科学やエビデンスを重視する近代医療とは異なり、以前は傷口ではなく人を傷つけた武器の方に薬を塗りたくる武器軟こうなど、半分おまじないのような治療法が横行していました。そんなオカルト医療の中でも特に奇妙なものを、科学系ニュースサイトのScienceAlertが5つ厳選して紹介しています。

Mummy Powder And Fart Sniffing: The Weirdest Medical Treatments We Once Relied On : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/mummy-powder-and-fart-sniffing-the-weirdest-medical-treatments-we-once-relied-on

◆1:おなら入りのつぼ

ペストの流行は歴史の中で幾度となく社会を恐怖に陥れてきましたが、それは1660年代のイングランドを襲ったロンドンの大疫病も例外ではありませんでした。



by Heather

当時の医師たちは、「ペストは悪臭がする毒の空気によって感染するので、同じくらい強力な悪臭で対抗すれば感染の確率を減らせる」と確信しており、悪臭を常備するためにわざわざ家で家畜を飼うロンドン市民もいたとのこと。

さらに手頃に悪臭をストックしておくアイデアが、おならを封入したつぼでした。これを使って、例えば路上に積み上げられた死体の匂いなど危険な悪臭を嗅いでしまった時に急いでおならを嗅いでペストを予防しようと、当時の人は考えていたそうです。

◆2:輸血ならぬ輸乳

血液型が発見される前は、人から人への輸血を受けた患者の半分が命を落としていました。そのため、17世紀頃から動物の血の輸血が試みられるようになり、その後1800年代後半になると動物の血の代わりに牛やヤギのミルク、さらには人の乳を使うのが一般的になったとのこと。



by Wellcome Collection

当時の医師たちは、ミルクに含まれている白い脂肪の粒子が白血球の代わりになると期待して、輸血の代わりにミルクを使用しました。とはいえ、ミルクを血管に注入する治療法はしばしば患者の死を招いたため、廃れるのに時間はかからなかったそうです。

◆3:ミイラパワーならぬミイラパウダー

中世ヨーロッパの薬屋では、エジプトのミイラを砕いた粉が薬として売られており、12世紀以降にはミイラ薬である「Mumia」が打撲や頭痛、外傷、がん、痛風、うつ病などさまざまな治療に使われるようになりました。



by Bullenwächter

しかし、16世紀に入ると医師たちは何かがおかしいことに気づき、Mumiaの効果に疑問を抱き始めます。実は、この治療法の根拠とされていた古文書では、「ミイラを作る際に使われる天然アスファルトは傷や骨折を癒やし、解毒剤としても役立つ」と主張されており、これが誤訳された結果ミイラそのものが薬になると信じられてしまったのが、間違いの原因でした。

Mumiaに効果がないことが判明した後もその人気は根強く、ドイツの製薬会社が1924年に作った薬価表にもミイラの粉末の価格が記載されていたとのことです。

◆4:クジラの死体ホテル

19世紀末のオーストラリアのホテルでは、クジラの死体の中で寝るという奇妙な治療法が流行したとのこと。1899年当時の新聞には、関節リウマチの患者を死んだクジラのところまで連れて行き、死体に穴をあけてその中で2時間寝るよう指示するという治療法が紹介されています。



この治療法は、捕鯨基地の近くの浜辺をうろついていた酔っぱらいの男性がクジラの死体を発見し、腐った脂肪の中に頭から突っ込んでみたところ、酔いが覚めると同時にリウマチまで治ったと主張したことにより広まりました。

◆5:キャベツ万能薬説

キャベツは、現代でもビタミンや食物繊維が豊富な野菜として重宝されてますが、古代ローマではあらゆる野菜より健康にいい万能薬としてさまざまな治療に用いられていました。例えば、古代ローマの著名な学者である大プリニウスは、「キャベツへの賛辞をすべて列挙するのはあまりに大変な仕事になるだろう」と記しています。食材としての利用にとどまらず、大プリニウスは難聴の治療のために温かいキャベツの汁を耳に流し込むことを推奨していました。

また、ローマの歴史家である大カトーも、キャベツの健康効果をうたった書物の中で「キャベツは消化を促進する優れた下剤であり、キャベツを食べた人の尿は何にでも効く」と述べています。

発想力豊かなキャベツの利用法は現代にも受け継がれており、SNS上では「キャベツをかぶると毒素が体外に出て熱が下る」という言説が話題になったことがあります。