「売れた商品ランキング」2023年上半期・中部版

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(写真:イデア/ PIXTA)

2023年上半期「売れた商品ランキング」全国版、関東版、近畿版に続いて、今回は中部のランキングを紹介する。全国のスーパー、コンビニ、ドラッグストアなど、約6000店舗の販売動向を追っている「インテージSRI+」のデータを基に作成した。

ここでは、静岡、愛知、三重、岐阜の東海に新潟、長野、富山、石川、福井の北信越を加えた8県を「中部」とした。全国との違いを確認するため、「全国差」として中部版の値から全国版の値を差し引いた値も出している。

中部はインバウンド需要の恩恵が少ない?

売り上げが伸びた商品ランキング1位の検査薬は、前年比・2019年比ともに全国よりも大きく伸長。とりわけ2019年比では全国よりも84.6ポイントも差が見られた。一部の県で、2022年の夏だけではなく2022年末から2023年の初めにかけても医療逼迫の宣言が出され、抗原検査キットで感染有無を確認する需要が高まったためと推察される。

上位の顔ぶれで全国版と大きく異なるのは、強心剤やビタミンB1剤などインバウンド需要で伸長した商品がランキングに入っていないことだ。中部の前年比で、強心剤は103.0%(全国差−73.1ポイント)、ビタミンB1剤は107.1%(全国差−44.7ポイント)とほぼ横ばいとなっている。東海の都市部ではインバウンド需要が見られたものの、中部全体では需要が弱かったことがうかがえる。

中部で他の地域よりも上位に入ったのが、9位の防水・撥水剤。雨水をはじき、衣類・靴・カサを保護するためのスプレーで、コロナ禍の外出自粛により需要が落ち込んでいた。アフターコロナの外出増により需要の回復が見られたが、平年より降水量の多かった中部で販売がとりわけ大きく伸長したようだ。

一方、18位の鼻炎治療薬は前年比117.3%(全国差−7.2ポイント)と伸びが小さい。降水量の増加により花粉の飛散量が減った結果、需要が伸び悩んだものと考えられる。

中部で「売り上げが落ちた」商品の顔ぶれ

続いて、販売金額が落ちたもののランキングを確認したい。前年比で全国よりも落ち込みが大きかったのが、15位の滋養強壮剤。アミノ酸・生薬などを主成分とするビタミン含有の医薬品(ただし、1本飲みきりタイプの液剤を除く)で、訪日観光客に人気となっている錠剤タイプの商品があることから、インバウンド需要の弱さが苦戦の要因と言えるだろう。

2位の殺菌消毒剤についても、感染予防のための手指消毒用のものでは全国との差がほとんど見られなかったが、インバウンド需要の苦戦からか、傷薬タイプは全国よりも伸び悩んだ。

2019年比で全国よりも伸びが目立ったのが、3位のオートミール1,157.9%(全国差+15.4ポイント)と4位の玩具メーカー菓子192.3%(全国差+14.1ポイント)だ。

関東版のランキングで紹介した通り、急成長前のオートミールの市場は関東が中心だった。東海でも急成長前から一定の規模の市場があったものの、北信越で市場が急増したため、中部では全国を上回る成長が見られたようだ。

玩具メーカー菓子では、2019年比が全国を上回ったのに対し、前年比は全国を下回った。玩具メーカー菓子の2019年比を牽引したのは東海。2022年に他の地域よりも大きく伸長したため、2023年に反動で減少したと見られる。



(木地 利光 : 市場アナリスト)