実はNGです「エスカレーターの片側空け」…条例で制定も”一般常識”とは乖離 実はメリットも?
エスカレーターでは、歩く人のために片側を空ける光景が見られますが、これは実はNGとされています。むしろ、両側に立つことで輸送効率がアップしたという事例もあるなか、なぜ浸透しないのでしょうか。
関東は右、関西は左を空けがち
鉄道各社の公式サイト、およびYouTubeチャンネルなどで数年前から呼びかけが続いているのが、「エスカレーターの乗り方」についてです。これは、日頃”一般的”と利用者が考えるものと大きくかけ離れたものとなっています。
エスカレーターの歩行や「片側空け」をしないようにする対策が行われている。写真はイメージ(画像:bee32/123RF)。
2人が並べる構造のエスカレーターでは、特に関西では左側を、関東では右側を空ける習慣があります。これはどちらか片側を空ける乗り方が、「急いでいる人のために通路を確保するもの」と根付いてしまっているためとされています。
実はこの“片側空け”の慣習は誤りで、一般社団法人 日本エレベーター協会も「エスカレーターの安全基準は歩くことを想定しておらず、ハンドレール(ベルト)をつかんで立ち止まることを前提にしている」としています。つまりそういったエスカレーターでは2列に並び、「歩かず、立ち止まって、手すりにつかまる」というのが正しい乗り方とされています。
過去に大阪メトロがこれに関する動画を投稿しました。ここでは、エスカレーターで歩くことの危険性についても啓発。立ち止まっている人にぶつかればお互いが転倒するリスクがあります。また手すりにつかまらなければ、エスカレーターが非常停止した際に転倒することも考えられます。大阪メトロは「自分だけでなく周りの人も巻き込んでしまうため、正しい乗り方を守って欲しい」と呼び掛けています。
また、このほか、JR東日本をはじめとする鉄道各社が「エスカレーターは立ち止まるよう」啓発を呼びかけているほか、名古屋市では、2023年10月に、「エスカレーターの利用者は、右側か左側かを問わず、エスカレーターの踏段上に立ち止まって利用しなければなりません」という義務を課した、「名古屋市エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」条例を施行する予定です。
でも浸透しない「片側空け」…なぜ?
その一方で、まだ「片側空け」のマナーはまだ残っているといえるでしょう。
乗りものニュースが過去に実施した読者アンケートでは、777人中、2人用エスカレーターを「片側を空けて立ち止まって」利用する人が66.8%、「歩くスペ―スは考慮せずに立ち止まって」利用する人が13.3%で、「歩いて」利用する人は19.9%でした。なお、立ち止まって乗る人が約8割、歩く人が約2割というのは、「1人分の幅しかないエスカレーター」でも、ほぼ同じ割合です。これらの「片側空け」派からは、次のような意見が挙がっています。
・いまだに歩くのが正義と思い込んでいる人とのトラブルを避けるため(40〜44歳、男性など複数)
・慣れでつい、そうしてしまうから(〜19歳、男性など複数)
・同調圧力(35〜39歳、男性など複数)
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なお、エスカレーターの両側に立ち止まって乗ることを呼び掛けるキャンペーンを実施していた日本エレベーター協会(東京都港区)は、エスカレーターで片側空けをしないメリットを次のように話します。
「両側に立っていただくことで、エスカレーターの輸送効率も向上します。エスカレーターを歩けば、その人にとっては到達時間の短縮になりますが、エスカレーターに同時に乗れる人数は減ってしまうからです。たとえば、朝ラッシュ時の駅に到着した電車から降りてきた人を一気にさばくうえでは、両側に立っていただくほうが効率がよいのです」