしても、きっとあなたは信じなかっただろう。『オッペンハイマー』と『バービー』という対照的な映画が夏に同日公開され、ポップカルチャーが社会に大きな影響を与えること。カナダ人監督による低予算ホラーと「現役で活躍している最高の映画監督25人」に選出されたスコセッシ監督の超大作(制作費は2億ドル)が、映画づくりの妙の両極を示し出すこと。マーベル・スタジオが自らの”エンドゲーム”にぶち当たり、そのシネマティック・ユニバースの栄光に影が差しはじめること。全米脚本家組合(WGA)と全米映画俳優組合(SAG)が同時ストライキを起こし、ハリウッド全体に大打撃を与えること。テイラー・スウィフトの最新ライブを映画化した『テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR』が映画界を救うこと(ちなみにスウィフトは、映画界だけでなく、音楽界、NLF、西洋文明も救うことになる)。こんなことを言われても、占い師の水晶玉の調子がおかしいんじゃないか? とあなたは首をかしげたに違いない。
どこまでも予測不能な長い1年が終わろうとするいま、私たちは2023年という年が「なんでもありの世の中に、確かなものなんて存在しない」という真言に集約されていることを実感している。動画配信サービスが映画配給のランドスケープを変え続けたり(こうしたサービスだって、決して盤石ではないのだが)、予期せぬところから救いがもたらされたりなど、唯一言えることは、常にどこかでディスラプションが起きていたことだ。なかには、「バーベンハイマー? 本気で両方観るつもり?」から「マジでバーベンハイマー!」と心変わりした人もいるかもしれない。いずれにしても、働いた人にしかるべき賃金が支払われること、人間の代わりに生成AI(人工知能)に脚本を書かせることがいかにまずいかを、映画界がしぶしぶながら認めたことには希望が持てる。空白の長い”サマー・オブ・23”とやや遅れてやってくるアワード・シーズンは、映画界の真の進歩へとつながるはずだ。従来通りのビジネスを続けることは、もはや不可能なのだ。
革新や過渡期という感覚が強いなかでも、今年は数多くの素晴らしい作品が誕生した。大手映画スタジオも意欲的なインディペンデント系も、批評と興行成績の両方の点でホームランを打った。サンダンスやカンヌ、ベネチアといった映画祭では、オーディエンスの心を明るくし、人を信じる気持ちを呼び覚ましてくれるような作品がいつも以上に多く上映された。ハリウッド黄金時代を想起させるような作品もあれば、スマホと役者、そしてビジョンさえあれば映画は撮れることを改めて教えてくれるような作品もあった。ローリングストーン誌が2023年の年間ベスト・ムービーに選出した20作は、ジャンル、スケール、上映時間、テーマのすべてにおいて多種多様である。唯一の共通点は、映画を観る私たちと創り手とのあいだに絆のようなものが生まれる、ゾクゾクするような瞬間が感じられること。そういう意味でも、創り手からオーディエンスへ、オーディエンスから創り手へというサイクルは健在なのだ。
(編注:ここで取り上げる作品はすべて、映画祭の先行上映ではなく、アメリカの劇場公開日に基づいている。『コット、はじまりの夏』や『ソウルに帰る』が選出されているのに、『PERFECT DAYS』や『ポトフ 美食家と料理人』といった秀作が選ばれていない理由--2作とも2024年のベスト・ムービーに選出される可能性は高い--はここにある。また、ここで取り上げきれなかった以下の作品にも拍手をおくりたい。『ジョン・バティステ:アメリカン・シンフォニー』『アース・ママ』『Infinity Pool(原題)』『May December(原題)』『Menus-Plaisirs - Les Troisgros(原題)』『リアリティ/REALITY』『ヨーロッパ新世紀』『Smoking Causes Coughing(原題)』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』『A Thousand and One(原題)』)
2023年のはじまりに次のようなことを予言されたとしても、きっとあなたは信じなかっただろう。『オッペンハイマー』と『バービー』という対照的な映画が夏に同日公開され、ポップカルチャーが社会に大きな影響を与えること。カナダ人監督による低予算ホラーと「現役で活躍している最高の映画監督25人」に選出されたスコセッシ監督の超大作(制作費は2億ドル)が、映画づくりの妙の両極を示し出すこと。マーベル・スタジオが自らの”エンドゲーム”にぶち当たり、そのシネマティック・ユニバースの栄光に影が差しはじめること。全米脚本家組合(WGA)と全米映画俳優組合(SAG)が同時ストライキを起こし、ハリウッド全体に大打撃を与えること。テイラー・スウィフトの最新ライブを映画化した『テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR』が映画界を救うこと(ちなみにスウィフトは、映画界だけでなく、音楽界、NLF、西洋文明も救うことになる)。こんなことを言われても、占い師の水晶玉の調子がおかしいんじゃないか? とあなたは首をかしげたに違いない。
革新や過渡期という感覚が強いなかでも、今年は数多くの素晴らしい作品が誕生した。大手映画スタジオも意欲的なインディペンデント系も、批評と興行成績の両方の点でホームランを打った。サンダンスやカンヌ、ベネチアといった映画祭では、オーディエンスの心を明るくし、人を信じる気持ちを呼び覚ましてくれるような作品がいつも以上に多く上映された。ハリウッド黄金時代を想起させるような作品もあれば、スマホと役者、そしてビジョンさえあれば映画は撮れることを改めて教えてくれるような作品もあった。ローリングストーン誌が2023年の年間ベスト・ムービーに選出した20作は、ジャンル、スケール、上映時間、テーマのすべてにおいて多種多様である。唯一の共通点は、映画を観る私たちと創り手とのあいだに絆のようなものが生まれる、ゾクゾクするような瞬間が感じられること。そういう意味でも、創り手からオーディエンスへ、オーディエンスから創り手へというサイクルは健在なのだ。
(編注:ここで取り上げる作品はすべて、映画祭の先行上映ではなく、アメリカの劇場公開日に基づいている。『コット、はじまりの夏』や『ソウルに帰る』が選出されているのに、『PERFECT DAYS』や『ポトフ 美食家と料理人』といった秀作が選ばれていない理由--2作とも2024年のベスト・ムービーに選出される可能性は高い--はここにある。また、ここで取り上げきれなかった以下の作品にも拍手をおくりたい。『ジョン・バティステ:アメリカン・シンフォニー』『アース・ママ』『Infinity Pool(原題)』『May December(原題)』『Menus-Plaisirs - Les Troisgros(原題)』『リアリティ/REALITY』『ヨーロッパ新世紀』『Smoking Causes Coughing(原題)』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』『A Thousand and One(原題)』)