法務局が杉田水脈議員に行った「啓発」措置の意味 アイヌ差別投稿「人権侵犯」認定
自民党の杉田水脈衆院議員がブログなどでアイヌを差別する投稿を行ったとして、札幌法務局は人権侵犯にあたると認定し「啓発」を行ったと北海道新聞が9月19日、報じた。
法務省人権擁護局によると、「啓発」は人権侵害の申告があった事案に関して法務局が調査し、必要に応じて講じる措置のうちの一つ。同省ホームページでは「関係者や地域に対し、人権尊重に対する理解を深めるための働きかけを行う」と説明している。
●7種類のうちで最も軽い措置
法務省の人権相談は、2004年の訓令「人権侵犯事件調査処理規程」に詳細が定められている。
被害申告を窓口や電話、インターネットで受け付け、必要に応じて職員や人権擁護委員が調査。侵犯事実の有無を判断し、以下の7種類のうち適切な救済措置を講じる。
【援助】関係機関への紹介、法律上の助言等を行う。
【調整】当事者間の関係調整を行う。
【説示・勧告】人権侵害を行った者に対して改善を求める。
【要請】実効的対応ができる者に対し、必要な措置をとるよう求める。
【通告】関係行政機関に情報提供し、措置の発動を求める。
【告発】刑事訴訟法の規定により、告発を行う。
【啓発】事件の関係者や地域に対し、人権尊重に対する理解を深めるための働きかけを行う。(法務省HPより)
反省を促し、善処を求める「説示」や、人権侵犯をやめさせ、繰り返させないために文書で事実を摘示する「勧告」などに比べ、最も軽いと言える。啓発は、人権侵害の事実が認められなかった場合でも出せるが、今回はアイヌの女性の申し立てに応じて、人権侵犯の事実が認定されたと報じられており、一定の救済措置として行われたと考えられる。
杉田議員は2016年、国連会議の参加者についてブログやSNSに「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場」「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」などと投稿したとされている。
2018〜2022年の法務省統計では、アイヌの人々に関する人権侵犯事件は2022年に「援助」が1件のみとなっている。