明石家さんまさんがこの年末年始ダントツの存在感を見せている。その理由とは?(画像:「明石家サンタ史上最大のクリスマスプレゼントショー2023」公式サイトより)

12月も下旬になり、テレビでは年末特番ラッシュの時期に突入しました。各局がレギュラー番組の年末特番に加えて、「M-1グランプリ」(ABC・テレビ朝日系)のような年に一度の特番など、年の瀬を感じさせるさまざまなものを放送しています。

さまざまな人気MCがいる中で、いまだダントツの存在感を見せているのが、明石家さんまさん。誰もが知る国民的タレントではありますが、「年末年始の顔」としての存在感は、ダウンタウン、所ジョージさん、内村光良さん、マツコ・デラックスさん、有吉弘行さん、くりぃむしちゅー、千鳥ら他のMCを寄せ付けないほど圧倒的なものがあります。

明石家さんまさん、怒涛の年末特番ラッシュ

下記に、さんまさんが12月下旬から正月三が日に出演する年末年始特番をあげていきましょう。

12月
20日「超ホンマでっか!?TV マンガ大賞2023」(フジテレビ系)
22日「爆笑!明石家さんまのご長寿グランプリ2023」(TBS系)
24日「明石家サンタ史上最大のクリスマスプレゼントショー2023」(フジテレビ系)
25日「第14回明石家紅白!」(NHK総合)
26日「年末爆笑 さんま御殿!!」(日本テレビ系)
30日「アメトーーク!年末5時間40分SP」(テレビ朝日系)

1月
1日「さんタク」(フジテレビ系)
2日「さんまのまんま新春SP」(関西テレビ・フジテレビ系)
2日「笑ってコラえて!新春SP」(日本テレビ系)
3日「さんま・珠緒のお年玉!あんたの夢をかなえたろかSP2024」(TBS系)

2010年代から、それまで“風物詩”として放送されてきた「輝く!日本レコード大賞」(TBS系)や「NHK紅白歌合戦」(NHK総合)などの年末特番に懐疑的な声があがり、年始特番も「正月らしい」と言われるのは「新春!爆笑ヒットパレード」(フジテレビ系)や「箱根駅伝」(日本テレビ系)など日中の特番のみになりました。

テレビから風物詩としての年末年始特番が減る中、なぜさんまさんだけがこれほど求められているのでしょうか。現在68歳と一般企業なら定年を越えた年齢でも求められ続ける理由を、業界内の声を交えて掘り下げていきます。

まず前述した年末年始の特番にスポットを当ててみましょう。

さんまさんはMCを務めるレギュラー番組「踊る!さんま御殿!!」「ホンマでっか!?TV」の年末特番に加えて、年末年始恒例の「ご長寿グランプリ」「明石家サンタ」「明石家紅白」「さんタク」「さんまのまんま」「夢をかなえたろか」に出演。さらに年末年始限定のスペシャルゲストとして、「アメトーーク!」のさんまVS売れっ子若手芸人と「笑ってコラえて!」のダーツの旅にも出演します。

長年、人々を楽しませてきた“年に一度の特番を仕切る大ベテランのMC”でありながら、毎週放送される“レギュラー番組のバリバリ現役MC”でもあり、他のレギュラー番組に特別感を加える“年に一度のスペシャルゲスト”にもなれる。番組内容も役割もバリエーションが豊富であることが、さんまさんの強みを裏付けています。


「アメトーーク!!」さんまVS売れっ子若手芸人(画像:テレビ朝日公式ホームページ)

さんま主催の「忘年会」「新年会」

同じお笑いBIG3のタモリさん、ビートたけしさん。同世代の笑福亭鶴瓶さん、所ジョージさん。ひとつ下の世代のダウンタウン、ウッチャンナンチャン。業界内で称えられているのは、これらの大物たちがMCやご意見番のようなポジションになりがちな中、さんまさんだけは、自らも笑いを取りにいく姿勢を変えないこと。ボケを振り、ツッコミを入れるだけでなく、自らボケ、ツッコミを入れられることも怠らない姿勢が、大ベテランでありながらも強烈な“現役感”を放つことにつながっています。

テレビ業界にとっての年末年始特番は、お祭り騒ぎ。「大いに笑って一年を締めくくってもらおう」という忘年会であり、「年明けのおめでたいムードの中笑いで盛り上がってもらおう」という新年会のようなイメージがあるものです。

キャストには、さまざまな世代のタレントやアーティスト、アスリート、文化人などが集められるだけに、MCに求められるのは、あらゆる出演者とトークを交わせるスキルとキャラクター。その点で今なお、さんまさんほどの適任者はいないようです。

世間では「忘年会も新年会もスルーしたい」という人が増える中、「テレビの中くらいはお祭り騒ぎしてもいいのではないか」と感じている制作陣と視聴者にとってお祭り騒ぎが見られる、さんまさんの年末年始特番は風物詩になっているのではないでしょうか。

前述したように年末年始特番は、さまざまな立場のさまざまな世代が集まるだけに、「ベテランMCでも難しさがある」と言われています。MCとしてのスキルはあっても、ベテランになると「年下世代に構えられてしまう」「トークが噛み合わず、弾みづらい」というケースがあり、いわゆる“裏回し”(MC以外の出演者が話を振ったりフォローしたりなど進行を手伝うこと)のタレントを用意するケースが少なくありません。

しかし、年下世代に構えられても、それを何とか崩そうと働きかけ、トークが弾まなければ自らボケて空気を変えようとするのが、さんまさん。何より、立場や世代を気にせずコミュニケーションを取ろうとし、特に多少無理をしてでも年下世代に食い込もうとする姿勢がスタッフたちをうならせています。


「さんタク」(画像:フジテレビ公式ホームページ)

年末年始だからこそ「元気」が響く

タレントではなく一般の人々も、年齢を重ねるほど、組織でベテランの立場になるほど、落ち着いたスタンスを取り、対人関係でも無理をしなくなっていくもの。さんまさんのように、年下世代との接点を自ら探ろうとしたり、年下に合わせようとする人は少なく、だからこそ定年の年齢を超えても現役バリバリとして活躍できるのでしょう。

もう1つ業界内でたびたび、さんまさんが称えられているのは、見た目の若々しさ。67歳には見えず、年齢を忘れてしまうほどの若々しさが、お祭り騒ぎしたい年末年始特番での活躍につながっています。

その若々しさは、単なる見た目のよさというよりも、表情や振る舞いからにじみ出る元気。表情豊かで愛嬌があり、いい意味で落ち着きがなく、年下がつけ入るスキもある。知り合いのディレクターが、「番組のど真ん中にいる人が元気に見えなければ、視聴者に元気を与えられない」とテレビのセオリーを語っていましたが、その象徴がさんまさんなのです。

「さんまさんは今年も元気だったな」と一年を振り返り、「さんまさんが今年も元気なんだろうな」と一年をはじめる。中高年層にとっては一年の節目に「自分も元気でありたい」と思わせられる存在なのでしょう。

もちろん、すべての人々がさんまさんを好きというわけでななく、「『俺が俺が』と前に出すぎる」「価値観が古くてついていけない」などと悪い意味で昭和のムードを感じてしまう人もいるようです。ただ、忘年会や新年会のようなお祭り騒ぎが好まれる年末年始特番に、そんな昭和のムードを持つさんまさんがフィットしやすいのも間違いないでしょう。

さんまさんがどの季節よりも若々しく、生き生きとした姿を見せる時期だけに、いつも以上に注目してみてはいかがでしょうか。

(木村 隆志 : コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者)