オーストラリア&ニュージーランドで開幕した女子ワールドカップ。なでしこジャパンは22日にハミルトン(ニュージーランド)でザンビアに5−0で圧勝し、初戦を白星でスタートした。同日夜、テレビ東京のサッカー関連番組『FOOT×BRAIN』では、先週に引き続き、女子ワールドカップ応援企画を放送。前編は熊谷紗希&澤穂希さんとの対談と、藤野あおばインタビューを中心にしたもので、それぞれのワールドカップへの想いが詰まった内容だったが、後編は長谷川唯&長野風花のボランチコンビと澤さんで「ボランチ論」を語り合った。


2011年のW杯優勝時、ボランチとして活躍した澤穂希さん(中央)と語り合った長野風花(左)と長谷川唯(右)

 なでしこジャパンがステップアップするために、澤さんが体験談を交えながら、ボランチの2人の本音を引き出していった。最初は緊張していた2人も、徐々に心を開いていく様子が画面からも伝わってくる。収録時は、ワールドカップ初戦を迎えるにあたり、国内合宿時ではまだ課題が多く、改善へ向けて模索中だった。初戦を見れば、ここで語っていた課題が克服されていることがよくわかる。

 前編同様、番組には入り切らなかったこぼれ話をご紹介。まずは、澤さんが緊張する2人をほぐすために、所属チームでの様子を聞くと言葉があふれ出した。

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長野風花(以下、長野) リヴァプールは本当にサッカーが好きな選手の集まり。 一人ひとりがサッカーを楽しんでいるチームだと思います。まだ行って半年なんですけど、対戦相手がスペシャルな相手ばかりなので、プレッシャーの早さにも慣れた部分はあるんですけど、一番の成長はメンタルだと自分では実感していて。少しのミスでも気にしなくなりました。

長谷川唯(以下、長谷川) マンチェスター・シティに来る前にイタリアとイングランドの2チームでプレーしたのですが、マンチェスター・シティはサッカーのことを考えている人が多くて、戦術を気にする選手が多いですね。あと、マンチェスターの街並みがすごくいいので、住むのにもすごくいい街です。

 時間の経過とともに、会話が弾み、長谷川が抱える悩みをこぼす。

澤穂希(以下、澤) 周りの選手に細かく指示はしない?

長谷川 しているつもりなんですけど、元々の自分の感覚と前の選手の感覚がちょっと違うと思うので、自分の中で「左!」って言った時のコースの切り方がやっぱりちょっと違うな......と感じることがあります。

澤 そう感じた時、瞬時に『もうちょい左!半歩!』とかは言う?

長谷川 そうなんですよね......。一歩とか半歩とかの違いなんですけど、うしろを見ながら守備をうまくできる選手がいたり、まだ難しかったり。そういうところがあるので、難しいです。3バックで一番感じているのが、自分と風花の周りのスペースが膨大!ということ(笑)。

澤 あのスペースを2人で守るのはしんどいよね。

長谷川 そこを狙って取りきるっていうよりも、なるべく危なくない方向に入れさせることしかできなくなっちゃっていて。今までずっと4バックでやってきたというのもあるんですけど、3バックだと3枚のサイドの選手が結構前に出てきてくれないと難しいっていうのは、3バックをやり始めた頃から思っていることです。

澤 でもそこは、スペースを埋める意識をもっとこっちのサイドの選手に意識させないと真ん中だけに負担がかかる。そこは言ったほうがいいと思うよ?

長谷川 そうですよね。ウイングバックの選手も内側に入るのが難しくて、自分のうしろのスペースもあるし前のスペースもあるし......ってなった時に、インサイドハーフの人もそこまでうしろにいなくて、「誰がこのスペースをカバーするのか?」っていうのがまだまだで。

澤 ある程度、決めておくといいかも。同じプレーっていうのはないけど、ある程度こういう場面になったら、こういう感じ!っていう共通意識を持っていたほうがよかったりするかもしれないね。

【2人にとってW杯とは?】

澤さんの言葉に、長野、長谷川が引き込まれていく。そんな2人に澤さんがワールドカップについて聞き始めた。

澤 2人にとってワールドカップってどんな存在なんだろう? 唯ちゃんは2回目、風花ちゃんは初めてだよね?

長野 ワールドカップはずっと、超憧れでした! 子供の頃からの夢が"ワールドカップに出て優勝する!"だったんです。そのためにサッカーをやってきたから、「ワールドカップの舞台で勝つことが夢、だから夢の舞台に行くぞ!」って感じです。

澤 そういうところ!もっと出していいと思う。唯ちゃんは?

長谷川 元々男子サッカーのワールドカップを見て、「ここでサッカーをしたい」って思っていたので、ワールドカップは特別な場所です。本当に楽しみ。それと、前回大会はうまくいかなかったことがたくさんあったので、その反省を生かせるのは、前回出たメンバーだと思っています。そこを今大会初めて出場する人たちに伝えながら、しっかり反省を生かした大会にしたいです。

【感情を表に出せるようなチームに】

 ワールドカップ直前合宿を含め、ニュージーランドに入るまでの3週間を調整と最終強化に努めた。取材時は国内合宿の直前であったため、その間に取り組むべきことを聞いていた。

長谷川 シーズンが終わってから少し時間もあったので、しっかり休息も取れて、いいコンディションを作っていく3週間になると思います。チームとしても同じ様な形になるんですけど、大会前にできる試合がひとつということで、そこに向けてチームとしてどれだけ積み上げられるか。あとは、さっきもたくさん話したようにチームとして思ったことを、感情を表に出せる様なチーム作りをしたい。チームを変えるキッカケというものに、自分たちがなれたらいいな、と思います。

長野 自分たちの実力を出しても、届かないかもしれない相手との戦いなので、それに向かって自分も100%以上出せるようなコンディションや気持ちの強さをしっかり持っていきたい。チームとしては、戦術も大事ですけど、このチームで戦って勝ちたいっていう一体感も高めていきながら、思いっきり戦いたいです。

澤 コンディションを上げながら、ケガなく!っていうのが大事。"気持ち"を忘れていかないようにね!あとは楽しむことかな。私たちも、勝ち上がれば勝ち上がるほど楽しくて、早くサッカーがやりたくてしょうがなかったよね?(カンペ出しをしている宮間あやさんへいきなりのフリ)

宮間 楽しいって、わははは!の楽しいじゃなくて。真剣勝負をすることを楽しんでる。「あー楽しい!サッカーやろう!いぇーい」じゃなくて、「この対戦相手どうしようか?」っていうところを真剣に考えて、仲間のためを思ってプレーすることを楽しんでいた。そういう楽しみを感じて帰ってきてほしいな。

澤 みんなで勝てた時の喜びってすごくない?苦楽を共に過ごしてきた仲間と、1試合勝つだけですごくうれしいし、見えない景色をいい仲間と見られて幸せだった!

宮間 ......"見たことがない"景色、ね。

一同爆笑

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「今のなでしこジャパンの心臓部である2人の存在感の大きさを感じました。2人からはこの大会にかける想いも伝わってきたし、何より私も経験した同じポジションなので2人のプレーを見るのがすごく楽しみです。2人の関係性やコンビプレーなどをたくさんの人に注目してもらいたいです!」と、収録後に澤さん。とても頼もしい2人に目を細めていた。

 この収録で語られた長野、長谷川2人の想いは、初戦のピッチにしっかりと刻まれていた。今後のなでしこジャパンは初戦から中3日でコスタリカと、さらに4日を挟んで強豪スペインと対戦する。前編で登場した熊谷紗希、藤野あおばの両選手も含め、なでしこジャパンの戦いにぜひ、ご注目!