離職して3カ月、今後進む道がわからず、悩んでいる相談者。どうすればよいのでしょうか(写真: Pangaea / PIXTA)

→安井さんへのキャリア相談は、こちらまでお送りください。

現在30歳です。病気で離職し、3カ月が経ちました。気持ちが落ち込んで、先のことを決められません。 前職では長時間労働が常態化し、仕事も生活もうまくいかなくなりました。受診の結果てんかんと、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断されました。

会社全体が激務で殺伐とし、上司から理解を得ることも難しく、退職に至りました。 前職に就いた際に「この道でやっていくぞ」と思っていましたが、今は病気のこともあり、長時間労働がデフォルトの前職と同じ仕事に就くことはできません。 道が断たれた今、これからどんな仕事をすればいいのか・したいのかがまったく見えてきません。

これまで異職種で3社経験し、在籍した会社ではそれぞれ成果と呼べるものを出してきたと思っています。しかし、今は病気・障害のことが心の枷(かせ)になり、また経歴・年齢的にも特殊な資格や技能を持っていないことがコンプレックスに感じられ、余計にどうすべきかわかりません。 今後進む道を決めるための考え方やアクションについてアドバイスをいただけないでしょうか。

SC 無職

世の中完璧なヒトはいない


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何事に対しても完璧であるべき、という考え方をまずは捨てたほうがよいでしょう。現状を鑑みずに、ただ完璧であることを求めるのではなく、今の自分にとってのベストを尽くす。それでよいのです。

職業人として完璧な経歴やスキルを持っているべき、長時間労働をこなせる体力を持っているべき、良好で完璧なプライベートを持っているべき。これらはすべて幻想です。

世の中完璧なヒトなんていません。自分自身の特徴や性格、現状などを鑑みずに、ただ完璧になろうとすると人生つらいだけです。

それは誰にも言えるし、当てはまることです。

人間誰しも、いきなりスーパーマンに変身ができるわけではありません。
小さな日々の積み重ねの結果として、その昔スーパーマンだと思っていた理想の姿に辿り着ける。人生そんなものです。

SCさんのケースでは、以前と同様の仕事をこなすには困難な制約があるとのことですので、「働き方」という意味では、以前を前提とせずに、現状を前提としたゼロベースで考えたほうがよいでしょう。

さらに言うと、ご自身を「特殊な資格や技能を持っていない」と評していますが、世の中特殊な資格や技能を持っている方が少数ですから、その点で何も悲観的に考える必要はありません。

自分の強みやよいところに目を向ける

今SCさんにとって大切なのは、ご自身ができないことや、ないものに焦点を当てるのではなく、ご自身が今できることや、ご自身が持っているものに焦点を当てることです。

つまり、ご自身の弱点や足りない点ではなく、強みやよいところに焦点を当てる、ということです。

人間誰しも、よい点や悪い点、できることやできないこと、向き不向き、強みや弱みを持っているものです。

完璧になろうとする必要はありません。

皆それぞれが、弱点やできないこと、向かないことなどを抱えながら、人生を生き、仕事をし、日々の生活をしているのです。

それらを鑑みずに、ただ完璧であろうとすると苦労するだけですし、自分自身を追い詰めてしまうだけで、何の得もありません。

すべてにおいて完璧であろうとせず、今の自分にとってのベストを目指しましょう。

今の自分にとってのベストをクリアしたうえで、その次の自分にとってのベストを追求する。

そうやって、自分自身と向き合いながら、キャリアも人生も少しずつ前に進めばよいのです。

SCさんは現在30歳ということですから、短期的な視点で物事を考えるのではなく、長期的に職業人として、いち生活者としてどう生きるか、を考えたほうがよいでしょう。

自分のよいところは何か。今の自分にできることは何か。今の自分にとってベストの働き方は何か。今までの経歴を考えたときに、次に何をするのがベストか、そういったことを考えてみましょう。

SCさんは、特殊な資格や技能がないと言いますが、今までの3社においても成果を上げてきていますから、そこにはご自身でも気がついていない強みがあるハズです。

異なる職種にもかかわらず、成果を出せたのは何がよかったのか。どういったタイプの仕事で成果を出せたのか。チームワークでやるタイプか、1人作業が得意なのか。

例えばそういった部分を分析することで、今まで見えていなかった自分の強みが見えてくるかもしれません。

また、長時間労働を前提とせず、短期的な集中力などでこなせる仕事があるかどうかを調べてみましょう。

どの程度の時間や負担であれば今の自分にこなせるか。

そうやって、今の自分にできること、そしてその中でできるベストは何かを考えるほうがよいでしょう。

いきなり短期的にすべてを求めたり、完璧を求める必要はありません。
長い人生がこの先控えていますから、長期的な目線で、ゆっくりと自分のペースで長距離走を走ればよいのです。

その際に自分のペースを知っているか否かは非常に大切ですし、何よりもその自分のペースで進むことが大切なのです。

であるからこそ、まずは自分を知り、現状をキチンと把握して、現状にあったベストを探す、というプロセスが必要なのです。

そうやって、今の自分にできることを少しずつ増やしていき、自分の経験も、できることも、そして自分自身に対する自信も徐々に増やしていけばよいのです。

最終的にどこまでやれたがが大切

少なくとも、焦って完璧でいようとして、自分自身を苦しめるよりは、長期的な目線で考えたほうがよいでしょう。

その時々はゆっくり進んでいるように見えるかもしれませんが、人生においては、今現在どこにいるのかよりも、最終的にどこまで行けたか、どこまでやれたか、が大切なのです。

「今の自分」はその時々において変わるものです。

大切なのは、昨日よりも今日、今日よりも明日の自分がキチンと大きくなっていることです。

そのような小さな積み重ねが、やがて大きな成果につながるのです。そしてヒトはそれを成長と呼びます。今の自分と、将来の自分の差分が成長です。

SCさんにとって大切なのも、現状を無視した完璧を短期的に求めることではなく、今の自分を徐々に、一歩一歩大きくしていくことです。

キチンと自分と向き合い、自分と会話し、その中で今の自分にとってのベストの選択肢を探って、ベストな成長を噛みしめて前向きに生きましょう。

SCさんがそのようなスタンスで焦らず、今の自分とキチンと向き合い、今の自分にとってのベストを探し、一歩一歩できることを増やし、着実に人生の階段を上がられるであろうことを応援しております。

(安井 元康 : 『非学歴エリート』著者)