夏の小倉開催2週目に行なわれる重賞は、サマースプリントシリーズ第4戦のGIII北九州記念(8月20日/小倉・芝1200m)だ。今年も、サマースプリントシリーズ第2戦のGIII CBC賞(7月2日/中京・芝1200m)の上位組をはじめ、「夏のスプリント王」を目指す好メンバーが顔をそろえた。

 ただし、過去の結果を振り返ってみればわかるとおり、ひと筋縄とはいかない一戦だ。その点について、日刊スポーツの太田尚樹記者が語る。

「穴党にはたまらない"荒れる重賞"だと思います。過去10年の配当を見れば、それは歴然。馬連の平均配当が1万1794円、3連単の平均配当も59万6441円と、かなりの高額です。3連単に至っては、2017年に100万円超え、2014年には300万円超えと、超ビッグな配当が2度も飛び出しています」

 高額配当が生まれる背景には、人気薄馬の激走が目立っていることが挙げられる。さらに「最大の要因は1番人気の不振にある」と、太田記者は言う。

「北九州記念において、1番人気は2008年にスリープレスナイトが勝って以来、現在14連敗中。直近10年を見ても、0勝、2着3回、3着1回と振るわず、半数以上が馬券圏外に沈んでいます」

 そして今年は、ともに前走で芝1200mの重賞を勝っているモズメイメイ(牝3歳)とジャスパークローネ(牡4歳)の人気が予想されるが、太田記者は「これらが作り出すペースが波乱を呼ぶのではないか」と言って、こんな見解を示す。

「追い込み馬が波乱を起こした昨年と同様、今年も展開がカギになると思います。前走で重賞を勝って、上位人気になりそうなモズメイメイとジャスパークローネはともに逃げ馬。加えて、小倉で行なわれた昨年のCBC賞をレコードで逃げきったテイエムスパーダ(牝4歳)もいますから、間違いなくハイペースになるでしょう。となれば、今年も後方待機組から穴馬を探すのがよさそうです」

 そこで、太田記者は人気の盲点になりそうな実力馬2頭を穴馬候補に挙げた。

「まず気になるのは、スマートリアン(牝6歳)です。


北九州記念での勝ち負けが期待されるスマートリアン

 北九州記念は、目下牝馬が9年連続連対中。過去10年の結果を見ても、牝馬が6勝、計11頭が連対しており、牡馬を上回る成績を残しています。そして、この馬自身も石橋守調教師曰く『この時季に強い』という、いわゆる"夏馬"です。

 昨夏も、小倉で行なわれたCBC賞で4着と奮闘。駐立が悪く、伸び上がるような発馬で出遅れたものの、イン有利の馬場にあって大外から追い上げました。まさしく"負けて強し"の走りでした。

 前走のオープン特別・福島テレビオープン(7月16日/福島・芝1200m)では、序盤で挟まれて決してラクな展開ではなかったのですが、一枚上の決め手を披露して差しきり勝ち。6歳牝馬でも、今が旬だと思います。ハイペースの恩恵があれば、勝ち負けを演じられると見ています」

 太田記者が推奨するもう1頭も、実績のある牝馬だ。

「昨年の覇者、ボンボヤージ(牝6歳)です。昨年も16番人気で勝利し、同レース以降は3戦連続のふた桁着順。再び人気薄となりそうですが、今年に入ってからの2戦は、不向きな1400m戦と不良馬場のレースで度外視できると思います」

 今回は約5カ月ぶりの実戦となるが、中間の調整自体は申し分ない。

「鞍上の川須栄彦騎手からは、以前は『調教で難しいところがある』と聞いていましたが、最近はトレセンでもスムーズに調整できています。

 小倉コースは6戦3勝、2着1回と好相性。川須騎手とのコンビでは5戦3勝、2着1回と、その信頼度はさらに増します。1年前と同じく良馬場でのハイペースとなれば、再度出番がありそう。楽しみです」

 波乱必至の夏のスプリント重賞。人気馬たちが生み出す速い流れを味方にして、ここに挙げた伏兵2頭の激走があってもおかしくない。