女優・小島藤子、求められ続ける“シリアスな難役“。「ここ数年、泣かない役はなかったんじゃないか」

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『小公女セイラ』(TBS系)、連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK)、映画『書道ガールズ!!わたしたちの甲子園』(猪股隆一監督)などで知られる小島藤子さん。

2018年、『馬の骨』(桐生コウジ監督)で映画初主演を飾り、『映画 としまえん』(高橋浩監督)、『グランマの憂鬱』(フジテレビ系)などに出演。

2023年7月20日(木)に初主演舞台『明けない夜明け』(芸術劇場 シアターウエスト)の公演を終えたばかり。母親が父親を殺すという事件を起こし、幼くして被害者の子であり、加害者の子になってしまった三姉妹の次女で主人公・恵を演じた。

 

◆初主演映画で苦手な歌とダンスに挑戦

小島さんの初主演映画『馬の骨』は、桐生コウジ監督が伝説のテレビ番組『三宅裕司のいかすバンド天国』(TBS系)にバンド「馬の骨」として出演した自身の体験を基に映画化。過去の栄光を忘れられない中年男性と平成生まれのアイドル歌手との奇妙な交流を描いたもの。

小島さんは、地下アイドルグループとして活動していたが、メンバーと衝突して脱退、ソロシンガーを目指す主人公・ユカを演じた。

「わりと少人数で撮影していて、すごく温かい現場でお芝居をしていたので楽しかったです」

−アイドル4人グループのうち、小島さん以外の3人は実際にアイドルだそうですね−

「そうなんです。みなさん、現役のアイドルで、私がライブを観に行っていたアイドルの方がいらっしゃったので、お会いしたときに『ライブを観に行ったことあります』って言いました。アニメがすごい好きなんですけど、声優さんとかもいらっしゃったのでうれしかったです」

−現役のアイドルに混じっての歌と踊り、そしてダンスはいかがでした?−

「運動神経も悪いし音痴なので、最初はものすごくドキドキしました(笑)。覚えるのが大変だったんですけど、『自分が思っているよりはちゃんとできているから自信もって』って励ましてもらったりしていました。

メンバーと先生に『自信の問題で、ビクビクしながらやるとダメ。アイドルはみんな自信をもってやるから頑張って』とアドバイスをいただいたりして。でも、3人はやっぱり圧倒的に覚えるのが早かったです。

アイドルの人って、すごいですよね。PVの撮影直前に振りの変更とかもあるらしくて、『すごいなあ』って思いながら、現場でもいろいろ教えてもらったりしていました」

−劇中ではグループ内で孤立して早々に脱退し、ソロシンガーを目指すことに−

「はい。歌も歌わなくちゃいけなかったし、ギターを弾くのは初めてだったので大変でした。人間関係はとてもゆるりとしていて、優しいステキな現場だったんですけど、とにかく自分が得意じゃないことを全部詰め込んだ感じでしたね(笑)」

−最後の歌は、小島さんご自身で作詞されたそうですが、「逆転劇を始めましょう」というフレーズがいいですね−

「ありがとうございます。『とりあえず思いついた言葉とかを色々書いてみて』と言われたので、メモしたものを持って行ったら、『これとこれを繋げたら良くない?』みたいな感じで桐生さんが繋げてくれて、あの歌詞ができました」

−まさに逆転劇でストーリーとピッタリでしたね−

「そうですね。何で思いついたんだろう(笑)。あれは、役のユカちゃんになって書いたものなので、観ていただいた方に『藤子ちゃんはこう思っているのか』って思われたときにちょっと恥ずかしくて(笑)。『違います、私じゃない。ユカちゃんです』って言っています」

 

◆深夜の「としまえん」でホラー映画の撮影

2019年、小島さんは、『映画 としまえん』(高橋浩監督)に出演。この映画は、今はハリー・ポッターの屋内型テーマ施設となっている場所(東京都練馬区)にあった老舗の遊園地「としまえん」の全面協力のもと撮影されたホラー。

仲良し女子大生グループの5人が軽い気持ちで、ネットで噂になっていた“としまえんの呪い”を試すことにしたところ、次々と恐ろしい怪現象に襲われ、1人ずつ姿を消していく…という展開。小島さんは、グループのリーダー的存在・杏樹を演じた。

−「としまえん」が全面協力でしたから、普段は入れないところにも行けたのでは?−

「はい。とても楽しかったです。しかも、お客さんがいない閉園してからの時間じゃないと撮影できないので、長丁場のときは深夜の遊園地にいたりして、なかなか経験できないことですよね。めちゃめちゃ楽しかったです(笑)。

−撮影のときには、「としまえん」がなくなるということもわかっていたと思いますが−

「はい。だから、余すことなく遊園地を撮っていたんですよね。『としまえん』の記念作品にもしたいと言っていたので。深夜の『としまえん』で撮影するなんて本当になかなかできない経験だったと思います。

もともとホラー映画が大好きで。ホラー映画への出演は2回目だったのですが、ガッツリ、エンターテインメントホラーみたいな怒涛の展開だったので、撮っていて楽しかったです」

−小島さんは、中1の頃からお仕事をされているので、女の子同士で怖いスポットに行くようなことはプライベートではあまりできなかったのでは?−

「そうですね。でも、怖いのは好きだし、観るのも大好きなんですけど、リアルなスポットに行くのはめちゃめちゃイヤなんですよ。怖くて(笑)。フィクションのホラーは大好きなんだけど、実際にいわくつきのところとかに行くと、何か連れて帰ってきそうで(笑)。だから、あまり行ったことがないです」

−そういう意味では、映画の撮影なのでタップリ楽しめたわけですね−

「はい。安心してやっていました。夜だったし、全体がお化け屋敷みたいな感じでおもしろかったです」

−今はもうない「としまえん」の記念映画になりましたね−

「そうですよね。今は配信されているので、『としまえん観た』って言ってくれる子が最近になってまた多くなってきて、みんな『としまえん』とか遊園地が好きなんだなって思いました」

−劇中、1人消え、また1人というなかで小島さんは最後の2人に−

「はい。(北原)里英ちゃんと2人になりましたね。『あっ、ずっと生き残っている。意外としぶとい』って(笑)。ゴーカートとかミラーハウスとか、いろいろあっておもしろかったですね。杏樹も自分のキャラと正反対な感じでした」

2022年、小島さんは、映画『漆黒天−終(つい)の語り−』に出演。幼い子どもとともに殺害される母・富士を演じた。

−舞台もやられたのですね−

「はい。映画は内容的には舞台の続きのお話なんですけど、映画を先に公開して。舞台はその前日譚で、過去をやるみたいな感じでした。映画では、私と幼い子どもが殺されて、その復讐がということになるんですけど、舞台はその前のお話で」

−時代劇の撮影はいかがでした?−

「私は舞台でお着物を着るのが初めてだったんです。舞台での時代劇は初めてだったので、やっぱり所作などは大変でした。ドラマのときみたいに、常に所作の先生がついているわけではなかったので、自分で勉強するみたいなことがいっぱいあって。

映画やテレビと違って、舞台では常にお客さんに見られているという感じなので、結構気を使いました。撮影だと撮り直しができますけど、舞台はそうはいかないので」

−舞台は東京と大阪で公演があって−

「はい。梅田(大阪)にも行きましたね。男性ばかりの現場に入るのが初めてだったんです。舞台は女性が少なかったりすることも多いんですけど、この舞台は、私以外全員男性で。男性陣は殺陣(たて)がすごく多い作品でもあったんですけど、私は要所要所に出てくる感じだったので殺陣はなくて。

男性陣は2.5次元作品などで活躍されている方も多く、めちゃめちゃからだが動くんですよ。稽古中に観ていても、殺陣とかがすごくカッコ良くて。

みんなすごくキャラが立っていてカッコ良かったので、自分も負けないように目立ちたいみたいな感じはありました。せっかく女性1人なんだから、男性陣に負けないでおいしいところをもっていきたいみたいな(笑)」

−実際にはどうでした?−

「終わった後のアンケートを見させていただいたときに、やっぱり女性1人って、それだけでも目立つみたいなんですけど、『富士さん(役名)カッコ良かったです』って書いてもらえることが多かったので、すごいうれしかったです」

舞台『明けない夜明け』
主催:演劇企画集団Jr.5(ジュニアファイブ)
作・演出:小野健太郎
出演:小島藤子 吉本実憂 誠子(尼神インター) 小野健太郎 奥田努ほか

◆初主演舞台の稽古で“人狼ゲーム”?

7月20日(木)まで初主演舞台『明けない夜明け』に出演していた小島さん。これは、17年前に母親が父親を殺すという事件を起こし、幼くして被害者の子であり、加害者の子になってしまった三姉妹がそれぞれ成長し、大人になってからの姿を描いたもの。

小島さんは主人公となる三姉妹の次女・恵役。服役していた母親が17年の刑を終えて出所することになり、複雑に揺れる心情を繊細に体現。三女・茉菜役に吉本実憂さん、長女・愛役は尼神インターの誠子さんが演じた。

−舞台初主演となりましたが、プレッシャーは?−

「最初にお話をいただいたとき、主演というのは、すごくありがたいなって思ったんですけど、映像でも舞台でも、人を引っ張るとか、まとめるのが得意ではないというのがすごくあって。

これまでの役柄のイメージなどから『すごい頭が良さそう』とか、『しっかりしていそう』とか言われるんですけど、実際は正反対なので。

芸術劇場のシアターウエストは、すごくステキな場所なので、自分がこの作品をよく見せることができるのかなとか、どれぐらいの人に伝えられるのかなとか、結構不安があって。この作品の前の作品に、『おはスタ』でご一緒させていただいた、しずちゃん(南海キャンディーズ)が出てらして。

前作の作品の映像をお借りして見させていただいたんですね。しずちゃんのお芝居が本当にすてきで、その姿に背中を押してもらったような気がして、『やります!』って言いました」

−お稽古が独特だったとか−

「そう。最初にみんなで全然関係ないゲームをしていました。(演出家の)小野さん的には、そのゲームをすることによって、お芝居での関係性とかにもつながるからというのもあるし、お芝居の技術的なところにも反映するゲームをやっていました。『人狼ゲーム』とか。

毎日1時間ぐらいやっていましたね。それもあって、距離が縮まるのは早かったです。ゲームに真剣になってくると、その人の人となりみたいなのも、なんとなくお互いにわかってきて。お芝居での空気の作り方とか、タイミングとかは、合わせやすくなった感じがします」

−長女が尼神インターの誠子さん、三女が吉本実憂さんの三姉妹という設定で−

「はい。それこそ主演となっていますけど三姉妹が主人公なので、それも安心していたんですよね。誠子さんと実憂ちゃんにお会いしたことはなかったんですけど、きっと2人とも柔らかい方なんだろうなっていう印象が勝手にあったので、この3人でやれるんだったら、やりきれそうみたいな感じはありました。

最初にポスターとチラシの撮影でお会いしたときに結構ゆるっとしゃべれたので、そこで『きっと大丈夫だろうな』って思いました。劇場が、お客さんとの距離も近いので、息遣いとかテンションとかもすごい伝わりやすいように、みんなでお芝居を作ることができたと思っています。

今回ほどお客さんと距離の近いところでお芝居をするということが、今までの人生でなかったので、それが一番緊張しました。円形ステージで隠れ場所もなかったので。こんなこと思っちゃいけないんですけど、人の視界を避けることができないと思って。

でも、ストーリー的にも常に視線に晒(さら)されている3姉妹みたいなところがあるので、あの話にはピッタリなセットだなと思いました。

結構重たい内容なんですけど、見やすい作品になったかなって。テンポだったり、事件とは関係ないキャラクターとの会話劇とかも、ちょっと笑えるところもあったので」

−『グランマの憂鬱』(フジテレビ系)の長女をネグレクトする母親も印象的でしたが、シリアスな役柄も多いですね−

「そうなんです。ここ数年、泣かない役はなかったんじゃないかというぐらい、常に泣いている役が多くて。そういう役を立て続けにいただけるというのは、求めてくださるということだからうれしいし、これからもそういうシリアスな役はやっていきたいなって思うんですけど、友だちから『藤子、最近いつも泣いているね』って言われたりもしています(笑)。

私は意外とコメディー作品への出演経験が少ないんです。大好きなんですけど、あまりやったことがないので、コメディー作品もやっていけるようになれたらいいなと思っています」

主演舞台の公演を終えて輝きを増した感がある小島さん。端正なルックスと確かな演技力で今後のさらなる活躍に期待が高まる。(津島令子)

ヘアメイク:木村真弓