(漫画:©︎三田紀房/コルク)

記憶力や論理的思考力・説明力、抽象的な思考能力など、「頭がいい」といわれる人の特徴になるような能力というのは、先天的に決められている部分があり、後天的に獲得している能力は少ないと考える人が多いのではないでしょうか。

その考えを否定するのが、偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠氏です。漫画『ドラゴン桜2』(講談社)編集担当の西岡氏は、小学校、中学校では成績が振るわず、高校入学時に東大に合格するなんて誰も思っていなかったような人が、一念発起して勉強し、偏差値を一気に上げて合格するという「リアルドラゴン桜」な実例を集めて全国いろんな学校に教育実践を行う「チームドラゴン桜」を作っています。

そこで集まった知見を基に、後天的に身につけられる「東大に合格できるくらい頭をよくするテクニック」を伝授するこの連載(毎週火曜日配信)。連載を再構成し、加筆修正を加えた新刊『なぜか結果を出す人が勉強以前にやっていること』が、発売後すぐに3万部のベストセラーとなっています。第81回は、東大生が1冊の問題集を使い込む理由について解説します。

この連載のほかの記事はこちらからご覧ください。

東大生は1冊の問題集をひたすら解く


「東大生は、さぞ膨大な量の参考書を解いているのだろう」と思われる人も多いでしょう。

実際は、多くの東大生はあれこれ手を出さず、同じ問題集や参考書を繰り返し解いて受かる人のほうが多数派です。

網羅的な情報が載っている学校で支給された教科書などを、ボロボロになるまで何十周もやり込む人だっています。

なぜ東大生は1冊の問題集をやり込む勉強をしているのか、その疑問に対する回答がわかるシーンが、『ドラゴン桜』にはあります。こちらをご覧ください。

※外部配信先では漫画を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください





(漫画:©︎三田紀房/コルク)





(漫画:©︎三田紀房/コルク)





(漫画:©︎三田紀房/コルク)





(漫画:©︎三田紀房/コルク)





(漫画:©︎三田紀房/コルク)





(漫画:©︎三田紀房/コルク)



(漫画:©︎三田紀房/コルク)

さて、この漫画にあるように、東大生はあれこれ新しい問題集に手を付けません。どれも中途半端に終わって焦るのを避けるためなのか、ずっと同じものを繰り返し勉強していたという東大生は非常に多いです。

この勉強法のいちばんのメリットは、反復によって生まれる自信です。

同じものを繰り返していると、以前は解けなかった問題が、だんだんできるようになっていきます。そうすると自分の成長が実感できるため、自信が生まれてさらなる勉強のモチベーションが生まれるわけです。

受験には不安や焦りといった気持ちがつきものですが、このように何度も同じものを繰り返した結果、実力アップだけではなく、メンタルの安定にもつながっていくのです。

逆に、新しいものに手を付けるのは、十分に実力がついて次のレベルに挑む準備ができたと判断したときか、明確になった自分の弱点をつぶすピンポイントの対策本に取り組むときですね。

前者のケースであれば当然もう自信がついているでしょうし、後者であれば弱点という不安要素が消せるため、いずれにせよメンタルの安定につながっていきます。

中途半端な理解で新しい問題集に手を付けると…

もしこれが中途半端な状態で新しいものに手を付けると、「わかっているつもりが、実はわかっていなかった」という状態になりがちで、勉強しているのに結果がなかなかついてきません。そうしてやる気や自信を失い、成績が下がって、またやる気も自信もなくなるという負のスパイラルに陥ってしまうのです。

もちろん同じ問題集を繰り返している受験生はほかにもたくさんいるでしょうが、東大生は反復の数や精度が違います。「やり込むうちに図の位置や解説のページ数まで覚えてしまった」なんて話はザラですし、苦手な問題は手が勝手に動くレベルまで何度もやったという人も多いです。

私は東大受験を3度経験しましたが、本当にやり込んだんだろうなと思わされるくらい付箋や書き込みがビッシリあったり、ボロボロになるほど使い込まれた問題集や参考書を受験会場で毎年たくさん見てきました。

そのくらいやり込むので、問題集や参考書への思い入れがどんどん深まり、受験が終わりに近づく頃には自分の相棒や、戦友のように感じられるほどになります。そのため、東大生は問題集の話でお互いに盛り上がるわけです。

「これがなければ私の合格はなかったんです!」とつい熱っぽく語ってしまうことも珍しくありません。いろんな思い出が詰まっているため、「受験が終わっても、使った問題集が捨てられない」なんて話もよく聞きます。

泥臭く努力を積み重ねている

東大生は生まれつき頭がよくて、要領よく勉強して軽々受かるというイメージがある人もいるかもしれません。ですが、決して才能にまかせて苦もなく合格したわけではなく、こんなふうに泥臭く努力を積み重ねていた人がほとんどです。

月並みですが、努力は嘘をつかないということですね。いろいろな問題集に手を出して勉強の成果が出なかったり、なかなか自分に自信が持てないということがあれば、とにかく同じものを繰り返しやってみてはいかがでしょうか。ボロボロになるくらいまでやり込めば、自信も実力も大きくつくはずです。

(青戸 一之 : 東大卒講師・ドラゴン桜noteマガジン編集長)