2023年はAIの年だった、と言っても過言ではないだろう。この新しいテクノロジーの出現と急速な発展は、拡大と変化と混乱が相まって形作られている、デジタル領域を象徴するような存在にも感じられる。一方で、デジタルの未来は不透明だ。市場におけるすべてのプレイヤーが、先の見えないなかでいかに足場を固め、次のステップへと進めるのか模索を続けている。DIGIDAY[日本版]恒例の年末年始企画「IN/OUT 2024」では、 DIGIDAY[日本版]とゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブや次世代リーダーに2023年を振り返ってもらい、2024年に向けてどのようなチャレンジを企図し、次なる成長を実現しようとしているのか伺った。NECにて、インテグレイテッドマーケティング統括部・wisdom編集長を務める萬代由起子氏の回答は以下のとおりだ。

――2023年に挙げたもっとも大きな成果はなんですか。

オウンドメディア「wisdom」の来訪ユーザーの可視化が進み、anonymousユーザーの中から4割近いターゲット企業の可視化、訪問状況の把握ができるようになりました。100%は可視化できていませんが、傾向値として活用はできるデータがとれています。事業貢献を示す指標のバリエーションを作ることができました。これにより、流入施策の最適化の設計が可能になり、広告の見直しやターゲットに応じたコンテンツ出し分けの実行による来訪者の「質」向上に目的を絞ったコンテンツマーケティングを実践しています。また、2024年3月に予定しているサイトリニューアルに向け、ターゲティングやポジショニングなどあるべき姿をあらためて整理。他部門での活用を意識した、「使えるデータ」が取れるサイト構造、導線設計を行い、よりデジタルマーケティングの実践基盤としての活用を見込んでいます。

――2024年に向け見えてきた課題はなんですか。

ターゲットニーズをとらえたコンテンツ企画制作の高度化と、マーケティング戦略に基づくデータ連携/活用、の2点です。来訪者の可視化が進んだ一方で、ToBeとAsIsのギャップは見えてきましたが、それを埋めるべき解決策については最適解がまだ得られていません。広告、SEO、メルマガなど、ターゲット企業の流入をよりROI高く実現するための流入施策の最適化も必要ですが、オウンドメディア来訪は、そこにあるコンテンツ(記事・イベント)目当てなので、やはりコンテンツの重要性を再認識し、戦略的なコンテンツ設計・企画・制作を強化していきます。データ活用に関しては、今後のNECのマーケティング戦略を明確にし、その実現に必要なシステム構造を明らかにしてデータ収集の仕組みを整える一方、来訪者のジャーニーデータなどを活用して適切なナーチャリング、後段施策への落とし込みにつなげるような、一連のマーケティング施策としての目的を持った一貫性のあるデータ活用の仕組みづくりも必要だと考えています。

――2024年にチャレンジしたい取り組みを教えてください。

3月のリニューアルオープンに向け、ターゲット層へのヒアリングも行いながら、カテゴリ見直しや顧客課題軸での特集検討など、UX観点を改善したサイトへの一新を目指しています。リニューアル後のwisdomを活用したターゲティングアプローチをいくつか試しながら、デジタル上での一連のマーケティング施策の型をつくり、オウンドメディアの有効的な活用強化を推進していきます。また、生成AIを用いた業務の効率化やコンテンツの質の向上にも挑戦していきたいです。2023年はコンテンツの制作で一部用いましたが、業務に生成AIはそこまで利用できていませんでした。進化を続ける生成AIの業務での活用について、これからも模索していきたいです。

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Edited by DIGIDAY[日本版]編集部