ADHD治療薬の長期使用で「脳卒中」や「心筋梗塞」などの心血管疾患リスク上昇

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スウェーデンのカロリンスカ研究所らの研究グループは、「ADHD治療薬の長期使用と心血管疾患リスク上昇の関連が認められた」と発表しました。この内容について、中路医師に伺いました。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した内容とは?

スウェーデンのカロリンスカ研究所らの研究グループが発表した内容について教えてください。

中路先生

スウェーデンのカロリンスカ研究所らのグループは、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の治療薬と心血管疾患(CVD)の関連性を調べる研究を実施しました。研究結果は学術誌「JAMA Psychiatry」に掲載されています。

研究グループは、2007年1月~2020年12月31日にスウェーデンでADHDの診断を受けた、もしくはADHD治療薬が処方された患者のうち、心血管疾患と診断された症例群1万388人と、心血管疾患と診断されなかった対照群5万1672人を対象に研究を実施しました。対象となった人の年齢中央値は、症例群と対照群ともに34.6歳でした。追跡期間中のADHD治療薬使用率については、症例群が83.9%、対照群が83.5%と同程度でした。処方された薬で多かったのは、「メチルフェニデート」「アトモキセチン」「リスデキサンフェタミン」でした。

研究の結果、ADHD治療薬の累積使用期間が0に対する調整後オッズ比は、累積使用期間が1年以下で0.99、1~2年で1.09、2~3年で1.15、3~5年で1.27、5年以上で1.23となり、ADHD治療薬の累積使用期間が長くなるほど心血管疾患リスクが高くなる傾向が明らかになりました。心血管疾患の種類別では、高血圧および動脈疾患でADHD治療薬の累積使用期間との関連が認められましが、不整脈、心不全、虚血性心疾患、血栓塞栓症、脳血管疾患に関しては統計学的に明らかな関連はみられなかったとのことです。

今回の結果を受けて、研究グループは「ADHD治療薬の長期使用に関しては、リスクとベネフィットを慎重に検討し、心血管疾患の徴候や症状を常にモニタリングすべきだ」と述べています。

心血管疾患(CVD)とは?

今回の研究で登場した心血管疾患について教えてください。

中路先生

心血管疾患は、心臓や血管に関連した病気のことを指します。脳に血液を送っている血管が詰まる「脳梗塞(脳卒中)」、心臓に血液を送っている血管が塞がる「心筋梗塞」、または全身へ十分な血液を送ることができない状態の「心不全」などがあります。また、下肢の動脈が細くなり詰まってしまう「閉塞性動脈硬化症」も当てはまります。

心血管疾患のリスクになり得る因子は、一般的に下記が挙げられます。

喫煙

高血圧

糖尿病

脂質異常症

CKD(慢性腎臓病)

肥満

高尿酸血症

加齢

家族歴

睡眠時無呼吸症候群

今回の発表内容への受け止めは?

スウェーデンのカロリンスカ研究所らの研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。

中路先生

今回の研究はあくまで後ろ向きの観察研究であり、直接的な因果関係があるとは言えませんが、ADHD治療薬の長期投与に関しては、心血管疾患の発症の兆候に関する経過観察の必要性が示唆されます。ただし、必要性のある治療薬を避けるべきではなく、患者・家族側と医師側の双方の話し合いでリスクとベネフィットを考慮した上で、安全な長期処方を選択することが望まれます。

まとめ

スウェーデンのカロリンスカ研究所らの研究グループは、「ADHD治療薬の長期使用が心血管疾患リスクの上昇と関連している」と発表しました。ADHD治療薬を長期間使用する際には、主治医とこうしたリスクについても協議する必要がありそうです。

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