金融機関・未上場企業「CSR企業ランキング」

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近年上昇が目立つ銀行(撮影:梅谷秀司)

信頼される会社をCSR(企業の社会的責任)と財務の両面から見つける「CSR企業ランキング」。総合ランキング、製造業編、非製造業編に続き、金融機関・未上場企業のランキングを紹介する(評価方法など、ランキングに関する解説はこちら)。

金融機関は人材活用、環境、企業統治+社会性の3分野に金融機関を対象とした財務得点を加えてランキングを作成している(400満点)。また、未上場企業は財務得点を使わずCSR得点(人材活用、環境、企業統治+社会性の合計点、300点満点)のみでランキングを作成している。

なお『CSR企業白書』2023年版には、金融機関は50位、未上場企業は40位まで掲載している。

金融機関1位は三井住友フィナンシャルグループ

金融機関の1位は三井住友フィナンシャルグループ(総合ポイント、393.7点、以下同)。人材活用1位、環境20位、企業統治+社会性5位といずれもトップクラスだった。役員等の報酬体系に社内外のESG目標・評価を評価項目として組み込むなど、経営レベルで社会課題解決への取り組みを推進する。環境改善に貢献する事業に使い道を限定した「グリーン預金」など、金融機関ならではの取り組みを進めている。


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人材面では、育児休業取得率が女性100%、男性90%、有給休暇取得率は82.2%といずれも高水準。女性管理職比率も20.7%に上る。障害者雇用にも積極的に取り組み、2021年度の雇用率2.82%はメガバンクトップだ。働きやすさの拡充やダイバーシティの推進が進んでいる。

2位は第一生命ホールディングス(390.7)。保険会社ではトップだ。事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指すイニシアティブ「RE100」に加盟。日比谷・豊洲両本社の全電力を水力由来に切り替えるなどして、2023年に消費電力量の100%再生可能エネルギー化を達成した。

3位は三菱UFJフィナンシャル・グループ(389.9)。事業を通じてSDGsの達成に貢献することを目的として、2019年度から2030年度までに累計35兆円(うち環境分野は18兆円)のサステナブルファイナンス実行を目標に掲げる。

4位は東京海上ホールディングス(389.5)。1999年から東南アジア諸国でマングローブの植林活動を実施。植林した面積は累計11,935ヘクタールに達する。植林の経済効果を算出し、ホームページ上などで公開もしている。

5位は日本生命保険(389.2)。多様な職種を設定し、総合職では資産運用やIT領域などに特化した複線型の「コース別採用」を実施。60歳以降の再雇用者は転勤転居範囲や出勤日数を選択可能とするなど、多様なキャリア選択に対応している。

金融機関では近年、銀行の上昇が目立つ。メガバンクは三井住友と三菱UFJに続き、みずほフィナンシャルグループ(381.3)が7位となり、すべて10位内にランクインしている。なお、証券では9位野村ホールディングス(376.0)、その他金融は17位リコーリース(344.6)が最高となった。

未上場企業の1位はNTTドコモ


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未上場企業の1位はNTTドコモ(289.4)で2年連続。同社は財務情報を開示しているため総合ランキングも対象。そこでも4位にランクインしている。

環境面では、1999年から「ドコモの森」づくりで環境保全を推進。森林管理組合やNPOと協働して植樹・間伐・下草刈り等を行い、地域交流の場としても活用している。「ドコモの森」は2022年3月時点で全国49カ所・約210ヘクタールに及び、21年度の活動回数は39回、参加人数は延べ308人と積極的な活動を展開している。

2位には285.9点でNTT東日本とサントリーホールディングスが並んだ。NTT東日本は、ICT時代のコミュニケーションの仕方やマナーをテーマに、小学校等へ社員を派遣して出張授業「ネット安全教室」を開催。これまで延べ3,810校、381,846人が受講している。サントリーホールディングスは、転職・起業を目的として45歳以降に自由選択定年で退職した社員を対象に、退職後3年以内であれば復職可能な「カムバック制度」を導入。社員の挑戦を後押しする。

4位はNTT西日本(285.2)。食品ロスの削減や食品リサイクル推進を目的に、IoT等の情報通信技術を活用した「地域食品資源循環ソリューション」を提供している。

5位はファミリーマート(275.8)。各本部にSDGs推進リーダーを選任して、従業員がサステナビリティを体感できる企画などボトムアップ型の活動を推進する。

以下、6位NTTコミュニケーションズ(274.0)、7位トヨタ車体(265.8)、8位日立ハイテク(264.3)と続く。上位にNTTグループが目立つ結果となった。

近年は、未上場企業もCSR・サステナビリティの取り組みを強く意識するようになっている。「CSR企業総覧」2023年版掲載の未上場企業は62社と、同2020年版の44社から徐々に増加している。取引先や就活生を意識してCSR・サステナビリティの取り組みを推進する未上場企業は今後さらに増えるかもしれない。 

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(村山 颯志郎 : 東洋経済『CSR企業総覧』編集長)